紀尾井ホール:古楽器でピアノ・トリオを聴く [音楽時評]
2月27日,紀尾井ホールに「4大ピアノ・トリオを聴く」の第1夜を聴きに行って来ました.
昨日はバカ・デカイ所沢ミューズ・アークホールでピアノソロを聴いて,このデカイ・ホールは一般の器楽ソロではなく,もっぱらパイプオルガン専用ホールとして使うべきではないかと考えた程でしたが,今夜は音響の良い紀尾井ホールでフォルテ・ピアノとガット弦を用いたピリオド楽器,ヴァイオリンとチェロの組み合わせによるベートーヴェンとメンデルスゾーンのピアノ・トリオを聴いて,美しくて柔和な音色をたいへん堪能しました.
出演者は
ヴァイオリン: 佐藤俊介
チェロ: 鈴木秀美
フォルテピアノ:クリスティーネ・ショルンスハイム
どいう素晴らしい組み合わせでした.
プログラムは,
ベートーヴェン: ピアノ三重奏曲変ロ長調《大公》97
メンデルスゾーン: ピアノ三重奏曲第1番ニ短調作品49
といういずれも有名曲でした.
演奏の素晴らしさは,とにかく3人の名手が揃って,フォルテピアノとピリオド楽器を使って美しく澄んだ音で演奏したことです.
今夜のフォルテピアノは,オーストリアのインスブルック工房でヨハン・ゲオルク・グレーバーが1820年頃製作したモノだそうで,6オクターブの音域と5本のペダルを備えたモノでした.
フォルテピアノは,革で覆われたハンマーをもち、チェンバロに近い細い弦が張られ,ケースはモダンピアノよりかなり軽くできており,アクション、ハンマーもともに軽く、モダンピアノよりも軽いタッチで持ち上がり,反応が極めてよいといわれます.一言でいって,繊細な音が特色です.
ガット弦は羊腸弦とも呼ばれ,羊の腸を、薄い膜の状態にしたものを引き延ばしてねじり,寄り合わせた弦をいいます.強い音は無理で,柔らかな音色を特徴としています.
このフォルテピアノとガット弦,ピリオド楽器の組み合わせで行われたピアノ・トリオを聴くのは初めての経験でしたが,大公トリオの2~3分で音になれると,たいへん澄んで美しい音が柔らかく優しく響いて,たいへん聴き応えがありました.
ベートーヴェンは,急ー急ー緩ー急,メンデルスゾーンは急ー緩ースケルツオー急のいずれも4楽章構成ですが,両曲ともほぼ各楽章に聴き慣れたメロディが含まれていますから,ひたすらフォルテピアノとガット弦の3人の名手による優美な響きを堪能した一夜でした.
なかなか聴くことのない古楽器によるトリオの名曲2曲を楽しんだ一夜でした.
コメント 0