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武蔵野文化小ホール:ソフィー・パチーニ(pf)の名演 [音楽時評]

3月1日,武蔵野文化会館小ホールへ,ソフィー・パチーニのピアノ・リサイタルを聴きに行って来ました.
1991年にイタリア人の父,ドイツ人の母の間に生まれたといいますから,まだ,21歳と思われますが,そのピアノの才能は,つい先日このブログで武蔵野文化会館の演奏を賞賛したイゴール・レビットと較べても遜色のない天才的なモノでした.
この1年余りの間に聴いた若き天才ピアニストには昨年のチャイコフスキー・コンクールの覇者トリフォノフがいましたが,世界的コンクールを経ずとも,こうした才能が育っているのはたいへん喜ばしいことだと思います.

先日のレビットは大胆にベートーヴェンのディアベリ変奏曲に挑戦して名演を聴かせましたが,パチーニは次のプログラムを演奏しました.
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
ショパン:     夜想曲 第13番 ハ短調 Op.48-1
ショパン:     スケルツオ 第2番 変ロ短調 Op.31
      ※※※※※※※※
リスト:       ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
です.

前半の3曲は余りにも有名な曲ばかりですから,内容に立ち入りませんが,とにかく3曲とも完璧な演奏で,しかも誠にしっかりしたテクニックで,構成力豊か,表情豊かに好演してくれました.

後半のリストのピアノ・ソナタが誠に圧巻でした.
このピアノソナタ ロ短調は、リストが作曲した唯一のピアノソナタであり,彼の最高傑作のひとつであるとともに,ロマン派を代表する重要なピアノ曲のひとつに挙げられています.

1853年に作曲され,シューマンに献呈されましたが,この曲があまりに独創的で革新的なモノであったため,賛否は真っ二つに分れたといいます.シューマンの妻で名ピアニストであったクララ・シューマンは,自分の日記に「ただ目的もない騒音にすぎない.健全な着想などどこにも見られないし,すべてが混乱していて明確な和声進行はひとつとして見出せない.」と書き残したと伝えられています.

しかし,現在ではロマン派史上最も重要なピアノ曲の1つと認められるようになっており,ピアニストにとって必修科目といえるほどで,リストの曲の中でもとりわけ録音数が多い曲に挙げられます.

このソナタの特徴は、比較的少数の動機によって,実質的には4楽章構成の曲全体が支配されていることが挙げられ,それらの動機は,曲中の音楽的文脈に従って、循環手法によって少しずつ変形しながら曲が進められます.ある主題が荒々しかったモノが,次には美しい旋律になって現れるといった手法です.こうした循環手法によって,曲全体が高い統一感を示しているといえます.
しかし,それには,ピアニストに高度な演奏技術と,高レベルの構想力が求められるのです.

パチーニは,まことに見事に,この曲の統一感を顕示させながら,好演してくれました.
蛇足になりますが,エンディングは静かに終わるのですが,それはリストの校訂によるもので,初版は強く終わっていたとする考証があります.

前にも書きましたが,わが国の希望の星,河村尚子と小菅優に,ほんの数年の差で本当に手強い天才的なピアニストたちが,続々と現れているようです.

なお,武蔵野文化会館への注文ですが,半年前くらいまでは,4頁の配布プログラムにきちんとプログラム・ノートが掲載されていたのですが,最近はもっぱら4頁目がチケット売り出し前の演奏家の紹介+東京ではいくらいくらのところ,武蔵野はその半額とか1/3といった宣伝に使われています.
同じようなチラシは会員には郵送され,都内主要音楽ホールで配られる分厚い近日予定演奏会の宣伝パンフレット集にも折り込まれており,当日のプログラムにも何枚もチラシが挟まれているのですから,配布プログラムは,是非とも,当日の演奏会用に限定して,必ず曲目解説を掲載するよう注文しておきます.
至極当然なルールだと思うのです.

 

 

 


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