SSブログ

2012都民芸術フェスティヴァル:NHK響公演 [音楽時評]

先日から批判している個人プレイの松本音楽祭より余程増しな芸術フェスティヴァルが東京で展開中ですが,在京8交響楽団の競演のなかで,今夜はNHK響を久しぶりに聴きに行って来ました.

NHK恒例の第9演奏会が,NHK響団員の小澤征爾ボイコットで中止する旨の電報を受け取った頃から50年位いNHK響会員でしたが,シルバー券を出すオケが出てきてそちらに移ったので,N響はNHK音楽祭で聴くくらいなのです.また,この芸術フェスティバルのNHK響のチケットは売れ行きが良すぎてなかなか取れなかったのです.

今夜は指揮が今ヨーロッパで活躍中のカール・ハインツ・シュテフェンス,ピアノ・ソロに韓国の若手,キム・ソヌクが出演していました.
シュテフェンスはベルリンフィルのクラリネット首席から指揮に転向した変わり種です.ベルリンフィルでは,ザビネ・マイヤー以来,クラリネット首席が落ち着かないですね.1961年生まれといいますから,丁度50歳というところでしょうか.2008年からハレ歌劇場の音楽監督として新たなスタートをきり,2009/2010年シーズンからはラインランド=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督にも就任した他,いくつもの主要オーケストラに客演を重ねているようです.
オーケストラ団員出身ということもあって,たいへん分かりやすい堅実な指揮をする人です.

キム・ソヌクは,2006年のリーズ国際ピアノ・コンクールで歴史上最年少で優勝した優れもので,現在,22歳だそうです.この人が又,素晴らしく着実な演奏をする人で,このところの年少天才的ピアニストの登場は立て続けで凄いですね.

プログラムは,
ウエーバー:  歌劇「魔弾の射手」 作品77〈序曲〉
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37
             ※※※※※※※※
シューマン:   交響曲第4番 ニ短調 作品120
でした.

さすが,ドイツ系の指揮者らしく,「魔弾の射手」はスケール大きく好演してくれました.NHK響はコンマスは堀正文でしたが,他は首席が降り番が多かったように思われましたし,ホルンの首席がそもそも欠員で,首席代行の音が不安定だったのが気になりました.ホルンは森を象徴する重要な役割なのですが...

ベートーヴェンのピアの協奏曲第4番は,ソリスト,キム・ソヌクの本領発揮に尽きます.大変な才能に恵まれたピアニストだと思いました.音量も決してNHK響に負けていませんでした.
今後いっそうの大成を期待したいと思います.

シューマンの第4交響曲は,この指揮者のお得意らしく,たいへん好演してくれました.第1楽章の動機が2,3,4楽章でも有機的に使われて,曲の一体性を強めているのですが,シュテフェンスはそれを意図的に分かりやすい形で指揮してくれたのが印象に残りました.
今後の指揮者としてのさらなる成功を祈りたいと思います.

1点,余計なことが気になったのですが,第1バイオリンで堀さんの後ろに座っている男性が,他の奏者が身体を揺り動かして懸命に弾いている中で,タダ1人,ほとんど顔も身体も動かさないで弾いていたのがかなり異様に目立ちました.個人差があって仕方のないことかも知れませんが,せめて2列目に配置できなかったモノでしょうか.

 

 

 

 

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

【短信】Boston Symphony に新候補浮上 [音楽時評]

2011~2012年のゲスト・コンダクターに有力候補者を相次いで招いて,小澤征爾が2流レベルに低下させたOrchestra が,Metropolitan Opera 兼任で超大物指揮者 James Levine によって急速に名声を取り戻した後,Levine が腰痛からBoston を辞任して,また有望指揮者捜しに躍起になってきたBoston Symphony が,有力視していた2人には出演をキャンセルされて困惑していたのですが,ようやく何とかなりそうな指揮者に行き当たったようです.

2人の有力候補は Riccardo Chailly と私が前にも書いた Andris Nelsons だったのですが,前者は病気を理由に,後者は夫人の出産を理由にキャンセルされてしまっていたのです.

もうシーズンも終わりに近づいて困り果てていたSymphony当事者に光明がさしたのは,Symphony 恒例のCarnegie Hall 公演3日の内の1人が,楽団員に好意的に迎えられたということからです.

それは,フランス人の Stéphane Denève, the 40-year-old French maestro だそうです.彼は,Denève assumed the post of music director of the Royal Scottish National Orchestra (RSNO) in September 2005, his first music directorship,でそれが2012年までで,別に,2011~2012年シーズンから,Stuttgart Radio Symphony Orchestra (RSO Stuttgart) のMusic Directorをやっているそうです,

2人の有力候補に較べれば,私の目にも見劣りしますが,それでももう2年間の空白を生じていますから,この辺で妥協せざるを得ないようです.
その場合,大化けしてくれることを期待することになるのだと思いますが....

あとはNew York Times の記事をご自由にご渉猟下さい.

 

 

Music Review

A Little-Known Guest Arrives to Make an Impression

The Boston Symphony Orchestra at Carnegie Hall

As the Boston Symphony Orchestra enters a second year without a music director, a parade of guest conductors continues to cross its podium. Some are legitimate candidates to succeed James Levine, who resigned last March, though two heavyweight contenders had to cancel appearances with the orchestra this season: Riccardo Chailly, for health reasons, and Andris Nelsons, for the birth of his baby.

Hiroyuki Ito for The New York Times

 

The conductors of the first two of the orchestra’s three concerts at Carnegie Hall last week, John Oliver and Christoph Eschenbach, have no chance. Among other reasons, both are 72, and the post-Levine Boston Symphony has every reason to look for someone young and vital.

But Stéphane Denève, the 40-year-old French maestro who conducted the Friday evening concert, must be considered at least a long shot. Though still relatively little known in America, Mr. Denève is chief conductor of the Stuttgart Radio Symphony Orchestra and music director of the Royal Scottish National Orchestra, and he made a mostly favorable impression here.

In his hands, Ravel’s “Ma Mère l’Oye” (“Mother Goose”) shows what a great French orchestra Boston can still be, a half-century after the directorship of Charles Munch. Wisely, Mr. Denève played just the five movements originally written for piano duo, not the interstitial material added to the orchestration for ballet, which undercuts the work’s essential economy.

Tempos were a little logy, but the sonorities were gorgeous, especially in the strings, and the proportions were elegant. Mr. Denève held the end of the finale, “The Fairy Garden,” which can so easily be overblown, in good restraint.

Next came Stravinsky’s quirky Concerto for Piano and Winds (and double basses), hardly less French in spirit. Written in the composer’s Neo-Classical mode and teeming with well-behaved dissonances, the work had its premiere in Paris in 1924, a year after the Paris premiere of Milhaud’s jazz-inflected ballet score “The Creation of the World,” and some funky harmonies in Stravinsky’s central Largo closely resemble Milhaud’s.

Mr. Denève and the pianist Peter Serkin achieved a fine balance, though in truth, Stravinsky deploys pianist and orchestra as much in alternation as together. Mr. Serkin conveyed well his part’s manic energy and angularity.

Mr. Denève seemed less fully at home in the moodier parts of Shostakovich’s Fifth Symphony. Whether you buy the work’s ostensible triumphalism or sense an underlying sarcasm, there is no denying (at least since Leonard Bernstein made it clear) the sense of foreboding in the slow, murky sections of the opening movement.

Mr. Denève seemed to find little mystery there, raising fears for what might come (or not) in the third-movement Largo, but by then he seemed more attuned to the work’s ebb and flow. And he fully captured the dynamism of the Allegretto and the finale.

The orchestra played well for him everywhere. Malcolm Lowe, the concertmaster, provided excellent solos, as did the woodwind principals, especially the clarinetist William R. Hudgins.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

紀尾井ホール:ピアノ・トリオを聴くⅡ [音楽時評]

紀尾井ホールの四大トリオ演奏会のⅡは,現代楽器で行われました.
出演者は,
ピアノ:    河村尚子
ヴァイオリン:佐藤俊介
チェロ:    堤 剛
でした.

そしてプログラムは,
ドヴォルジャーク:ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調 Op.90 「ドゥムキー」
        ※※※※※※※※
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50 「ある偉大な芸術家の思い出に」
でした.

いずれも有名な曲ですが,「ドゥムキー」は,ドヴォルジャークが愛したウクライナ地方の舞曲「ドウムカ」の複数形だそうで,全6楽章がいずれもこの舞曲を取り入れているので,この曲の名称は複数形なのだそうです.
1.Lento maestoso - Allegro quasi doppio movimento - Lento - Allegro (ホ短調

2.Poco adagio - Vivace non troppo - Poco adagio - Vivace (嬰ヘ短調
3.Andante - Vivace non troppo - Andante (イ長調イ短調~イ長調)
4.Andante moderato (Quasi tempo di Marcia) - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegro - Meno mosso - Moderato (ニ短調
5.Allegro - Meno mosso - In tempo -Meno mosso - Piu mosso (変ホ長調
6.Lento maestoso - Vivace - Lento - Vivace (ハ短調ハ長調
この各楽章は自由な形式で構成されており、ソナタ形式の楽章が1つもないこと,第1~第3楽章は3度ずつ下降しますが.それ以外は楽章間の調性の関連付けが自由で首尾一貫性がないことから.いわば組曲という側面を持っています.どの楽章でも転調や,テンポや気分の急激な変化が際立っています.
いかにもドヴォルジャークらしい,スラヴ的な愁いを含んだ美しい旋律が全篇に流れていますが,ジプシー音楽やチェコ民族舞曲に影響された激しいリズムの調子も織り込まれています,
演奏は,チェロ,ヴァイオリンが活発に活躍し,ピアノはやや控えめな扱いになっていましたが,3人ともたいへん充実したトリオを展開してくれました.

チャイコフスキーの三重奏曲は,パリで亡くなったルビンシュタインへの哀歌として作曲されたモノで,こちらは逆に2楽章構成です.
I. 悲歌的小品(伊語Pezzo Elegiaco) (Moderato assai - Allegro Giusto)
II. (A) 主題と11変奏(伊語:Tema Con Variazoni) - (B) 最終変奏とコーダ(伊語:Variazioni Finale e coda
このII. (A)の主題は,第1楽章冒頭主題の音を並べ替える形でピアノによって演奏され,その後の変奏は,第1変奏 -第2変奏: Più mosso -第3変奏: Allegro moderato -第4変奏: L'istesso tempo (Allegro moderato) -第5変奏: L'istesso tempo -第6変奏: Tempo di Valse -第7変奏: Allegro Moderato -第8変奏: Fuga (Allegro moderato) -第9変奏: Andante fieble,ma non tanto -第10変奏: Tempo di Mazurka -第11変奏: Moderato -最終変奏:Allegretto risoluto e con fuoco -コーダ: Andante con moto - Lugubre.
と間に Valse, Fuga,Mazurka などが配列されて,まことに多彩ですし,最終変奏はかなり長大で,ピアノのアルペジオを従えて,ヴァイオリン,チェロが第1楽章の嘆きの主題をを回帰させ,コーダに入りますが,その終わりの Lugubre は,「陰鬱に,喪に服するように」と記されており,ピアノが低音で,A-E-A-E ・・・の音型を繰り返して終わります.葬列が遠ざかるのを描写したと考えられる部分です.
ここでは,ピアノがかなり前面に出て活躍し,トリオとして誠に見事な演奏でしたが,最後の低音のピアノの音が消えないうちに,「ブラボー」+拍手になってしまい.本来,余韻を残すところがメチャメチャニなってしまったのは,まったく残念でした.
そもそも音楽文化が浸透し,曲の意味を理解した外国でなら絶対にブラボーなど入らないところでのブラボーには,驚き呆れました.

アンコールには,ドヴォルジャークから,ピアノの強打で終わる楽章が演奏されましたが,これは演奏者たちが意図的に選択したアンコールだったと思います.

ある文章から引用しますと,「演奏が終わった後の余韻と静寂を含めて全てが音楽」という考え方があり,余韻そのものを楽しむ聴衆も多い.実際、ブルックナー交響曲第5番のように「全休符で終わる曲」、またはベートーヴェン『英雄』のように「フェルマータの休符で終わる曲」は少なくないのです,
特に余韻が消える前、または拍手に先立って叫ばれる「ブラヴォー」は,俗に「フライング・ブラヴォー」と呼ばれ、
最も軽蔑される行為であるとされています.

こうしたマナーの悪さ,レベルの低さは紀尾井ホールで特に顕著ですから,「曲の余韻を楽しみたい聴衆の妨げにならないよう,かけ声や拍手は暫時『間』をとってからにして下さい」と,毎回2度くらいアナウンスを繰り返す必要があるのではないでしょうか.

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

サントリーホール:秋山和慶指揮東京交響楽団,神尾真由子演奏会 [音楽時評]

3月10日,サントリーホールに,秋山和慶指揮東京交響楽団第598回定期演奏会を聴きに行って来ました.神尾真由子が協演するのを聴くのが主目的だったのです.

プログラムはなかなかの意欲的なモノで,
ストラヴィンスキー: 交響詩「うぐいすの歌」
コルンゴルド:     ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
        ※※※※※※※※
スクリアビン:      交響曲第4番 「法悦の詩」 作品54
でした.

ここで,東京交響楽団にクレームですが,プログラムの頁が楽曲名だけで,楽章構成,各楽章のスピード指定が掲載されていないのは非常識です.他のどこの音楽会でも,今日では最低限の記載事項になっています.

交響詩「うぐいすの歌」は,バレー音楽により名声が確立したストラヴィンスキーが,多忙で作曲中断を余儀なくされたオペラ作品の第1幕と,中断後の第2,3幕の間に作曲手法に大きな隔たりが生じてしまい,2,3幕を交響詩として完成させたモノだそうです.中国の宮殿で,うぐいすの歌で癒やされていた皇帝が,日本から贈られた機械仕掛けのうぐいすを聞いて病気を悪化させたところへ,本物のうぐいすが戻ってきて救われるという,当時の世界情勢を彷彿させる作品ですが,オーケストレーションの巧みさによって,なかなかの興味深い作品に仕上がっており,秋山-東響もストラヴィンスキーらしい輝かしい音の響きを生み出していました.

コルンゴルドは,アメリカに渡って以後,すっかり映画音楽に力点を置いてしまったのですが,この協奏曲は,ドイツの敗戦後に久しぶりに書かれた作品で,各楽章の主題は,素材を映画音楽から転用して作曲されています.
第1楽章 Moderato nobile ニ長調,ソナタまたはソナチネ形式のように構成されていますが,自由形式の幻想曲風楽章といえます.序奏なしでヴァイオリン・ソロが歌う格調高い旋律は、映画音楽《砂漠の朝(Another Dawn)》のテーマ音楽が原型になっているそうです.躍動的な第2主題を経て中間部で映画音楽《革命児フアレス (Juarez)》の「カルロッタの主題」旋律が、ほぼ丸ごとヴァイオリン・ソロに引用されています.その後,第1楽章の変奏とカデンツァが入り,再現部では第1主題がオーケストラ全奏によって呈示され、「カルロッタの主題」の回想とその展開が続いた後、第2主題によって溌剌とした締め括りを迎えまず.
第2楽章 Romanze ト長調,しめやかな導入部に導かれて、ヴァイオリン・ソロによる主要主題が始まりますが,この主題は,映画音楽《風雲児アドヴァース(Anthony Adverse)》から取られており、対比的な中間部を経て、再現部で丹念に変奏されます.中間部は、特にこの協奏曲のために新たに書き起こされています.
第3楽章 Allegro assai vivace ニ長調,ロンド・ソナタ形式,ヴァイオリン・ソロにとって最も技術的要求の高い楽章で、スタッカートによる跳躍音型の第1主題に始まり,第2主題は映画音楽《放浪の王子The Prince and the Pauper)》のテーマ音楽からとられて,ヴァイオリン・ソロによって変ロ長調で呈示されます.全曲の華麗なフィナーレに相応しく、超絶技巧の駆使されたクライマックスが築き上げられて華麗に終わります.
映画音楽家として有名な人のヴァイオリン協奏曲は,あまり顧みられなかったのですが,ヤッシャ・ハイフェッツが熱心にこの曲の演奏を続けたことから,ようやくギル・シャハムヒラリー・ハーンによっても取り上げられ,バーバーのヴァイオリン協奏曲と共に,20世紀の名作の仲間入りしたモノです.

私は,前に,豊島泰嗣のヴァイオリン,指揮小澤征爾で聴いたことがありましたが,神尾真由子の歯切れの良い,音量を自在にコントロールした演奏は,格段に勝っていて,たいへん素晴らしい演奏を楽しむことが出来ました.

スクリアビンの「法悦の詩」は,科学-宗教-哲学の総合化を図ろうとする「神智学」の発想に基づく曲で,単一楽章ですが,少なくとも3つの主題を持っています.秋山-東響のコンビで,それらを明快に解き明かしながらの好演で聴くことが出来ました.

東響を聴くのは,川崎ミューザ以来ですが,ミューザの崩落以来,今は川崎市の各区役所併設の会館で時をしのぎ,一部はみなとみらいホールに移しているようですが,早く川崎ミューザの完全耐震改修が完了するのを期待したいモノです.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

サイトウキネンの発想は最早過去のモノ: 追記 [音楽時評]

小澤征爾がようやく1年間の休養を決めたことは,本人にとってたいへん良いことだと思います.

しかし,サイトウキネンが小澤征爾のライフ・ワークというのは,納得しがたい表現です.

第1
に,当初の目的とされた,
there developed a dream until now unimaginable --"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland."
は,サイトウキネンによってではなく,世界に進出した若い世代の多くの有能な日本人音楽家たちによって,既に十二分に達せられたと思われるからです.

さらにいえば,最早,日本はアジアの盟主でもなく,今やその地位はすっかり中国に取って代わられており,中国その他から輩出される優れた音楽家,ラン・ラン,ユジャ・ワン,ユンディ・リたちは,今や世界中に広がっています.

音楽教育の側面でも,日本の鈴木メソッドは世界に広がりましたが,さらにそれを社会運動として展開させて世界に広まったヴェネズエラのエル・システマ('El Sistema')は,欧米を席巻した

The Simón Bolívar Youth Orchestra of Venezuela (SBYOV) の成功によって.広く世界に広がっています.
そのチャンピオン役を担ったGustavo Dudamel はヨーロッパでもアメリカでも地位を確立して,エル・システマを背景に,最早,西洋音楽を世界の音楽へと発展させたといって過言ではありません.

そう考えると,--"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland." は,最早まったく色褪せた,古き良き日本の時代の発想というべきです.

第2に,サイトウキネン松本は,小澤征爾が1人で取り仕切るモノですから,だらだら,だらだらと続く割には見るべきものが少なくって,はっきりいって,西欧でいう音楽祭の多彩さはまったく見られない代物です.有り体にいって,マンネリ化して魅力が乏しいのです.
あまり好きではないので引き合いに出すのは躊躇しますが,比較のために敢えてあげれば,ラ・フォル・ジュルネの多彩さには目を見張るモノがあります.

第3に,今年は,小澤征爾が休養するのではなく,総監督としてサイトウキネンの期間中,指導したり目を光らせるようなことが書かれていますが,それは音楽界では非常識なことです.
休養するといったら,あくまで休養すべきで,そこら中をウロウロするのは,代わりに音楽監督を頼んだ人に誠に失礼で,音楽界の常識に反します.

そんなことも弁えないようでは,総監督など続けて欲しくないモノです.

もう,サイトウキネンもいい加減長くなったことは,昨年,サイトウキネンを改名する,松本プログラムを短縮して世界に進出すると歌い上げたことからも(この話どうなったのでしょう?),サイトウキネン関係者自身が,そろそろ何かを変えなければと遅まきながら考えたのだと思います.

それを変える1つの選択は,小澤征爾を,この機会に名誉監督に棚上げして,かなり増えてきた日本の若き人材から,世代交代を図ることだと考えます.世界の音楽祭シーズンに松本に籠もるなど,全然,つまらないと思う若手も多いでしょうが,そこは小澤征爾が口説き落とすことです.

それにしても,小澤征爾が指導して引き立ててきた指揮者というのは意外にも希少ですね.小澤に師事したと公言しているのは,ミネソタ菅を失格した大植英次くらいではありませんか...
ケント・ナガノがBostonでマーラーの第9交響曲を小澤の代役で振って好評を博した演奏を鮮明に覚えていますが,彼はそれ以前も以後も小澤に師事したなどとは一言もいっていないはずです.

Bostonに29年間も居座って,何年か後に後任になり得る人を誰も育て上げなかった人が,松本に20年いても誰も育て上げなかったのは,いったい何をやってきたのでしょう.
教育プログラムといっても,小手先の技術しか教えてこなかったからではないでしょうか.
小澤征爾音楽塾というから指揮者の教育もやっているのかと思いきや,小澤征爾自身が,自分の代役も探せなかったのはまたったく惨めな話ですね.

強いて挙げれば,新日フィルのアルミンクとハーディングは,一緒にTanglewood の教育プログラムに参加していますが,かつて若くしてラトルやアバドに認められて,ベルリンフィルの指揮台にも上がったハーディングが,35歳になっても主要ポストに就けないでいるのはどうしたことでしょう.
それでも,ごく最近,軽井沢の大賀ホールの音楽監督に就任していますし,もともと今年のサイトウキネンのオーケストラ・プログラムの指揮者にも予定されていますから,彼を今年の音楽監督(小澤は元々総監督)に据えることを提案したいと思います.

その間に,来年以降の音楽祭の斬新な理念を掲げる音楽監督を,全員でしっかり選考して欲しいモノです.
サイトウキネンは既に改名すると打ち出していたのですから,最早,色褪せた理念を唱えた個人名にこだわる理由は全くないでしょう.斬新な理念に相応しい名称にすれば,新たなアピールになることでしょう.

 

続きを読む


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

トッパンホール:河村尚子ピアノ・リサイタルの好演 [音楽時評]

3月7日,トッパンホールに河村尚子のピアノ・リサイタル「師クライネフへのオマージュ」を聴きに行って来ました.

つい先日,所沢ミューズ・アークホールでのピアノ・リサイタルで河村尚子が取り上げたプロコフィエフへのコメントを,今日があるので留保しましたが,それは正解でした.大ホールのアークホールでは,プロコフィエフのダイナミック・レンジは勿論,河村尚子の微妙な強弱の付け方が,十分には伝わりようがなかったからです.

今夜はNaxos の会員登録から,プロコフィエフのピアノ・ソナタ第2番をエミール・ギレリス,第6番をスビャトスラフ・リヒテルの日本でのライブ録音で聴いてから出かけました.

プロコフィエフは私のイメージは余り良くないのです.名前は忘れましたが,昔ロシア人指揮者が,プロコフィエフについてプレトークをやってくれた時,プロコフィエフはピアノではラフマニノフに1歩も2歩も遅れをとって上手くいかず,交響曲ではいつもショスタコーヴィチに先を越されて上手くいかず,ロシア革命を契機にいったん日本を通ってアメリカに亡命したのに,そこでも成功できず,フランスからさらにドイツに渡っても上手くいかないでロシアに舞い戻ったけれども,スターリンと同じ年に亡くなってしまって,人生の春を迎えないまま終わってしまった.
しかし,近年ようやくその作品が見直されてきたという趣旨でした.

ピアノ・ソナタでいえば,第3番と戦争ソナタの第6~8番が一番良く演奏されているのではないでしょうか.その特徴は,今夜のプログラムノートによれば,「伝統様式の上に立った斬新なモダニズム」「明確な主題と不協和音の対比」「野性的なダイナミズムと抒情的表現の並立」などです.
無調性や12音音階にも入りきらずに踏み止まった者の,精一杯のモダニズムなのでしょう.

なお,ピアノ・ソナタ作品は第1番から第10番までですが,第10番Op.137は1分少々の「断章」に終わっており,実質的な最後のピアノ作品は,実は,第5番3楽章構成の「改訂版」Op.135(原典版はOp.38)です.

今夜はいずれも4楽章構成の第2番と第6番が選曲されていました.それぞれの前に小品が置かれ,プログラムは,オール・プロコフィエフで,
《ロメオとジュリエット》からの10の小品Op.75より
          2.情景,4.少女ジュリエット,6.モンタギュー家とキャプレット家
          8.マーキュシオ,10.別れの前のロメオとジュリエット
ピアノ・ソナタ第2番 ニ短調 Op.14
          ※※※※※※※※
束の間の幻影 より
           1.Lentamente,5.Molto Giocoso,7.Pittoresco"Harp"
                    8.Commodo,10.Ridicolosamente,14.Feroce
                   16.Dolente,17.Poetico
ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 Op.82
でした.

《ロメオとジュリエット》からの10の小品はバレー譜からピアノに適した曲を編曲したモノで,たいへん柔らかく優しい優美な曲を端正かつ綺麗に弾いてくれました.

ソナタ第2番は,ⅠAllegro ma non troppo,ⅡScherzo,Allegro marcato,               ⅢAndante, ⅣVivace の4楽章です.鮮烈なリズムと斬新な和音の響きが印象的ですが,河村尚子は誠にダイナミックかつ鮮明に弾いてくれました.

後半の「束の間の幻影」は8曲が選曲されていましたが,それぞれがたいへん短いせいか,あっという間に終わってしまった感じでした.しかし,なかなか変化に富んだ短編集でした.

つい先週の土曜日に聴いた曲,ピアノ・ソナタ第6番は,ⅠAllegro moderato, ⅡAllegretto, ⅢTempo di valzer lentissimo, ⅣVivace の4楽章構成ですが,激情的に始める第1楽章が印象的ですし,第3楽章の叙情性も忘れがたいモノがありました.終楽章は第2番と同じ,プロコフィエフ好みのVivace で,短い中間部を挟んで,鍵盤を一杯に使い,強打が続いて,ピアニストの身体全体を駆使した好演でした.

オール・プロコフィエフではピアニストには体力勝負だと,何かに書いてありましたが,今夜は誠にさもありなんという熱演でした.

来週の月曜日に,紀尾井ホールで河村尚子が参加するトリオ演奏会が,今からたいへん楽しみです.

 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

浜離宮朝日ホール;ボロディン四重奏団+原田英代 [音楽時評]

3月5日,浜離宮朝日ホールに,ボロディン弦楽四重奏団の弦楽四重奏と原田英代が加わったピアノ五重奏を聴きに行って来ました.

今回のボロディン弦楽四重奏団の来日公演は,2月26日山口県周南市に始まって,今夜が最後でしたが,3月1日京都,そして今夜と原田英代との協演コンサート,3月2,3日が杉並区と西東京市でボロディン弦楽四重奏団だけの演奏会というスケジュールだったようで,山口県出身の原田英代さんがむしろ中心的役割を果たされたようです.

今夜のプログラムには,プログラムとボロディン弦楽四重奏団と原田英代さんの紹介に加えて,原田英代さんによる「シューマンとブラームス」と題した2人の関係を書いた小論と,今夜のブラームスとシューマンの曲に付いての解説が掲載されていました.

今夜のプログラムは,
ブラームス: 弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品51-2
          ※※※※※※※※
シューマン: ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44
でした.

ブラームスは,シューマン,リストの門を訪れ,結局,シューマンに親しみを持って師事し,リストとは対立します.シューマンはショパンのピアノ・ソナタを,せっかくのソナタ形式を歪めるものと批判していたといいます.
結局,ブラームスがソナタ形式を継承することになりますが,ブラームスは20曲ほどの弦楽四重奏曲を創作しては破棄した末,作品51の2曲を完成させたといいます.第1番が力強いのに対して,第2番は抒情性豊かな曲です.友人ヨアヒムノモットー「自由にしかし孤独に}の頭文字F-A-Eがメロディに使われ,ブラームスはそれに近い自分のモットー「自由にしかし楽しく」の頭文字A-F-Aも戦慄の中に組み込んでいるといわれます.
第1楽章ソナタ形式,第2楽章リート形式,第3楽章トリオを含むメヌエット,第4楽章ソナタ形式をとっていますが,かなり複雑に入り組んでいます.
ボロディンは,個々でも非常に見事なアンサンブルで,丁寧に,しかし抒情性豊かに好演してくれました.

後半のシューマンのピアノ五重奏曲は,いわゆる室内楽の年といわれる1842年に四重奏曲,五重奏曲のすべてを書いています.とりわけピアノ五重奏曲という編成の曲を作曲したのはシューマンが最初です.第1楽章ソナタ形式,第2楽章自由なロンド形式,第3楽章トリオを2つ持つスケルツオ,第4楽章自由なソナタ形式をとっています.
最初からピアノがほぼ弦楽四重奏と拮抗する重要性を持って活躍しますが,第4楽章の終結部で,第4楽章の主題と第1楽章の主題による二重フガートが置かれて,全曲の統一性を固めています.
このツアーでは3度目の演奏で,すっかり信頼し合った関係から見事なアンサンブルが展開されていました.

アンコールにまず,シューマンのピアノ五重奏曲から第3楽章が再演され,次いで,ボロディンがチャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレを演奏していました.

たいへん内容豊かな室内楽コンサートだったと思います.

 

 

 

 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

所沢ミューズ:フォクルール・オルガン演奏会 [音楽時評]

3月3日,所沢ミューズ,アークホールに,ベルナール・フォークナーのオルガン・リサイタルを聴きに行って来ました.
このホールは先日のピアノ・リサイタルでは感心しませんでしたが,この日本で有数のストップ数を誇るパイプオルガンには,たいへん感動しました.
オーストリアのリーガー社製で1993年に設置されたモノですが,Crescendo が4通り可変,256コンビネーション,実動ストップ75,パイプ数5563本という規模を誇っています.

フォクレールは1953年ベルギー生まれ,1970年代半ばから演奏活動を開始し,ルネサンスから現代まで幅広いレパートリーを誇り,自分でも作曲をしている才人です.

今日のプロフラムの特徴は,前半,後半にそれぞれ一段曲ずつ現代曲を1曲含めており,前半のそれは自作のモノでした.プログラムは,
アクステフーデ: トッカータとフーガ ヘ長調 Bux WV156
フォクルール:   トッカータ(2001年作曲)
ブルーナ:     聖母マリアのレタニアによるティエント
J.アラン;     リタニー
      ※※※※※※※※
グリニ:       オルガン曲集 第1巻より
ブスマン:      ファンファーレ 第2番(1971年作曲)
J.S.バッハ:    ライプツィヒ・コラール集より「いざ来たれ,異邦人の救い主よ」
                          BWV661,BWV660,BWV659
J.S.バッハ:    幻想曲とフーガ ト短調 BWV660542
でした.

個々の作品をなぞることはできませんが,とにかく非常に多彩なオルガンの機能に支えられて,それぞれの曲がまことに厚みと深みたっぷりに演奏されて,オルガン曲の深遠な美しさとまことに豊かな情感に触れ,パイプオルガン演奏の神髄に触れたような気持ちを味わうことが出来ました.

アークホールは,ピアノやヴァイオリンのリサイタルには不向きですが,パイプオルガンのリサイタルは一聴の価値が十分にあると思います.

 

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

杉並公会堂:ボロディン弦楽四重奏団の名演 [音楽時評]

3月2日,久しぶりの杉並公会堂に,ボロディン弦楽四重奏団演奏会を聴きに行って来ました.ハッキリいって,ここの音響は,武蔵野文化会館小ホールより倍の収容人員でも,一段上の良い音響環境にあると思いました.

ボロディンは,数年前に,武蔵野文化会館小ホールで聴いて以来です.その時は,創設メンバーで唯一残っていたチェリストが辞任するので解散するという話題があり,ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲15番(最後の曲)を,4本の蝋燭を立ててお別れの演奏をした記憶が残っています.

しかし,その後,チェロに素晴らしい奏者を迎えて,存続させてから,昨年さらにヴァイオリンに交替がありましたが,それ以来,初めての来日だと思います.
現在のメンバーは,
ルーベン・アハロニアン(Vn),
セルゲイ・ロモフスキー(Vn),
イゴール・ナイディン(Va),
ウラディミール・バルシン(Vc)
です.

今夜のプログラムは,
チャイコフスキー: 弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 op.11 「アンダンテ・カンタービレ」
ストラヴィンスキー:コンチェルティーノ
        ※※※※※※※※
ボロディン:          弦楽四重奏曲第2番 に長調
でした.

チャイコフスキーの曲は,有名な第2楽章以外にも美しい旋律が多く、チャイコフスキーらしい情熱的な展開が魅力的です.各楽器の扱いが管弦楽の縮図のようで,室内楽のスタイルらしくないといわれたりしますが,それも意外な効果を見せています.
第一楽章 Moderato e semplice ニ長調 9/8拍子は,息の長い第1主題で始まるソナタ形式で,テンポを早めた華麗な終わり方が印象的です.
第二楽章 Andante cantabile 変ロ長調 2/4拍子 は1度聴いたら忘れがたい有名な旋律は,チャイコフスキーがウクライナで聴いた民謡に題材を得ているといわれます.
第三楽章 Scherzo (Allegro non tanto e con fuoco) ニ短調 3/8拍子 は活気に満ちたスケルツオ楽章です.第四楽章 Finale (Allegro giusto) ニ長調 4/4拍子 は,ロシアの民俗舞曲風の第1主題をもつソナタ形式で,憂鬱なアンダンテ部分をはさみ、激しいフィナーレで終わります.

ストラヴィンスキー:コンチェルティーノは,後に12楽器用に改訂された現代曲で,多彩な奏法が駆使された変化に富んだ曲です.

後半のボロディンの第2番は,ボロディンが妻に愛を告白した20周年の記念として、エカテリーナ・ボロディナ夫人に献呈された作品です.特にその第3楽章 Nocturne:Andante が独立に演奏されることがあるほど有名で,これも1度聴いたら忘れがたいメロディーです.

とにかくボロディン弦楽四重奏団が素晴らしいアンサンブルを見せて,これぞ弦楽四重奏という最高の演奏を聴かせてくれました.特に,チェロが見事なまでにクヮルテットに溶け込んで,レベルの高い演奏を展開していました.
まったく久しぶりにクヮルテットの最高レベルの演奏を,音響の優れたホールで聴くことが出来て,たいへん満足した1夜でした.

なお,アンコールに,確信はないのですが,ボロディンの「スペイン風セレナード」が演奏されました.

今回の来日では,もう一度,浜離宮朝日ホールで,3月5日に,ブラームスの弦楽四重奏曲第2番と原田英代が加わった,シューマンのピアノ五重奏曲の演奏会があり,得チケに回っているようですから,ご関心の方はぜひご鑑賞下さい.
私は浜離宮にも行きますが,ぜひまた杉並公会堂に再来日して欲しいモノです.

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

NY Times が評論した若き天才ピアニスト [音楽時評]

New York Times が,17歳の若き天才ピアニストを評論していましたのでご紹介します.
この1年内で,私も,このブログで3人を若き天才(うち1人はチヤイコフスキー・コンクールの覇者)として挙げましたが,古いバイエルやチェルニーからコツコツ積み重ねる教育ではなく,ほとんど初めから音楽自体を教える方法への転換も背景にあったと思いますが,格子点次々と若き才能が芽生えるのは誠にありがとうございます.喜ばしいことです.

At 17, the musician Conrad Tao is already impressively accomplished. A pianist in the Juilliard-Columbia double-degree program, he is also said to be a talented violinist. He has won the Ascap Morton Gould Young Composer Award eight times; he received a Gilmore Foundation Young Artist Award last year; and he was the only classical artist named in Forbes magazine’s “30 Under 30 in Music” in 2011. He has performed as soloist with the Philadelphia Orchestra, the Baltimore Symphony and the San Francisco Symphony.

と,Taoは,Violinistとしての才能にも恵まれているといいます.既に,ピアノでthe Philadelphia Orchestra, the Baltimore Symphony and the San Francisco Symphony と協演しているといいます.

この評論の対象となったのは,Weill Recital Hallでのリサイタルですが,最初のバッハでは,   a cleanly articulated, fluid and fleet rendition of Bach’s “Italian” Concerto. He played the slow second movement with poise and feeling.
次の「月光」では, “Moonlight” Sonata unfolded in an exciting blaze of notes. But at times his playing lacked a certain emotional depth and potency: hardly surprising, given his youth.  と若さを露呈する部分もあったようです.

しかし,何曲とされるリストを弾いて,He brought lovely colors and poetic nuances to three works by Liszt: “Au bord d’une Source,” “Vallée d’Obermann” and the “Rigoletto” Paraphrase とその才能を遺憾なく発揮したようですが, his playing marred only by a tendency to bang in the more exuberant passages.
There were also bangy moments in his passionate rendition of Chopin’s Nocturne in C minor (Op. 48, No. 1). と未だ未熟な部分も認めています.

しかし,The program concluded with Prokofiev’s Sonata No. 7. Mr. Tao spoke eloquently about the work, which Prokofiev ostensibly composed as a birthday tribute to Stalin. The work pleased the authorities, although Prokofiev expressed his frustration with the regime in covert ways, like using a theme based on Schumann’s song “Sadness.”
The sonata is “a call for peace,” said Mr. Tao, who, even if he didn’t manage to scale the work’s emotional summits, certainly played with fiery panache.

と不足部分を認めながらも,彼の才能を高く評価しています.
誠に楽しみな新世代の台頭だとたいへん嬉しく思います.

 

 

Music Review

A Promising Star, Rising Above the Horizon

Conrad Tao at Weill Recital Hall

 

    At 17, the musician Conrad Tao is already impressively accomplished. A pianist in the Juilliard-Columbia double-degree program, he is also said to be a talented violinist. He has won the Ascap Morton Gould Young Composer Award eight times; he received a Gilmore Foundation Young Artist Award last year; and he was the only classical artist named in Forbes magazine’s “30 Under 30 in Music” in 2011. He has performed as soloist with the Philadelphia Orchestra, the Baltimore Symphony and the San Francisco Symphony.

    Willie Davis for The New York Times

    Conrad Tao This 17-year-old student at Juilliard and Columbia performing in a concert, “A Piece for Peace,” at Weill Recital Hall on Tuesday.

    He was presented on Tuesday evening at Weill Recital Hall by the Tanenbaum Center for Religious Understanding, a New York secular nonprofit founded in 1992. The concert, called “A Piece for Peace,” was preceded by remarks by administrators including Reynold Levy, the president of Lincoln Center, who commented on Mr. Tao’s gifts as a prodigy.

    That Mr. Tao, who gave his first recital at 4, is hugely gifted was evident from the outset. He opened with a cleanly articulated, fluid and fleet rendition of Bach’s “Italian” Concerto. He played the slow second movement with poise and feeling.

    His impressive technique allows him to navigate difficult works with ease; the finale of Beethoven’s “Moonlight” Sonata unfolded in an exciting blaze of notes. But at times his playing lacked a certain emotional depth and potency: hardly surprising, given his youth.

    He brought lovely colors and poetic nuances to three works by Liszt: “Au bord d’une Source,” “Vallée d’Obermann” and the “Rigoletto” Paraphrase, his playing marred only by a tendency to bang in the more exuberant passages. There were also bangy moments in his passionate rendition of Chopin’s Nocturne in C minor (Op. 48, No. 1).

    The program concluded with Prokofiev’s Sonata No. 7. Mr. Tao spoke eloquently about the work, which Prokofiev ostensibly composed as a birthday tribute to Stalin. The work pleased the authorities, although Prokofiev expressed his frustration with the regime in covert ways, like using a theme based on Schumann’s song “Sadness.”

    The sonata is “a call for peace,” said Mr. Tao, who, even if he didn’t manage to scale the work’s emotional summits, certainly played with fiery panache.


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    武蔵野文化小ホール:ソフィー・パチーニ(pf)の名演 [音楽時評]

    3月1日,武蔵野文化会館小ホールへ,ソフィー・パチーニのピアノ・リサイタルを聴きに行って来ました.
    1991年にイタリア人の父,ドイツ人の母の間に生まれたといいますから,まだ,21歳と思われますが,そのピアノの才能は,つい先日このブログで武蔵野文化会館の演奏を賞賛したイゴール・レビットと較べても遜色のない天才的なモノでした.
    この1年余りの間に聴いた若き天才ピアニストには昨年のチャイコフスキー・コンクールの覇者トリフォノフがいましたが,世界的コンクールを経ずとも,こうした才能が育っているのはたいへん喜ばしいことだと思います.

    先日のレビットは大胆にベートーヴェンのディアベリ変奏曲に挑戦して名演を聴かせましたが,パチーニは次のプログラムを演奏しました.
    ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
    ショパン:     夜想曲 第13番 ハ短調 Op.48-1
    ショパン:     スケルツオ 第2番 変ロ短調 Op.31
          ※※※※※※※※
    リスト:       ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
    です.

    前半の3曲は余りにも有名な曲ばかりですから,内容に立ち入りませんが,とにかく3曲とも完璧な演奏で,しかも誠にしっかりしたテクニックで,構成力豊か,表情豊かに好演してくれました.

    後半のリストのピアノ・ソナタが誠に圧巻でした.
    このピアノソナタ ロ短調は、リストが作曲した唯一のピアノソナタであり,彼の最高傑作のひとつであるとともに,ロマン派を代表する重要なピアノ曲のひとつに挙げられています.

    1853年に作曲され,シューマンに献呈されましたが,この曲があまりに独創的で革新的なモノであったため,賛否は真っ二つに分れたといいます.シューマンの妻で名ピアニストであったクララ・シューマンは,自分の日記に「ただ目的もない騒音にすぎない.健全な着想などどこにも見られないし,すべてが混乱していて明確な和声進行はひとつとして見出せない.」と書き残したと伝えられています.

    しかし,現在ではロマン派史上最も重要なピアノ曲の1つと認められるようになっており,ピアニストにとって必修科目といえるほどで,リストの曲の中でもとりわけ録音数が多い曲に挙げられます.

    このソナタの特徴は、比較的少数の動機によって,実質的には4楽章構成の曲全体が支配されていることが挙げられ,それらの動機は,曲中の音楽的文脈に従って、循環手法によって少しずつ変形しながら曲が進められます.ある主題が荒々しかったモノが,次には美しい旋律になって現れるといった手法です.こうした循環手法によって,曲全体が高い統一感を示しているといえます.
    しかし,それには,ピアニストに高度な演奏技術と,高レベルの構想力が求められるのです.

    パチーニは,まことに見事に,この曲の統一感を顕示させながら,好演してくれました.
    蛇足になりますが,エンディングは静かに終わるのですが,それはリストの校訂によるもので,初版は強く終わっていたとする考証があります.

    前にも書きましたが,わが国の希望の星,河村尚子と小菅優に,ほんの数年の差で本当に手強い天才的なピアニストたちが,続々と現れているようです.

    なお,武蔵野文化会館への注文ですが,半年前くらいまでは,4頁の配布プログラムにきちんとプログラム・ノートが掲載されていたのですが,最近はもっぱら4頁目がチケット売り出し前の演奏家の紹介+東京ではいくらいくらのところ,武蔵野はその半額とか1/3といった宣伝に使われています.
    同じようなチラシは会員には郵送され,都内主要音楽ホールで配られる分厚い近日予定演奏会の宣伝パンフレット集にも折り込まれており,当日のプログラムにも何枚もチラシが挟まれているのですから,配布プログラムは,是非とも,当日の演奏会用に限定して,必ず曲目解説を掲載するよう注文しておきます.
    至極当然なルールだと思うのです.

     

     

     


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    Rattle & Berlin Phil at Carnegie Hall [音楽時評]

    Simon Rattle 指揮の Berlin Philharmonic Orchestra がNew York の Carnegie Hall で2夜連続の公演を行って話題になっています.

    とりわけ話題になったのは,長大曲 Bruckner の交響曲第9番を,通常演奏される3楽章構成ではなく,最近の資料収集からこれこそBruckner が意図した第4楽章という部分を加えて演奏したことです.In 1896, with his health steadily deteriorating, Anton Bruckner struggled to complete the final movement of his Ninth Symphony, which he hoped would be his masterpiece.
    On Friday night at Carnegie Hall, in the second of three programs, Simon Rattle and the Berlin Philharmonic performed Bruckner’s Ninth with the American premiere of a recently completed version of the fourth movement, a result of 25 years of sleuthing and scholarship. In a video on the Carnegie Hall Web site Mr. Rattle commends the completion and almost pleads with listeners to be open-minded.

    しかし,この評者,は,Rattle, Berlin Phil の第1~第3楽章の演奏が素晴らしかっただけに,付加された約22分の新第4楽章が,あまり評価できなかったといっています.

    第2夜には,1曲で約90分の大曲,Marhler の交響曲第2番「復活」が演奏されたそうですが,その前に, To set a musical context for the piece Mr. Rattle and the orchestra, joined by the Westminster Symphonic Choir and (in one work) the luminous soprano Camilla Tilling began with three alluring choral songs by Mahler’s contemporary Hugo Wolf.
    と Wolf の合唱曲を演じたようです.

    それに続いた「復活」については,
    Mr. Rattle then led an impressively integrated account of Mahler’s sprawling five-movement symphony, ...The warmth and richness of the Berlin Philharmonic’s sound were remarkable, as always. Yet here, especially in the first movement, Mr. Rattle drew lean, incisive playing and steely colors from the orchestra during the music’s vehement stretches.

    There were curious moments of imprecise playing in the genial second movement and the sardonic third. But Mr. Rattle seemed more intent on conveying the music’s character with genuine spontaneity.

    The plush-voiced mezzo-soprano Bernarda Fink brought poignancy to the sublime “Urlicht” movement. With Ms. Fink and Ms. Tilling singing beautifully and the resonant voices of the choir, the culmination of the finale had all the celestial exuberance any Mahlerite could ask for.
    とほとんど絶賛しています.

    あとは,どうぞご自由に,ご渉猟下さい.

     

     

    Music Review

    Filling in a Movement Bruckner Left Behind

    Simon Rattle and Berlin Philharmonic at Carnegie Hall

    Matthew dine for The New York Times

    Simon Rattle conducting the Berlin Philharmonic with choir and solists in Mahler's “Resurrection” Symphony on Saturday.

    In 1896, with his health steadily deteriorating, Anton Bruckner struggled to complete the final movement of his Ninth Symphony, which he hoped would be his masterpiece. On the last day of his life he spent the morning working on sketches. Then he took to his bed and quietly stopped breathing. He was 72.

    Matthew Dine for The New York Times
    Simon Rattle conducting the Berlin Philharmonic on Saturday.
    Ruby Washington/The New York Times
    Simon Rattle conducting the Berlin Philharmonic on Friday.

    Even in its incomplete three-movement state, the Ninth Symphony has held an honored place in the repertory. Over many decades there have been attempts to complete the finale. On Friday night at Carnegie Hall, in the second of three programs, Simon Rattle and the Berlin Philharmonic performed Bruckner’s Ninth with the American premiere of a recently completed version of the fourth movement, a result of 25 years of sleuthing and scholarship. In a video on the Carnegie Hall Web site Mr. Rattle commends the completion and almost pleads with listeners to be open-minded.

    In a program note John Phillips, one of four editors credited with this project, rebuts the notion that Bruckner left the last movement a shambles. One-third of it was finished and orchestrated. The layout for the entire finale was sketched. After Bruckner’s death many manuscript pages were stolen by autograph hunters. But some have turned up in recent years.

    It was fascinating to hear this monumental symphony performed with an episodic, lurching final movement lasting 22 minutes. After a quizzical opening and a strong statement of the main theme there are stretches of fitful counterpoint, brass chorales and ruminative passages that take you by surprise. Over all the music pulses with a hard-wrought insistence that crests with a hallelujah coda.

    Yet it was hard to know what to make of this completed finale. Bruckner compulsively revised his symphonies. What he struggled with most was the overall structure of the pieces, which anticipate Mahler’s later works in their scope and length. Sometimes Bruckner connected themes and episodes with elaborate transitional passages. At other times he just stopped what was happening and began something new. So for a Bruckner movement to be missing whole measures of connective materials is a terrible loss.

    Perhaps the finale seemed more disappointing coming after the orchestra’s magnificent performance of the three familiar movements. Mr. Rattle and the Berlin players deftly balanced elements of Schubertian structure and Wagnerian turmoil in the mysterious first movement.

    The brutal power of the scherzo’s main theme was chilling, with the orchestra pummeling the dense, thick, dissonance-tinged chords. And Mr. Rattle laid out the threads of chromatic counterpoint in an organic, glowing and, when appropriate, gnashing account of the Adagio.

    On Saturday the series of three programs ended with another teeming work of nearly 90 minutes: Mahler’s “Resurrection” Symphony. To set a musical context for the piece Mr. Rattle and the orchestra, joined by the Westminster Symphonic Choir and (in one work) the luminous soprano Camilla Tilling began with three alluring choral songs by Mahler’s contemporary Hugo Wolf.

    Mr. Rattle then led an impressively integrated account of Mahler’s sprawling five-movement symphony, which was broadcast on WQXR radio (and will be available on wqxr.org for six months by permission of the orchestra). The warmth and richness of the Berlin Philharmonic’s sound were remarkable, as always. Yet here, especially in the first movement, Mr. Rattle drew lean, incisive playing and steely colors from the orchestra during the music’s vehement stretches.

    There were curious moments of imprecise playing in the genial second movement and the sardonic third. But Mr. Rattle seemed more intent on conveying the music’s character with genuine spontaneity.

    The plush-voiced mezzo-soprano Bernarda Fink brought poignancy to the sublime “Urlicht” movement. With Ms. Fink and Ms. Tilling singing beautifully and the resonant voices of the choir, the culmination of the finale had all the celestial exuberance any Mahlerite could ask for.


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    紀尾井ホール:古楽器でピアノ・トリオを聴く [音楽時評]

    2月27日,紀尾井ホールに「4大ピアノ・トリオを聴く」の第1夜を聴きに行って来ました.

    昨日はバカ・デカイ所沢ミューズ・アークホールでピアノソロを聴いて,このデカイ・ホールは一般の器楽ソロではなく,もっぱらパイプオルガン専用ホールとして使うべきではないかと考えた程でしたが,今夜は音響の良い紀尾井ホールでフォルテ・ピアノとガット弦を用いたピリオド楽器,ヴァイオリンとチェロの組み合わせによるベートーヴェンとメンデルスゾーンのピアノ・トリオを聴いて,美しくて柔和な音色をたいへん堪能しました.

    出演者は
    ヴァイオリン: 佐藤俊介
    チェロ:     鈴木秀美
    フォルテピアノ:クリスティーネ・ショルンスハイム
    どいう素晴らしい組み合わせでした.

    プログラムは,
    ベートーヴェン:  ピアノ三重奏曲変ロ長調《大公》97
    メンデルスゾーン: ピアノ三重奏曲第1番ニ短調作品49
    といういずれも有名曲でした.

    演奏の素晴らしさは,とにかく3人の名手が揃って,フォルテピアノとピリオド楽器を使って美しく澄んだ音で演奏したことです.
    今夜のフォルテピアノは,オーストリアのインスブルック工房でヨハン・ゲオルク・グレーバーが1820年頃製作したモノだそうで,6オクターブの音域と5本のペダルを備えたモノでした.
    フォルテピアノは,革で覆われたハンマーをもち、チェンバロに近い細い弦が張られ,ケースはモダンピアノよりかなり軽くできており,アクション、ハンマーもともに軽く、モダンピアノよりも軽いタッチで持ち上がり,反応が極めてよいといわれます.一言でいって,繊細な音が特色です.

    ガット弦は羊腸弦とも呼ばれ,羊の腸を、薄い膜の状態にしたものを引き延ばしてねじり,寄り合わせた弦をいいます.強い音は無理で,柔らかな音色を特徴としています.

    このフォルテピアノとガット弦,ピリオド楽器の組み合わせで行われたピアノ・トリオを聴くのは初めての経験でしたが,大公トリオの2~3分で音になれると,たいへん澄んで美しい音が柔らかく優しく響いて,たいへん聴き応えがありました.

    ベートーヴェンは,急ー急ー緩ー急,メンデルスゾーンは急ー緩ースケルツオー急のいずれも4楽章構成ですが,両曲ともほぼ各楽章に聴き慣れたメロディが含まれていますから,ひたすらフォルテピアノとガット弦の3人の名手による優美な響きを堪能した一夜でした.

    なかなか聴くことのない古楽器によるトリオの名曲2曲を楽しんだ一夜でした.


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    所沢ミューズ:河村尚子ピアノ・リサイタル [音楽時評]

    所沢へ初めて行って,ミューズ アークホールで河村尚子のピアノ・リサイタルを聴いてきました.所沢の一段の寒さが身に染みて印象に残りました.

    プログラムは,
    ショパン:   舟歌 嬰ヘ長調 作品58
    ショパン:   ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 58
          ※※※※※※※※
    プロコフィエフ:バレエ『ロメオとジュリエット』10の小品 75より
             第2曲:情景.第4曲:少女とジュリエット,
             第6曲:モンタギュー家とキャビュレット家
    プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 作品82
    でした.

    前半のショパンの舟歌は最初のCDに,そしてピアノ・ソナタ第3番はシューマンのフモレスケとのペアでCD化されており,サイン入りのCDを何度も聴いていますから,私には河村尚子の安定度を確かめさせるような好演でした.

    プロコフィエフの初めの小品はたいへん柔らかく優しいタッチで聴かせてくれました.

    ピアノ・ソナタ第6番は,プログラムの日本語表示にはないのですが,英語表示にははっきりと「戦争ソナタ」とあり,Program Note にもきちんと「戦争ソナタ」と明記されていました.

    この2曲目「戦争ソナタ」は,前半のショパンのソナタ第3番と劇的に違うはずなのですが,ホールが天上が高くていかにも大きすぎたのか,それほどドラマティックな演奏には聴こえなかったのです.
    私は,かねてから有名日本人ピアニストの演奏は,作曲家の誰を弾いても余り変わり映えがしないことに幻滅してきたモノですから,ちょっと河村尚子さんらしくない印象を受けてしまいました.

    ただ,幸い,私は河村尚子の「師クライネフへのオマージュ」と題した,今日の2曲を含むオール・プロコフェィエフ・プログラムを,サイズも適切で音響もはるかに良いトッパン・ホールで3月7日に聴く予定をしていますから,彼女のプロコフィエフ演奏については,今夜は留保して,改めて書きたいと考えます.

    そんな次第で,今夜は,プロコフィエフはお預けにさせていただきます.どうぞご了承下さい.

     

     

     

     


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    武蔵野文化小ホール:シューマン弦楽四重奏団演奏会 [音楽時評]

    2月24日,武蔵野文化会館小ホールに,シューマン弦楽四重奏団を聴きに行って来ました.結成が2007年といいますから未だ駈けだしのクヮルテットです.それでも大阪国際室内楽コンクールでは2位,2012年オーストリアで開催されたシューベルト&現代音楽コンクールというのでは優勝したそうです.

    シューマンは,第1,第2ヴァイオリン,それにチェロがシューマン兄弟なので名付けられたそうです.ヴィオラに日本人の後藤彩子さんが加わっていました.2009年からといいますから,結成2年目で交替があったことになります.

    今夜のプログラムは,
    ハイドン:   弦楽四重奏曲 第66番 ト長調 Op.77-1,Hob.Ⅲ-81「ロブコヴィッツ」
    ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番 「クロイツェル・ソナタ」
          ※※※※※※※※
    シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 二短調 「死と乙女」 D.810
    でした.

    偶然でしょうか,ハイドンの曲は,作品番号の表記が違っていますが,先日,東京クヮルテットが第1曲目に弾いた曲で,その印象が強く残っていたモノですから,出だしからガッガリしました.

    クロイツェル・ソナタはこの直前のブログで,Julliard String Quartet の新メンバーによる演奏評で,クロイツェルの演奏が白眉だったとして述べられていたことが頭に残っていて,これも頂けませんでした.そこでは,

    The highlight of the evening was a brooding, nuanced interpretation of Janacek’s Quartet No. 1 (“Kreutzer Sonata”), ... They aptly conveyed the yearning, urgency and bittersweet joviality of this richly scored work. と書かれていたのですが,シューマンはそれにはほど遠かったと思います.

    シューベルトの超有名な「死と乙女」も頂けませんでした.

    この弦楽四重奏団は,いったいどこまでが常設なのだろうといぶかしく思いました.アンサンブルが決して綺麗ではないのです.チェロが目立つのは悪いことではありませんが,このチェロは高音弦と低温弦で音色が違ってしまうのです.とくに低弦部では音色が濁ってしまって,クロイツエルでも「死と乙女」でも,チェロの低弦が大きく鳴るところでは,全然頂けませんでした.
    それが全体をぶちこわす他にも,第1,第2ヴァイオリンが和音になるべきところが,音色がずれていて綺麗な和音にならないのです.
    ヴィオラは健闘していたと思いますが,アンサンブルを救うまではいけませんでした.

    兄弟姉妹でクヮルテットをやっている老舗にハーゲン弦楽四重奏団がありますが,私が何度も聴いた範囲では,出来不出来の波が大きかったという印象があります.
    このシューマンもそれに似たところがあるように思うのですが,3人兄弟が本当に喧嘩腰でアンサンブルの修正を図ることには無理があるのではないでしょうか.僅か2年でヴィオラが交替したのも,さもありなんという感じでした.

    丁度,タイミングの悪い日に聴きに行ってしまったのがいけなかったのですが,酷評をしてしまいました.いつもではありませんから,ご了承下さい.

    なお,この弦楽四重奏団は26日には秋田県の大仙市で,今夜と同一曲目の演奏会が予定されています.


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    US:メンバー交代で存続するString Quartet [音楽時評]

    先日のブログで,Emerson Quartet がチェロの交替( it would fill the role of the departing cellist David Finckel, a member since 1979, with Paul Watkins, next season)でなお,当分,存続すると書きましたが,今度は,origonal member が1人もいなくなっても音楽学校の看板を背負って存続する例として,Juilliard String Quartet が,看板のfirst violin を交替させて,Juilliard の Faculty Member によるQuartet として,今後も存続の姿勢を明確にし,演奏会で見事な演奏を展開したことが報じられていましたのでご紹介します.

    Mr. Joseph Lin, a sensitive, passionate player with a glowing tone, is the third musician to become the quartet’s first violinist since Robert Mann left in 1997.とあり,Robert Mann が1997年に引退してから,3人目になるそうですが,この台湾からの移民の子はたいへん優秀で,これでJulliard は安定するのではと期待されています.

    Joseph Lin は,
    He has performed with many symphonies, including the Boston Symphony Orchestra and the New Japan Philharmonic. He has also performed chamber music, including appearances at Ravinia and the Marlboro Music Festival. He was an assistant professor of violin at Cornell University from 2007 to 2011.
    In 1996, he won first prize at the Concert Artists Guild International Competition and was named a Presidential Scholar. In 1999, he was the youngest musician to receive the Pro Musicis International award. In 2006, he won the London International String Quartet Competition.

    と輝かしい経歴の持ち主ですから,これからのJulliard SQ は安定して発展するモノと期待されます.

    この Julliard String Quartet 演奏会の音楽評は,タイトルにあるように,新生のQuartet を高く評価しており,その一環にJoseph Lin が置かれています.
    The highlight of the evening was a brooding, nuanced interpretation of Janacek’s Quartet No. 1 (“Kreutzer Sonata”), ... Mr. Lin and his colleagues — Ronald Copes, second violinist; Samuel Rhodes, violist; and Joel Krosnick, cellist — aptly conveyed the yearning, urgency and bittersweet joviality of this richly scored work.

    The evening, part of Juilliard’s faculty recital series, opened with a vivid performance of Stravinsky’s brief Three Pieces for String Quartet.

    The program concluded with a graceful interpretation of Mozart’s Quartet in A (K. 464),.....As an encore, the group offered the Contrapunctus No. 4 from Bach’s “Art of Fugue.”

     

    Music Review

    Finding Janacek’s Yearning, Urgency and Bittersweet Joviality

    After decades together the members of prominent string quartets invariably have to decide whether the whole is greater than the sum of its parts.

    Jennifer Taylor for The New York Times
    Juilliard String Quartet, from left, Joseph Lin, Ronald Copes, Joel Krosnick and Samuel Rhodes, in a faculty recital on Tuesday night at Alice Tully Hall. Mr. Lin, the newest member, joined the quartet last year.

    Some ensembles, like the Guarneri String Quartet, ultimately disband after a prestigious career. Others reincarnate themselves with new members, like the Emerson Quartet, which said last week it would fill the role of the departing cellist David Finckel, a member since 1979, with Paul Watkins, next season.

    So too has the eminent Juilliard String Quartet flourished through a number of personnel changes, and to judge from its concert on Tuesday evening at Alice Tully Hall, there haven’t been any teething problems with the latest recruit, Joseph Lin, who joined the ensemble in 2011, when he became a Juilliard faculty member.

    Mr. Lin, a sensitive, passionate player with a glowing tone, is the third musician to become the quartet’s first violinist since Robert Mann left in 1997.

    The highlight of the evening was a brooding, nuanced interpretation of Janacek’s Quartet No. 1 (“Kreutzer Sonata”), inspired by Tolstoy’s novella of the same name and written while Janacek was infatuated with a married woman. Mr. Lin and his colleagues — Ronald Copes, second violinist; Samuel Rhodes, violist; and Joel Krosnick, cellist — aptly conveyed the yearning, urgency and bittersweet joviality of this richly scored work.

    The evening, part of Juilliard’s faculty recital series, opened with a vivid performance of Stravinsky’s brief Three Pieces for String Quartet. The innovative work inspired the poet Amy Lowell to try to capture the sound and movement of the music in verse after she heard the New York premiere in 1915.

    The program concluded with a graceful interpretation of Mozart’s Quartet in A (K. 464), the fifth of six quartets Mozart dedicated to Haydn, whose efforts in the genre Mozart greatly admired. As an encore, the group offered the Contrapunctus No. 4 from Bach’s “Art of Fugue.”


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    トッパンホール:D.ホープ(vn)リサイタル [音楽時評]

    2月23日,トッパンホールに,ダニエル・ホープのヴァイオリン・リサイタルを聴きに行って来ました.ピアノ伴奏は,セバスティアン・クナウアーでした.

    ホープは,1974年南ア生まれ,ロンドンに移って,Royal Music Academy でザハール・ブロンに師事,メニューインに見出されて,彼と1999年まで60回以上の協演を重ねたといいます.
    その後はウイーンに住んで,世界的に協奏曲やリサイタルで幅広く活躍し,録音も重ねている世界的なヴァイオリニストといえます.

    今夜のプログラムは,
    ブラームス:        G.A.E.ソナタよりスケルツォ
    クララ・シューマン:   ロマンス Op.22-1
    ブラームス:        ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78 「雨の歌」
          ※※※※※※※※
    メンデルスゾーン(D.Hope/S.Kmauer編):
                    歌の翼に Op.34-2
                   魔女の歌(もう一つの五月の歌) Op.8-8
    ヨアヒム:          ロマンス 変ロ長調 Op.2-1
    ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリー舞曲第5番 ト短調
    グリーグ:        ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調 Op.45
    でした.

    ホープは現代曲の初演歴でも知られた人ですが,なぜか今夜のプログラムは,ドイツ中心にノルウエーが加わって,編曲モノも加わり,クララ・シューマンやヨアヒムを取り上げた点は評価できますが,ちょっと焦点が定まっていない感じがしました.ヨアヒムはブラームスやベートーヴェンのカデンツァの作曲で既に有名ですよね.

    ホープのヴァイオリンはほとんど超絶技巧に近いテクニックを駆使して,ヴァイオリンの多様な音を自在に操っていましたが,ブラームスのソナタ,グリーグのソナタのいずれもほぼスタンダードな演奏で,歯切れの良さを別にすれば,ホープならではの個性を感じさせるモノがありませんでした.

    私は日程が重なって聴きませんでしたが,同じトッパンホールでの2月11日のクラマジランの演奏は希に見る個性的なモノだったと聞いていたモノですから,いくらかそれに近いモノを期待してしまっていたのが間違いの元だったかも知れません.

    いいなおしますと,とにかく確かなテクニックを持って,躍動的な演奏をたっぷり聴かせて貰った点を,高く評価したいと思います.     

     


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    神奈川県立音楽堂:東京クヮルテットの名演 [音楽時評]

    来年解散が予定されている東京クヮルテットを聴きに,神奈川県立音楽堂に初めて行って来ました.紅葉坂を登り切ったところにあるので,時間に余裕をもって出かけた方が良いホールです.

    ホールは,音楽専門ホールとしては国内で初めて作られたモノだそうで,それにしても確かにたいへん音響の良いホールでした.
    東京クヮルテットもお気に入りのホールだそうで,何度もお馴染みのホールだそうです.

    この6月には,王子ホールでの公演が2回,清水直子さんを加えて予定されていますが,ことによったら,それが日本での「さよなら公演」になる可能性もあります.

    今夜のプログラムは,
    ハイドン:    弦楽四重奏曲 81番 ト長調 op.71-1 Hob.Ⅲ-81
    バルトーク:   弦楽四重奏曲 第3番 Sz.85
                ※※※※※※※※
    ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 op.132
    でした.

    ハイドンは,弦楽四重奏曲を67曲完成させていますが,ハイドンのこの曲は,op.77 "Lobkowitz" quartets (1799)2曲の1曲目の曲です.その前のErdödy quartets の6曲には,「皇帝」「日の出」「ラルゴ」など有名曲が含まれ演奏機会が多いのですが,その2年後の Lobkowitz 2曲は,もう一つ未完で終わったQuartet No. 68 in D minor, Op. 103, Hoboken No. III:83 (incomplete)を除けば,彼の弦楽四重奏曲では最晩年の円熟期の2曲のうちの1曲です.それだけに複雑な要素を各楽章に取り入れた変化に富んだ名曲です.
    東京クヮルテットは,Allegro moderatoーAdagioーMenuetto Presto-TrioーFinale Presto と多様性を織りなした曲を端正に好演してくれました.
    ただ,若いチェロの朗朗たる響きに較べて,年配の磯村さんのヴィオラが少し衰えを隠せない風情でした.

    バルトークは民族音楽の調査研究に打ち込んだ人で,彼の弦楽四重奏曲にはそれが凝縮されています.なかでも第3番はModerato,Allegro が一気に演奏される知的で,アグレッシブなリズムと響きが支配する名曲です.事実上,第2部のAllegro が第1部の再現コーダになっているのです.
    この緊迫感溢れる曲を,東京クヮルテットは,見事に凝縮した名演奏で聴かせてくれました.

    ベートーヴェンの第15番は
    第1楽章 Assai sostenuto - Allegro イ短調、序奏つきソナタ形式
    第2楽章 Allegro ma non tanto イ長調三部形式
    第3楽章 "Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart(リディア旋法による病癒えたる者の神への聖なる感謝の歌)" Molto Adagio - Andante ヘ調のリディア旋法五部形式
    第4楽章 Alla Marcia, assai vivace (attacca) イ長調 二部形式
    第5楽章 Allegro appasionata - Presto イ短調、ロンド形式
    と5楽章構成で作曲されています.
    両端楽章には神秘性と悲劇性が強く表れていますが,第2,第4楽章には愉悦の要素が含まれており,長い題名の第3楽章のAndante 部分には,別に「新たな力を感じて」と書かれています.
    約50分を要する大曲ですが,この曲が,今夜の白眉となる演奏でした.何度も何度も同じやや沈鬱なメロディが奏でられますが,そこでホッとするほど,全体が引き締まった緊密度の高い曲を,丁寧に力演してくれました.
    このホールへのお別れのメッセージでもあったのでしょうか.

    終演後,4人にホールから花束が贈られ,アンコールにべートーヴェンとは対極的な,1991年作曲の現代曲が短く演奏されましたが,その前に,池田さんがマイクを持参して,このホールへの思い出と賞賛が語られ,継いで,磯村さんがやはるホールへの思い出を語り,ビーヴァーは日本語でホールと聴衆を讃え,グリーンスミスは最初日本語,後半英語で,静かに聴いてくれた聴衆への謝辞が述べられました.

    まだ6月の王子ホールが残っていますが,一時代を画した名クヮルテットが来年で解散することが決まっており,心からご苦労様でしたと申し述べたいと思います.
    紅葉坂といい神奈川県立音楽堂といい,ひとつの思い出を作って貰った演奏会でした.

     

     

     


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    【短信】Kent Nagano がWagner's Ring Cycle を指揮 [音楽時評]

    1951年生まれの Kent Nagano は,そのcareer の初期にBoston Symphony の assistant conductor で小澤と知り合っていますが,その後,取り分けヨーロッパ,カナダで全く自力で道を切り開いて要職を歴任し,とうとうWagner の大曲,Ring Cycle の全曲指揮に,この2月から挑戦しています.

    彼は,1978年から28年間バークレー交響楽団の音楽監督(2006年より首席客演指揮者)を務めながら、ハレ管弦楽団リヨン国立オペラの首席指揮者や音楽監督にも就任,その後はベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者ならびに芸術監督を務めました.
    2006年よりモントリオール交響楽団およびバイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任しています.

    そのバイエルン国立歌劇場,General Music Director Kent Nagano will be conducting his first fully staged Ring from the rostrum of the Bavarian State Orchestra. というのです.

    小澤征爾のWagner は,あいつはWagner のOpera を見たことがないのではないか...と酷評されて,遂に,オペラ指揮者としてはRing にはまったく手が届かなかったこと,ミネソタ菅が間違えて大植英次を音楽監督に迎えてしまい,それでも,それがステップになって,何とか,北ドイツ放送響のハノーファーのサブ・オーケストラの音楽監督に移り,これも過大評価から大阪フィルの朝比奈隆の後任にまでなり,ワグナーの聖地バイロイトに1回招かれましたが,不評から1回こっきりでその後はまったくお声がかからなかったことを考えると,Kent Nagano の快挙を大いに喜びたいと思います.

     

    Der Ring des Nibelungen

    Der Ring des Nibelungen

    From February 2012, the Bavarian State Opera will be staging the "greatest challenge for any opera house" (Nikolaus Bachler) – Richard Wagner's world drama Der Ring des Nibelungen – within just five months. Before the world commemorates the 200th anniversary of the birth of the great composer in 2013, General Director Nikolaus Bachler is shining the spotlight for the rest of the 2011/2012 season clearly on Wagner. The complete tetralogy will be shown in two cycles during the Munich Opera Festival in July 2012 (3-8 July/ 10-15 July) Director Andreas Kriegenburg is responsible for the new production, and General Music Director Kent Nagano will be conducting his first fully staged Ring from the rostrum of the Bavarian State Orchestra.


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    武蔵野文化小ホール:レヴィット(pf)の名演 [音楽時評]

    2月20日,武蔵野文化会館小ホールに,イゴール・レヴィット・ピアノリサイタルを聴きに行って来ました.

    招聘元のプロアルテムジケの紹介では,今世紀最大のピアニストになる才能の持ち主!完璧なテクニックと芸術的成熟を合わせ持つ若き天才ピアニストとあり,期待していましたが,確かに期待を裏切らない鬼才でした.

    1987年ロシア生まれ,8歳でドイツに移り,ハノーファー音楽大学を歴代最高成績で修了とありますから,年齢は24歳でしょうか.2004年に浜松ピアノアカデミー・コンクールで1位になっています.これまでの音楽評の1例を挙げますと,“Such an absolutely reliable virtuoso skill and a creative power, which excellently handles the balancing act between precision and the necessary degree of freedom - something one doesn’t see every day.”(Göttinger Tageblatt, April 2011)と絶賛されています.

    日本で,今期最も期待されている小菅優,河村尚子より少し年下ということですが,たいへんな競争相手が現れたモノです.

    今夜のプログラムはオール・ベートーヴェンの素晴らしいモノでした.
    ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 Op.79 「かっこう」
    ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
    ※※※※※※※※
    ベートーヴェン: ディアベリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調 Op.120
    でした.

    まず,この若さで果敢にディアベリ変奏曲に挑んだ力量に目を見張りました.

    第1曲からそのテクニックに感嘆しました.出だしから本当に綺麗にカッコウの響きを鳴らすのです.ソナタとしてはソナチネに近くて短い「かっこう」が終わって,拍手が入るところを彼が立ち上がらなかったので,そのまま,テンペストに移りました.これがまた実に表現力豊かな見事な演奏で,すっかり魅了されました.

    休憩後,ベートーヴェンがソナタを離れて形式を打ち破って選択した変奏曲のなかでも,旋律や音型を装飾していく装飾変奏から、変奏が主題の性格そのものに及ぶ性格変奏へと変化した,この代表的なディアベリ変奏曲に,レヴィットはスパット入って,1曲,1曲の変奏曲を完璧といってよいテクニックで実に見事にそれぞれの曲の輪郭をクッキリと描き出していたのには感嘆しました.ちなみにこの曲は,ベートーヴェンの「不滅の恋人」とされるアントーニア・ブレンターノに献呈されたノです.ベートーヴェンにとっても自信作だったのでしょう

    私の印象に残っているこの曲の名演は,もう10年以上前のポリーニによる演奏でしたが,1曲,1曲が新鮮に聴こえたという意味では,レヴィットを取りたいという気持ちになりました

    なお,21日には東京文化会館小ホールで,シューベルト:楽興の時 D.780
    プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第4番 ハ短調「古い手帳から」 Op.29
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 10番 ト長調 op.14-2
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番ハ長調「ワルトシュタイン」op.53
    を弾くそうです.
    手持ちのレパートリーもなかなかのもののようです.

    これからの鬼才レヴィットの将来を大いに期待し注目したいと思います.


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    サントリーホール:都響プロムナード・コンサート [音楽時評]

    2月18日,サントリーホールのマチネーで,東京都交響楽団プロムナード・コンサートを聴きに行って来ました.
    指揮は1976年,ウクライナ系の父,ドイツ系の母の下に,イスラエルで生まれたといいますから,35歳でしょうか.BBC Scotish Orchestra のPrincipal Conductor を経て,現在はIceland Symphony のPrincipal Conductor だそうです.多分インバルの推薦で招かれたのでしょう.
    ピアノに清水和音が出演していました.

    プログラムは,
    武満徹:   ハウ・スロー・ザ・ウィンド
    シューマン: ピアノ協奏曲 イ短調  作品54
          ※※※※※※※※
    ブラームス: 交響曲第3番 ヘ長調 作品90
    でした.

    武満の曲は,1991年,晩年の作品で,アメリカの女性詩人エミリー・ディキンソンの詩からヒントをえた作品で,その詩から題が付けられています.
    ですから,曲はたゆたうように静かに始まり,オーボエで奏された主題が他の楽器で繰り返され,循環して,静かに終わります.
    武満は元来はポリフォニックな音楽を作曲してきましたが,晩年は比較的モノリシックな作風に変化したといわれますが,それを実感させる曲でした.

    この指揮者は,両腕を下から上に挙げる形で指揮していました.そういえばBoston Symphony のAssistant をしていたことがあるそうですから,小澤征爾風が入っていたのかも知れません.

    シューマンは,クララのために書かれた単一楽章の協奏曲「幻想曲」を3楽章に改訂して,1845年に完成した作品です.クララ自身が作曲したピアノ協奏曲が時に片鱗を見せるといいます.
    ピアノの技法とオーケストラの有機性が渾然一体化された名作として挙げられる作品ですが.この名曲を清水和音がたいへん鮮明に好演してくれました.

    ブラームスの交響曲第3番は,1883年5月,ブラームスが温泉地として知られるヴィースバーデンに滞在して作曲したといわれます.ヴィースバーデンでは,同地出身の若いアルト歌手ヘルミーネ・シュピース(ブラームスより24歳年下)との恋愛感情が,この曲に影響を及ぼしたといわれています.
    ブラームスはこの曲であえてF-♭A-F(ドイツ語ではF-As-F)というヘ短調に属する音型を用いており,そこから生ずるヘ長調とヘ短調の葛藤が,全曲の性格に決定的な影響を与えているといわれます.シュピースとの恋は実らなかったのです.

    第1楽章 Allegro con brio から,管楽器の基本音型にヴァイオリンが覆いかぶさるように第1主題を提示しますが,基本音型の翳りが付きまといます.クラリネットの第2主題がイ長調で艶やかに現れますが,展開部ではそれが低弦によって嬰ハ短調で展開されます.コーダでは,基本音型と第1主題が対峙しますが,基本音型が優位に楽章を閉じます.
    第2楽章 Andante では,クラリネットファゴットのひなびた旋律が歌われますが,憂愁を帯びた基本音型が付きまといます.
    第3楽章 Poco allegretto は,ハ短調で,木管のくぐもったような響きの上に、チェロが憂愁と憧憬を湛えた旋律を歌いますが,3番のなかで特に印象的な旋律です.中間部は変イ長調で、木管の夢見るような柔らかな表情が特徴的で,再現部で主部の旋律がホルン2本によって再現されます
    第4楽章 Allegro - Un poco sostenuto では,。ファゴットと弦がやや暗い感じの第1主題を示し,トロンボーンの同音反復に導かれて,第2楽章のコラール風動機が奏されます.音楽は激しくなり情熱的に進みますが,第2主題はハ長調,チェロとホルンによる三連符を用いた快活なものでイ短調、ト長調、変ロ長調と転調を繰り返します.再現部で,第1主題,第2主題が表情を変えながら再現され,コーダでは,めまぐるしく主題と基本音型が入り乱れて,最後には第1楽章第1主題が回想され、静かに曲を閉じます.
    ブラームスの4つの交響曲中,最短の曲ですが,まとまりのある充実した曲として心に遺ります.

    指揮者は,両腕の振りがむしろ左右主体となり,適宜,左手で管楽器群に指示を送っていました.
    ブラームスはなかなかの好演だったと思いますが,早い機会に再来日を期待する気分ではありませんでした.


    nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    London:NY Phil & Gilbert への酷評 [音楽時評]

    Londonのスラム街があったEast end の再開発で建てられたBarbican Hall で行われた Alan Gilbert 指揮New York Philharmonic のマーラー第9交響曲演奏会が,酷評されていました.

    賞賛の場合は5っ星のところ,3っ星ですが,文章ではその3っ目の星は except admiration for the brilliance of the orchestral playing, not least the exceptional first horn. My third star is for him. とオーケストラ演奏は輝かしいモノで,特に,第1ホルンが素晴らしかったので3っ目の星と書いて,Alan Gilbert に酷評を集中しています.

    悪口を訳すのは凄く難しいので,結論部分だけ原文のまま引用しておきますが,
    It was, in short, like hearing all the notes but not the reasons for them. It was an accomplished, if uniformly overbearing, exhibition. And Gilbert was still beating time long after the music had lost its pulse leaving this listener feeling cold and unmoved.
    とこれ以上の酷評の仕様はないだろうと思わせるモノです.

    どうぞ,このBernstein を引き合いに出した酷評の極みを,原文をご自由にご渉猟の上,お感じ取り下さい.

     

     

    New York Philharmonic Orchestra/ Gilbert, Barbican Hall

    star number 1star number 2star number 3star number 4star number 5

     

     

    For the New York Philharmonic to have embarked upon a London residency without Mahler in their portfolio would have been unconscionable.

    It was they, after all, who brought it to the wider world under their most celebrated music director Leonard Bernstein. But Alan Gilbert, the current incumbent, is no Bernstein - few are - and to have begun rather than ended this three-day residency at the Barbican with the valedictory 9th Symphony only served to drive home the point that his performance made spectators rather than participants of us all.

    Gilbert led by example with his forensically objective exposition of the score. From bar one of the first movement - a dark night of the soul if ever there was one - orchestral effects were neon-lit, details like stopped horn grimaces and scarifying bass woodwind apparitions thrown into exceptionally high relief. But drawing attention to the mechanics of the writing, highlighting how, for instance, Mahler has his horns switch from open to shut, from their noblest to nastiest sound, was to view this piece purely from where it was going and not from whence it came. One should feel the legacy of the great Austro-German repertoire at all times - but Gilbert even lost sight of what those parodistic inner movements might be parodying. Where was the cheesy old Viennese charm of the lumbering second movement? Why did the demented Bachian counterpoint of the Rondo-Burleske third movement sound merely hectoring and not shocking? Mahler should never feel anonymous, and this performance did.

    For all the furious emoting of each and every climax, one could still count the barlines and feel little or nothing - except admiration for the brilliance of the orchestral playing, not least the exceptional first horn. My third star is for him. But really, where a conductor like Bernstein truly inhabited this music, Gilbert seemed to come at everything from without. Rubatos felt applied not organic and emotional connections, like the poignant premonition of the finale at the heart of the third movement, were heard but not felt.

    It was, in short, like hearing all the notes but not the reasons for them. It was an accomplished, if uniformly overbearing, exhibition. And Gilbert was still beating time long after the music had lost its pulse leaving this listener feeling cold and unmoved.


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    武蔵野文化小ホール:マリーナ・シシュvnリサイタル [音楽時評]

    2月17日,武蔵野文化会館小ホールへ,2008年以来のフランスの violinist マリーナ・シシュを聴きに行って来ました.ピアノ伴奏は津田真理さんでした.

    2008年の時には,凄いプログラムに惹かれて日経ホールに聴きに行ったのでした.当夜は,
    ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調 作品24「春」
    ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100
    サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
           ※※※※※※※※
    フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
    を果敢に弾いていましたが,ヴァイオリンの音に丸み厚みがなく,単調で,むしろピアノがリズムを刻んでいましたが,4年後の今夜の演奏も,ほとんど変わりませんでした.

    今夜は,最初の予定は,
    ショーソン:詩曲
    ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ & ツィガーヌ
    イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第三番 「バラード」
    バルトーク:ルーマニア民族舞曲
    だったのですが,曲目変更通知が事前にあり,実際には,
    ファリャ:    スペイン民謡組曲 (編曲パウル・コハンスキー)
    ドビュッシー: ヴァイオリン・ソナタ
    ラヴェル:    ツィガーヌ
            ※※※※※※※※
    イザイ:     無伴奏ヴァイオリン・ソナタ  ニ単調 Op.27-3 「バラード」
    ショーソン:   詩曲 Op.25
    バルトーク:   ルーマニア民族舞曲
                Ⅰ.棒踊り,Ⅱ.飾り帯の踊り,Ⅲ.踏み踊り,Ⅳ.角笛の踊り,
                Ⅴ.ルーマニア風ポルカ,Ⅵ.早い踊り.
    でした.

    前回もこの人のプログラミングに違和感を覚えたのですが,今夜もそうでした.
    第1曲から「編曲」された作品を持ってくるのは珍しいことではないでしょうか.そして,スペインに始まって,フランス,ベルギー,もう一度フランス,そしてハンガリーの作曲家を並べているのが,ピンときませんでした.

    彼女は Giuseppe Gagliano from 1762 を弾いているのだそうですが,それにしては比較的単調であまり美麗な響きではありませんでした.
    年齢は推測で29歳かと思いますが,ブラームスのヴィオリン・ソナタ全曲とかバッハを含む無伴奏ヴァイオリン曲集のレコーディングがあるにしては,あまり素晴らしいヴァイオリニストという印象には遠い印象でした.

    2008年の時もそうでしたが,イザイの無伴奏以外は,すべて譜面台を置いていました.取り分け希望で曲を変更したドビュッシーもラヴェルも譜面台を立ててめくるのは意外でした.
    暗譜する必要などないと考えてはいますが,たいていはお家芸があるのではないでしょうか.

    どの曲も,ひととおり好演奏だったとは思いますが,技巧面のレヴェルの高さにもかかわらず,音がむしろ一本調子で,ピアノ伴奏にかなり大きく依存した演奏に終始したと思います.

    武蔵野市以外に,19日,徳島県吉野川市,21日,神奈川県鵠沼で同一曲目の演奏会を同じ津田さんとやるようですから,何か聞こえてくるのを聞いてみたい気持ちです.

     

          

     


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    小澤征爾はスッパリ代役指揮者を探すべき [音楽時評]

    小澤征爾は何故またまたエゴイズムの塊のような姿をさらすのでしょう?

    1昨年は,サイトウキネンで,プログラム外の9分間のセレナード演奏でお茶を濁して,チケット代はそのまま...昨年は2回にわたって代役を立てながら,チケット代はそのまま...

    今年の水戸室内楽団では,一部,振ったり振らなかったりで,吉田秀和さんの英断で,一律3000円の払い戻しをしたばかりです.

    その小澤征爾が,今度は,既にチケットを販売していた小澤征爾音楽塾のオペラ「蝶々夫人」のオペラ公演を取りやめ,ステージ上演にして,52歳のフランス出身,New York でアソシェト指揮者のピエールヴァレーに第2幕第1場まで,小澤征爾が第2幕第2場の美味しい所だけを指揮するという,世界のオペラ界に前例のない無理押しのやりかたをするのは,ほとんど暴挙というべきではないでしょうか?

    音楽監督の使命は,自分の出番を探すことではなく,せっかくのプロジェクト・スケジュールを代役を探してでも調正遵守することにあることを,全く忘却してしまったのでしょうか?
    これでは,小澤征爾音楽塾は,公器であることを離れて,サイトウキネン同様,私物化されてしまったことになるのではありませんか?

    一番素直な変更は,せっかくの浅利慶太の演出で,オペラ上演の指揮者に代役を立てることだったはずですが,いったいぜんたいそれは模索したのでしょうか?
    それとも,小澤征爾音楽塾では代役捜しが難しいほど,オペラ音楽界での地位が低下してしまっているのですか?

    ベストな選択は,今からでも遅くはないはずですから,オペラ上演で代役指揮者を探すべきですし,どうしてもそれが無理なら,ステージ上演でもスッパリ代役指揮者を探すべきではないでしょうか!!!

    今回の変更では,主治医と相談の上ということですが,それでは初めからチケット代嵩上げと客寄せを狙った小澤征爾の出番探しが本題だったように聞こえて,どうしても,99%がた,小澤征爾や取り巻きのエゴイズムがまかり通ったと思われてならないのです.
    もし既に変更が確定だとすると,もう15年も小澤に付き合わされて52歳にもなって未だにメト・オペラで下積みのピエールヴァレーがまったく可哀相ですし,重ねて何度も踊らされる聴衆も気の毒なことです!!!
    教育プログラムだといいますが,小澤征爾の元から,これまで本当に育成されて跳躍して行った人はいったいぜんたい何人いたのでしょう!教育を本気でやるなら,成功例の南米のエル・システマ方式を見習ったらどうですか!昨年は,そこからサイトウキネン松本に指揮者を招いたではありませんか!

    サイトウキネンは外国人に分かりにくいから名称を変更する,そして世界に進出すると大々的に打ち出したことが,もうすっかり尻すぼみで何の説明もないままですが,きちんと説明責任を果たさないと,いい加減,日本の小澤信仰も色あせるのではありませんか?

    Tanglewood で小澤がそれまで無関心だった教育プログラムに突然関心を持って強引に干渉したこともひとつのきっかけとなって,Boston Symphony を追われるように去り,人脈でありついたウイーン国立歌劇場では,実質的な仕事はほとんどしなかった小澤征爾が,東京・春・音楽祭のオペラも失って,小澤征爾音楽塾とサイトウキネンにしがみつく気持ちは分からないでもありませんが,もっと若手を正面に立てる度量がない人に,音楽塾や松本の教育プログラムなどの若手育成プロジェクトは不似合い,不釣り合いもいいところではないでしょうか?

    小澤征爾には,Metropolitan Opera のMusic Director, James Levine が,スタッフや聴衆に迷惑をかけたくないと,いさぎよく2013年まで休養を宣言した敬愛される指揮者の前例に習うことを,切に奨めたいと考えるモノです.


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    US: Emerson String Quartet のCellist交替 [音楽時評]

    久しくアメリカのString Quartet のTopを構成してきたEmerson Quartet のチェリストの交替が公表されています.

    これまで34年間にわたって4人で演奏してきた内のチェリストが,60歳を期に,2012~13年シーズン末に交替し,別の活動に入るというのです,David Finckel, 60, is leaving, he announced in a statement, to pursue his own artistic endeavors at the end of the 2012-13 season.

    He will be replaced by the Welsh cellist Paul Watkins, 42, a virtuosic player who is also expanding his career as a conductor, heading the English Chamber Orchestra and pursuing a range of guest-conducting gigs.  と交替するチェリストも,既に指揮者としてのキャリアも展開している才人だそうです.

    実をいうと,David Finckelも多彩な活動を重ねてきた音楽家で,今頃担って今更という感じが拭えないとAnne Midgette は書いています.
    Finckel has been multi-tasking so much for so long that it’s almost surprising that he wants a change at this late date.
    Together with his wife, the pianist Wu Han, he founded and directs the festival Music@Menlo in California, and runs New York’s Chamber Music Society of Lincoln Center. They also have their own recording label, ArtistLed, and concertize independently. This year, Musical America named them, jointly, their Musicians of the Year.
    と誠に多彩な活動を行い,社会的にも既にそれを評価されてきたというのです.

    The Emerson Quartet is arguably the leading string quartet in America, with a host of honors (including nine Grammys), a reputation as exciting and trailblazing music makers, and a string of perpetually sold out concert appearances in Washington. If their star has dimmed in recent years as they settled down in the upper reaches of the performing pantheon, it certainly wasn’t because of Finckel, who has always seemed a revitalizing force in the group. Now that role will fall to Watkins, who will bring new blood and a slightly different accent to an eminently American group.

    Anne Midgette は Emerson がnew blood や少し違ったアクセントを導入して,さらに発展していくことを期待しているようです.
    私も,それを大いに期待したいと思います.

    Posted at 11:01 AM ET, 02/14/2012

    Emerson Quartet announces sea change

    A fixture on the American classical music scene announced a major change this week: the Emerson Quartet, a group that’s played together for 34 years, is switching cellists. David Finckel, 60, is leaving, he announced in a statement, to pursue his own artistic endeavors at the end of the 2012-13 season.

    He will be replaced by the Welsh cellist Paul Watkins, 42, a virtuosic player who is also expanding his career as a conductor, heading the English Chamber Orchestra and pursuing a range of guest-conducting gigs.

    Finckel has been multi-tasking so much for so long that it’s almost surprising that he wants a change at this late date. Together with his wife, the pianist Wu Han, he founded and directs the festival Music@Menlo in California, and runs New York’s Chamber Music Society of Lincoln Center. They also have their own recording label, ArtistLed, and concertize independently. This year, Musical America named them, jointly, their Musicians of the Year.

    The Emerson Quartet is arguably the leading string quartet in America, with a host of honors (including nine Grammys), a reputation as exciting and trailblazing music makers, and a string of perpetually sold out concert appearances in Washington. If their star has dimmed in recent years as they settled down in the upper reaches of the performing pantheon, it certainly wasn’t because of Finckel, who has always seemed a revitalizing force in the group. Now that role will fall to Watkins, who will bring new blood and a slightly different accent to an eminently American group.

    The current configuration of the Emerson has one more season to go. The quartet’s next Washington performance — with Wu Han — is at Strathmore on Wednesday night.

    By | 11:01 AM ET, 02/14/2012 |


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    サントリー:南西ドイツ放送響,ロト指揮,神尾真由子 [音楽時評]

    2月14日,サントリーホールに,フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮の南西ドイツ放送交響楽団,協演者ヴァイオリンの神尾真由子を聴きに行って来ました.

    ロトは1971年生まれといいますから,40歳というところでしょう.2011年9月に,ようやく一級のオーケストラ,南西ドイツ放送交響楽団バーデンバーデン&フライブルクの首席指揮者に就任したのだそうです.
    その指揮振りは,聴衆席から見ていて必ずしも風格のあるものではありませんでした.たびたび指揮台で飛び上がるのですが,節目節目でと納得させるモノではありませんでした.いささか上背が足りないので補っているのかも知れませんが,両腕を振り上げれば済むように思えてなりませんでした.

    オーケストラは金管,木管楽器は一流でしたが,弦楽器群はそれほど豊麗ではありませんでしたし,打楽器は頷けないところがありました.それはベートーヴェンの「英雄」でチンパニーを終始座った姿勢で叩いていて物足りなかった点です.

    神尾真由子については,今さら説明を要しないと思います

    プログラムは,
    ヴェーヴェルン:夏の風の中で 大オーケストラのための牧歌
    シベリュース:  ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
            ※※※※※※※※ 
    ベートーヴェン: 交響曲第3番 変ホ長調 Op.55 《英雄》  
    でした. 

    今夜一番大編成だったのは,ヴェーヴェルン:「夏の風の中で 大オーケストラのための牧歌」でした.いわば,この曲は,大編成のオーケストラを引き連れてきたために組み込まれたマーラー交響曲第5番に代わる作品という感じでした.
    それでも,ピアニッシモから始まって,何度か盛り上がりを繰り返すそれなりに麗美な曲でした.

    シベリュースに移って,神尾真由子は一段と表現力を増し,スケールが大きくなった感じを強く印象づけました. 
    この曲は,創作の比較的初期.交響曲第2番第3番との間に作曲されており,ヴァイオリニストを志したシベリウスの作品らしく、難技巧が随所に取り入れられています.
    1904年に初稿版で初演されましたが結果は芳しくなく,1905年にブラームスヴァイオリン協奏曲を初めて聴いたシベリウスは、自らの協奏曲よりもさらに徹底してシンフォニックなこの作品に衝撃を受け、本作を現在我々が耳にする形に改訂したといわれます.
    第1楽章 Allegro moderato - Allegro molt - Moderato assai - Allegro moderato - Allegro molt vivace ニ短調は,拡大された自由なソナタ形式で,大きくは提示部(3つの主題)-展開部(カデンツァ)-やや変形された再現部とコーダ の形を取っています.
    弱音器付きのヴァイオリンが小さく和声を刻む上を、独奏ヴァイオリンが第1主題(ニ短調)を提示して曲が始まる部分は,たいへん印象的です.
    その後,第2,第3主題が加わった後の展開部がそっくりヴァイオリン独奏のカデンツアという特徴を持っており,このカデンツアの華麗さも強く印象に残ります.その後,3主題が変形されて現れる再現部が続きますが,交響曲を思わせる重厚な響き、緊密な構成など,シベリウスらしい独創性に富んだこの協奏曲の白眉をなす楽章といえます.
    第2楽章  Adagio di molto 変ロ長調3部形式 は,ヴァイオリンがオーケストラと渡り合う感じの楽章です.
    第3楽章 Allegro ma non troppo ニ長調,自由なロンド形式では,独奏楽器が技巧性を発揮する華やかな楽章で,コーダでオーケストラの演奏が短く続いた後,ヴァイオリンが終結音を奏でて終わるエンディングも印象的です.
    全体を通して,神尾真由子は,スケール感豊かに,見事にオーケストラとの協奏を展開していました.今後,さらなる成塾を期待させる好演でした.
    なお,アンコールに得意のパガニーニの24のカプリースより17番が華麗に演奏されました.

    「英雄」は,比較的小編成で,かなり早めのテンポで演奏されましたが,中間楽章のホルンの好演が目立ちました.ただ,前に書いたように,チンパニーの響きが気になりましたし,ロトが何度も飛び上がるのに違和感がありました.
    ロトは昨年の9月就任ですから,今後,いっそう良好な関係の構築が望まれます.

     


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    武蔵野文化小ホール:ブラレイ(pf)リサイタル [音楽時評]

    2月11日,武蔵野文化会館小ホールに,フランス生まれのフランク・ブラレイのピアノリサイタルを聴きに行って来ました.1968年生まれといいますから,43か4歳でしょうか.
    1991年にエリザベート王妃Competition で優勝して以来,目覚ましい活躍を重ねており,日本にも何度も来ているそうで,ラ・フォル・ジュルネにほとんど常連のように来日しているといいますが,私にとっては,初めての体験でした.

    つい先日,イギリスのクァルテットが演奏したドビュッシーに失望したのでしたが,今夜のブラレイのドビュッシーにはたいへん満足しました.

    プログラムは,
    シューベルト: ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D.959
              ※※※※※※※
    ドビュッシー:  「前奏曲」より 第1巻 第4曲  音と香りは夕暮れの大気に漂う
                             第11曲 パックの踊り
                             第6曲  雪の上の足跡
                        第2巻 第3曲  ピーノの門
                        第1巻 第9曲  さえぎられたセレナード
                             第5曲  アナカプリの丘
                             第10曲 沈める寺
    ドビュッシー:映像 第1集 水に映る影,ラモー賛歌,動き
    でした.

    シューベルトのピアノ・ソナタ 第20番は,シューベルト最晩年のピアノ・ソナタ3曲の真ん中の作品で,私が好きな曲の1つです.ブレンデルのCDをよく聴いていますし,昨年は内田光子がサントリーホールで3曲纏めて弾いて呉れたのが,印象に残っていますし,確かラ・フォル・ジュルネで,私は河村尚子の好演を聴いた記憶があります

    第1楽章 Allegro イ長調,第2楽章 Andantino 嬰ヘ短調,第3楽章 Scherzo: Allegro Vivace – Trio: Un poco più lento イ長調,第4楽章 Rondo. Allegretto-Presto イ長調 の4楽章構成ですが,第1楽章では歌謡的旋律が美しく,第2楽章は三部形式で,侘びしげな曲調から中間部にやや激しい曲調が含まれています.第3楽章スケルツオは,技巧的な楽章で聴かせます.第4楽章は,ソナタ第4番からの引用主題を活用したロンドで,テンポをPrestoに速めて,華々しく終わります.
    ブラレイはかなり神経質な人で,プログラム順と楽譜を持ってきてピアノの上に置き,それから椅子の取っ手を左右に回して調整し,両手をピアノのキーボード上部にポンと当ててみて,位置を確かめてから引き始めますが,実に着実に曲想を踏まえ,精巧なテクニックで,個性的な表現力で好演を聴かせてくれました.

    ドビュッシーは,詳細には入りませんが,印象派的といわれるドビュッシーを,かつての名ピアニスト,コルトーを思い起こさせるような,精妙なニュアンスを着実に踏まえて,1曲1曲をたいへん好演してくれました.

    アンコールの1曲目はラベルだったと思いますが,曲名は思い出せません.もっとアンコールをしていたようですが,私は1曲だけで満足してホールを後にしました.

    また機会があれば,ぜひ聴いてみたい魅力的なピアニストです.

     

     


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    How Maestro Dudamel Is Saving Classical Music [音楽時評]

    Gustavo Dudamel は,1981年生まれですから,今31歳でしょうか.10年に1人といってよい素晴らしい才能の持ち主ですが,早くからエル・システマで音楽教育を受けて成長したことは広く知られていますが,他に,幾多の有名指揮者の薫陶も受けています.

    ブエノスアイレスシャルル・デュトワのマスタークラスを受講、2003年にはサイモン・ラトルの招きを受けてベルリンザルツブルクでアシスタントの仕事をする一方、クラウディオ・アバドも彼をマーラー室内管弦楽団に招いています.
    2004年バンベルクで開かれた第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール(エサ・ペッカ・サロネンが審査員の1人)に優勝し、一躍脚光を浴びる存在となった経緯があります.

    2006年には、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラを指揮し、ベートーヴェン交響曲第5番第7番マーラー第5交響曲ドイツ・グラモフォンに録音し、その覇気あふれる演奏で話題となりました.同年にはベルリンダニエル・バレンボイムの元で学んだ後にミラノスカラ座で『ドン・ジョバンニ』の新演出を指揮して成功し,ドイツ・グラモフォンと専属契約をむすんでいます.

    2007年には、ローマ教皇ベネディクト16世の80歳を記念する公演でのドヴォルザークの『新世界より』が、全ヨーロッパにテレビ生中継され、2008年にはベルリン国立歌劇場に『ラ・ボエーム』でデビューしています.また、2009年にはタイム誌のThe 2009 TIME 100に選出されています.

    コンサートではヒナステラなどの、地元南米の作曲家の作品も積極的に取り上げており,シモン・ボリバル・ユース・オーケストラは,他の楽団にはない、固有の開放感に溢れた演奏で、聴衆の人気を集めています.

    2007年からはエーテボリ交響楽団の首席指揮者に、2009年からはエサ・ペッカ・サロネンの指名を受けて,20代の若さでロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任しています.
    2010年12月31日、ベルリン・フィルハーモニーホールにおいてベルリン・フィル ジルヴェスター・コンサート 2010を指揮して.ヨーロッパでも名声を確立しました.

    そのDudamel が今年に入って,果敢にマーラー交響曲全曲演奏会を1ヶ月でロスとカラカスで,ロス・フィルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラによって展開しており,特に,1000人の交響曲といわれる交響曲第8番では,両楽団を合体させて演奏し,ロスとカラカスで演奏会を開催して話題を集めています.
    シリーズのチケットは完売状態で,Dudamel がすべて暗譜でダイナミックに指揮していることも」注目されています.

    以下に,ロサンゼルス・タイムスの音楽評を転載しておきましたが,その見出しが bridging the generation gap—and saving classical music. とあるのが,クラシック界が急速に世代交代を遂げつつあることを示しています.

    たいへん長文なので,あとは,どうぞご自由に,ご渉猟下さい.

     

     

     

    Bravo, Gustavo! How Maestro Dudamel Is Saving Classical Music

    Feb 6, 2012 12:00 AM EST

    Gustavo Dudamel is the Elvis of the orchestra world, and he has the sold-out concerts to prove it. Meet the L.A. Philharmonic conductor who's bridging the generation gap—and saving classical music.

    Gustavo Dudamel explodes out of his seat at the podium during a rehearsal at Los Angeles’s Walt Disney Concert Hall and stands on the tips of his toes, jabbing the air violently with his conductor’s baton, a look of ice pick–murderer concentration crossing his face. Arrayed in front of him, a massive choir of some 800 singers lifts its voices in an ebullient passage from Gustav Mahler’s Eighth Symphony. Impatient with what he’s heard so far, yet intent on coaxing every last bit of romantic drama from the score, the young maestro grabs a nearby microphone to address the group. “We have a phrase in Venezuela: ‘You killed the tiger and now you’re afraid to take the skin,’” Dudamel tells them with loose cordiality. “This is happening here. You have to take the skin! Be more in the moment!”

    The tiger Dudamel is taming today—known as the “Symphony of a Thousand” because of the sheer number of performers it takes to stage—has the maestro behaving like the exacting tiger mom his musicians have come to admire. Dudamel’s interpretation of Mahler’s Eighth has been the most anticipated orchestral event of the season: a sold-out performance (scalpers got $850 for a pair of tickets) featuring singers from 16 local choruses and more than 250 musicians from the two orchestras he commands, the Los Angeles Philharmonic and the Simón Bolívar Symphony Orchestra of Venezuela. As one of the largest-scale works in the classical concert repertoire and a singular fusion of song with symphony, Mahler’s Eighth is a fitting finale for what Dudamel refers to as his “crazy dream,” the Mahler Project. A series of concerts to commemorate the 100th anniversary of Mahler’s death, the project has Dudamel conducting all nine of the Austrian composer’s completed symphonies (as well as the opening movement of his unfinished 10th and “Songs of a Wayfarer”)—completely from memory. Having just finished a blockbuster run in Los Angeles, Dudamel and his orchestras depart this week for Caracas to perform the whole nine yards again.

    Meet the maestro called the savior of classical music. “The Dude,” as he’s come to be known, is widely hailed as “the rock-star conductor,” the classical world’s answer to Elvis Presley or Michael Jackson. The diminutive conductor is a towering figure in symphonic music, whose cultural influence belies his relatively young 31 years. With his undulating mane of corkscrew curls, ecstatic podium presence, and unabashedly modern interpretations of cherished orchestral works, Dudamel has unleashed a flood of new interest in classical music, bridging the generation gap between pension-age high-culture appreciators and younger listeners.

    The L.A. Phil chased Dudamel “around the world” to nab him., Lawrence K. Ho / Los Angeles Times-Polaris

    And the show is just beginning. “The Mahler Project is immense,” says Deborah Borda, president and chief executive of the L.A. Phil. “When we planned it, I don’t think the two of us completely took in how big it would turn out to be.” It is the kind of bar-raising command performance that audiences have come to expect from the Venezuelan wunderkind—a musician who, whether taking on a Sibelius violin concerto or a Strauss symphony, makes a policy of raising the roof whenever he performs.

    The grueling project also underscores Dudamel’s commitment to El Sistema—“The System”—Venezuela’s tough-love musical-outreach program for youth that made the conductor what he is and still counts him as its most forward face. “An orchestra is a model for an ideal global society—a symbol,” he says in his heavily accented English. “You have to create harmony. Everyone has to listen to each other, this large, complex group of people with different personalities that has to communicate. You have to have discipline. This is where The System works! The point is not to build better musicians. It’s to build better citizens, to see children building their lives from music.”

    Born to a salsa-trombone-playing father and a vocal-coach mother, Dudamel grew up in a loving but disadvantaged household. He famously enrolled in El Sistema (full name in translation: the National System of Youth and Children’s Orchestras of Venezuela) at the age of 5. His talent as a violin prodigy was spotted early on, and soon he was receiving tutelage from The System’s founder, José Antonio Abreu, who over the last 37 years has reshaped the lives of hundreds of thousands of disadvantaged Venezuelan youths with his music-education program. By age 18, Dudamel had assumed the role of musical director and conductor of the Simón Bolívar orchestra, El Sistema’s house ensemble.

    (Page 2 of 2)

    The L.A. Phil chased Dudamel “around the world” to nab him., Lawrence K. Ho / Los Angeles Times-Polaris

    “People say, ‘He’s very young!’” Dudamel says. “The image of a conductor is with white hair, 50, 60 years old. But people must remember: I started to conduct when I was 12 years old.”

    Soon the conductor’s aggressively modernist outlook, his exacting vision as an orchestra leader, and his galvanizing pasión with the baton were coaxing reluctant audiences in London, Paris, and New York to give standing ovations of “Bravo, Gustavo!” Critics, meanwhile, began to view the Dude as the charismatic prodigy who could resuscitate the art form (perhaps inevitably, he has also been written off by some critics as “overhyped”). In 2004, the maestro won the first Gustav Mahler Conducting Competition in Bamberg, Germany, and acclaimed conductor Simon Rattle was hailing him as “the most astonishingly gifted conductor I have ever come across.”

    The L.A. Phil’s Borda recalls chasing Dudamel “around the world” to secure his commitment as the orchestra’s music director. After visiting Caracas, Borda in 2007 maneuvered to help found Youth Orchestra Los Angeles (YOLA), which provides free instruments and intensive music and academic training to students from several of L.A.’s most underprivileged neighborhoods. “I remember getting on the plane thinking, ‘I don’t know that I’ll be able to bring Gustavo to Los Angeles,’” Borda says. “‘But I must bring El Sistema back to our city and country.’” The move not only established the first El Sistema program outside Venezuela, it lured Dudamel to the City of Angels, where he took over from Esa-Pekka Salonen as the L.A. Philharmonic’s conductor and musical director in 2009. El Sistema affiliates have since cropped up in American cities such as Chicago, New York, and Baltimore, and as far away as South Korea, Greece, Norway, Denmark, and Scotland.

    At a recent YOLA rehearsal inside the swooping architectural confines of the Frank Gehry–designed Disney Hall, Dudamel’s commitment to his young charges was on vivid display. Guiding an ensemble of 40 kids through a performance of Brahms’s Hungarian Dance No. 5, the conductor was by turns goofy and cajoling. He was also stern, leaving no doubt about his expectations. After the orchestra performed one none-too-satisfactory passage, Dudamel said: “The first time was perfect. The second time was bad. The third time was worse. And the last time was horrible. Sorry, Brahms!”

    Dudamel’s professional habit of holding youth-orchestra members to the high standards he sets for his adult players—even at the risk of riding them—is textbook El Sistema, says Gretchen Nielsen, director of education activities at the L.A. Phil. “There’s a thing they do in Venezuela: they throw out this goal that’s way too lofty for any kid to attain,” she explains. “But it makes them want to rise to that. And it sets up this deep trust. They think about Gustavo as a friend and this great artist. They want to fulfill both of those contracts.”

    Helena Wessman, the managing and artistic director of the Göteborg Symphony, where Dudamel was conductor for five seasons, can attest to the positive impact his nucleos—as teaching centers for El Sistema are known—have had across Sweden. “This El Sistema thing: Gustavo is the icon, the ambassador of it,” she says. “I think within 10 years it will be a strong global movement. What Gustavo is doing is creating big waves of energy throughout the world.”

    Kevin Sullivan / Orange County Register-ZUMA

    To hear it from Dudamel, the endgame of his international acclaim is to provide inspiration. “Fame has two sides for me,” he says. “One is when fame is an inspiration for other people. The other is when fame is an inspiration for you. What that means? In the second case, it becomes an ego thing. ‘I’m the best and everybody knows me.’ In the first, you see the children calling you, and your image is an inspiration for them to accomplish things. For me, that’s amazing. You feel like things are going the right way.”

    Dudamel’s efforts to conjoin his past with his future legacy were thrown into stark relief on a recent afternoon at Heart of Los Angeles, a nonprofit after-school program for underprivileged kids in L.A.’s gritty Rampart district, which houses one of the city’s two El Sistema nucleos. Some 20 members of the Simón Bolívar Symphony Orchestra were giving tutorials on cello and violin to the appreciative and surprisingly well-behaved elementary students. “When we see the children play, it’s like going back in time to watch ourselves learning how to play,” says Manuel Jurado, 20, of the Bolívar Symphony. The young Venezuelans made no secret of how they revere the Dude as something between a national hero and an inspirational icon. “He’s kind of a god for us,” says Bolívar Symphony assistant conductor Jesús Parra, 17. “He’s opened the doors for many conductors to believe in what they do. Out of thousands of children, Gustavo is the main example of what El Sistema can create.”

    Lost on no one is the fact that this savior of classical music comes from the so-called Third World—and doesn’t resemble any of the elderly maestros who’ve been the face of European orchestral music for centuries.

    For his part, Dudamel is happy to function as an antidote to elitism and bridge the cultural divide. “I’m coming from a Latin culture where everything is so energetic,” he says. “I cannot avoid that. It’s in my blood.”


    nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    武蔵野文化小ホール:ブロドスキー弦楽四重奏団 [音楽時評]

    The Quartet is named after the great Russian violinist Adolf Brodsky, dedicatee of Tchaikovsky's violin concerto and passionate chamber musician, who played an important role in musical life in 1920s Manchester and at the Royal Northern College of Music where the Quartet studied.
    とあるように,イギリスでは聞き慣れないロシア出身のヴァイオリニストで,有名なチヤイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を献呈された人物で,イギリスに渡って,最初にこのカルテットを教えた教師の名前を団体名として,1972年に結成されたとあります.
    今年は,結成40年の記念すべき年に当たるそうですが,凄く積極的な団体で,世界中を回って演奏旅行をしており,いわゆるクロスオーバーの曲まで含めて広範囲にレコーディングしています.

    ただ,オリジナル・メンバーは今では第2violinとcelloの2人に減っています.一番新しいのが   第1violinの2007年参加です.前任者は,BBC交響楽団のLeader に転出した後を継いだのだそうです.
    現メンバーは,
    第1violin:  Daniel Rowland
    第2viiolin: Ian Belton
    viola:        Paul Cassidy
    cello:        Jacquline Thomas
    です,

    Rowland が30歳前後で,後の3人は50代から60代でしょうか.その所為もあるのでしょうが,第1violinがいささかアンバランスに鳴り響いて,クァルテットのバランスを崩す場面が目立ちました.

    たいへん面白いプログラミングの仕組みを取っていて,40曲の演奏リストから聴衆が任意に選択したモノをその場で演奏するシステムでコンサートをやっているといいます.

    ただ,今夜の選曲を誰がやったのか知りませんが,大きな失敗だったのではないでしょうか.
    プログラムは,
    ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第4番 ニ長調 Op.83
    ドビュッシー:    弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
                ※※※※※※※※
    ハイドン:       十時架上のキリストの最後の7つの言葉 Op.51 Hob.Ⅲ50-56
    でした.

    今夜の白眉は冒頭のショスタコーヴィチの第4番でした.1949年に作曲されながら,初演は1953年です.まだ,スターリンが健在でしたから,慎重を期したようです.
    第1楽章 Allegretto ニ長調 2/2拍子 小ロンド形式,
    第2楽章 Andantino ヘ短調 3/4拍子 三部形式 
    第3楽章 Allegretto  ハ短調 4/4拍子 ロンド形式,
    第4楽章 Allegretto   ニ長調 4/4拍子 ソナタ形式.
    の4楽章構成で,古典的様式ですが,第1~第3楽章の舞踏調が第4楽章では一転して悲劇性を帯びています.たいへん歯切れの良い演奏で,私も思わず身を乗り出さんばかりでした.

    しかし,ドビュッシーは完全にプログラミング・ミスだったと思います.テンポ早くぐいぐいと押し通して,どう考えてもフランスの印象派的な演奏ではありませんでした.この楽団のラヴェルのレコーディングは好調ですが,ドビュッシーは不慣れだったのではないでしょうか, 

    それよりも大きなプログラミング・ミスは,ハイドンです.
    私がこの曲の日本初演を聴いたのは,カザルスホールでのハレー弦楽四重奏団に俳優の寺田農さんが加わった演奏で,ステージに作ったタワーを十時架に見立てて,その上から,7つの言葉を朗読しながら,第1~第7ソナタを演奏したのです.これなら,聴衆にもまことに分かりやすい演奏になっていました.

    それが,今夜は何の工夫もなしにやったのです.
    せめてステージ上にテロップを流すくらいは出来たでしょうに,..それどころか,事もあろうに,クアルテットだけを楕円形に照明して,客席を暗くしてしまいましたから,プログラムも読めない状態だったのです.
    そして,演奏も,すっかり第1ヴァイオリンが勝ってしまって,アンサンブルに難が目立ちました.

    一体全体,武蔵野文化会館は何を考えてこんな曲を選び,無謀なセッテイングをしたのでしょうか.あまりにも無為無策に過ぎます.

    しかも,この曲の終曲は,キリストが息絶えて生じたとされる「地震」なのです.3.11から1年も経たないのにいったい何を考えて「地震」を表現する音楽を聴かせたのでしょう.
    武蔵野の聴衆はそれが分かっていて「ブラボー」を連発し,盛大な拍手を贈ったのでしょうか?

    私自身を含めて,東日本大震災の大なり小なりの被災者は,帰宅困難者を含めれば,500人の聴衆の中に何人かはいたはずではないでしょうか?

    武蔵野文化会館のプロデュース関係者に猛省を促したいと思います.
    もっと出演者にも,聴衆にも望ましい選曲を心がけるべきでしょう.相手は40曲はいつでも弾ける弦楽四重奏団なのです.

    東京クワルテットが残る日本人2人が来年退団して,解散を予定されていますが,ブロドスキーも,ブロドスキーから教育を受けた残り2人のメンバーが退団すれば解散するでしょう.その意味では,たいへん貴重な機会を無駄にしたというべきです.

    参考までに,関西でのブロドスキーのプログラミングを載せますと,
    Friday 10 February 2012
    Izumi Hall, Osaka (with Ryota Komatsu, bandoneon)
    Piazzolla Four for tango
    Lavista Reflejos de la Noche
    Alvarez Metro Chabacano
    Golijov Tenebrae

    Saturday 11 February 2012
    Sanda City, Japan (with Ryota Komatsu, bandoneon)
    Piazzolla Five Tango Sensations
    Villa-Lobos, Heitor (arr. Ryota Komatsu) First movement of Bachianas Brasileiras No. 5
    Ryota Komatsu A Omar Valente
    Victor Lavallen Vigilia
    Piazzolla Invierno Porteno
    Piazzolla Libertango

    というたいへん興味深いモノです.

     

     


    nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    逗子なぎさホール:クァルテット・アルモニコの好演 [音楽時評]

    私にとっては,遠路はるばるになりますが,久しぶりのクァルテット・アルモニコの演奏会を聴きに行って来ました.

    1人,都合でメンバーの一時的交代があり,今日のメンバーは
    ヴァイオリン:菅谷早葉,荒井知美(生田絵美の代役)
    ヴィオラ:   坂本奈津子
    チェロ:    富田牧子
    でした.

    プログラムは,
    モーツアルト:  弦楽四重奏曲第3番 ト長調 K.156(K.134b)
    モーツアルト:    弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K.387
              ※※※※※※※
    ドヴォルザーク: 弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 Op.96,B.179「アメリカ」
    でした.

    なぎさホールはおよそ650名ほどの中規模ホールですが,ステージ上部に反響板をつけても,やはり残響が不足していました.空気も乾燥していましたから,ほとんどダイレクトにしか音が響かなかったように思います.

    そえでも演奏は常連メンバーに引けをとらない好演をしていました.
    特に1音1音を確実に綺麗な音で弾く菅谷早葉は健在でしたし,荒井知美さんもメンバーに溶け込んだアンサンブル作りに貢献していました.
    そしてこのクァルテットの長所は,ヴィオラとチェロの音が着実にクァルテットのアンサンブルに貢献するように要所を締めて,しっかり4弦の支えになっていることです.特に,富田牧子さんがチェロをしっかりコントロールして,ソロを弾くときはしっかり美しく,他の場面ではクァルテットにしっかり溶け込んでいた点は,これまでにない出色の出来だったと思います.

    モーツアルトの第3番は,ミラノ四重奏曲2番と呼ばれるイタリアで書かれた作品で,Presto,  Adagio, Tempo di menuetto の3楽章構成で,爽快さ,哀切さ,そして宮廷舞曲といった流れです.アルモニコは軽快に好演してくれました.

    14番は,『春』と呼ばれることもあるウイーンで作曲されたハイドン・セットの1番です.
    第1楽章 Allegro vivace assai,
    第2楽章 Menuetto. Allegretto - Trio,
    第3楽章 Andante cantabile,
    第4楽章 Molto allegro
    と4楽章構成となっており,モーツアルトが結婚した幸福感が現れている第1楽章,ダンス音楽の中間部に少し陰鬱さを帯びた第2楽章,各楽器が歌いながら対話する第3楽章,フーガ形式で充実したアンサンブルを展開する第4楽章という充実した構成です.
    この第3,第4楽章は,なかなか充実した演奏でした.途中,第1ヴァイオリンが珍しく音が不安定になった箇所がありましたが,ほとんど目立たないモノでした.

    後半の「アメリカ」はクァルテットを代表する有名曲ですが,ここでは4人が実に充実したアンサンブルを聴かせてくれました.特に第2楽章のいわゆるアメリカの黒人霊歌にヒントを得た楽章はまことに見事な演奏でした.

    アンコールには,新メンバーが参加していたこともあって,モーツアルトの第3番の第2楽章Adagio
    が演奏されました.

    前に,武満徹が,クァルテットを聴くときは,服装の色調が気になるので,カザルスホールでは目を閉じて聴いていると書いていましたが,新メンバーの故もありますが,今日のアルモニコを聴いていて,演奏は素晴らしかったのですが,私は武満さんを思い出していました.

    次の公演が今から楽しみです.

     

     


    nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
    共通テーマ:音楽

    この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。