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サイトウキネンの発想は最早過去のモノ: 追記 [音楽時評]

小澤征爾がようやく1年間の休養を決めたことは,本人にとってたいへん良いことだと思います.

しかし,サイトウキネンが小澤征爾のライフ・ワークというのは,納得しがたい表現です.

第1
に,当初の目的とされた,
there developed a dream until now unimaginable --"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland."
は,サイトウキネンによってではなく,世界に進出した若い世代の多くの有能な日本人音楽家たちによって,既に十二分に達せられたと思われるからです.

さらにいえば,最早,日本はアジアの盟主でもなく,今やその地位はすっかり中国に取って代わられており,中国その他から輩出される優れた音楽家,ラン・ラン,ユジャ・ワン,ユンディ・リたちは,今や世界中に広がっています.

音楽教育の側面でも,日本の鈴木メソッドは世界に広がりましたが,さらにそれを社会運動として展開させて世界に広まったヴェネズエラのエル・システマ('El Sistema')は,欧米を席巻した

The Simón Bolívar Youth Orchestra of Venezuela (SBYOV) の成功によって.広く世界に広がっています.
そのチャンピオン役を担ったGustavo Dudamel はヨーロッパでもアメリカでも地位を確立して,エル・システマを背景に,最早,西洋音楽を世界の音楽へと発展させたといって過言ではありません.

そう考えると,--"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland." は,最早まったく色褪せた,古き良き日本の時代の発想というべきです.

第2に,サイトウキネン松本は,小澤征爾が1人で取り仕切るモノですから,だらだら,だらだらと続く割には見るべきものが少なくって,はっきりいって,西欧でいう音楽祭の多彩さはまったく見られない代物です.有り体にいって,マンネリ化して魅力が乏しいのです.
あまり好きではないので引き合いに出すのは躊躇しますが,比較のために敢えてあげれば,ラ・フォル・ジュルネの多彩さには目を見張るモノがあります.

第3に,今年は,小澤征爾が休養するのではなく,総監督としてサイトウキネンの期間中,指導したり目を光らせるようなことが書かれていますが,それは音楽界では非常識なことです.
休養するといったら,あくまで休養すべきで,そこら中をウロウロするのは,代わりに音楽監督を頼んだ人に誠に失礼で,音楽界の常識に反します.

そんなことも弁えないようでは,総監督など続けて欲しくないモノです.

もう,サイトウキネンもいい加減長くなったことは,昨年,サイトウキネンを改名する,松本プログラムを短縮して世界に進出すると歌い上げたことからも(この話どうなったのでしょう?),サイトウキネン関係者自身が,そろそろ何かを変えなければと遅まきながら考えたのだと思います.

それを変える1つの選択は,小澤征爾を,この機会に名誉監督に棚上げして,かなり増えてきた日本の若き人材から,世代交代を図ることだと考えます.世界の音楽祭シーズンに松本に籠もるなど,全然,つまらないと思う若手も多いでしょうが,そこは小澤征爾が口説き落とすことです.

それにしても,小澤征爾が指導して引き立ててきた指揮者というのは意外にも希少ですね.小澤に師事したと公言しているのは,ミネソタ菅を失格した大植英次くらいではありませんか...
ケント・ナガノがBostonでマーラーの第9交響曲を小澤の代役で振って好評を博した演奏を鮮明に覚えていますが,彼はそれ以前も以後も小澤に師事したなどとは一言もいっていないはずです.

Bostonに29年間も居座って,何年か後に後任になり得る人を誰も育て上げなかった人が,松本に20年いても誰も育て上げなかったのは,いったい何をやってきたのでしょう.
教育プログラムといっても,小手先の技術しか教えてこなかったからではないでしょうか.
小澤征爾音楽塾というから指揮者の教育もやっているのかと思いきや,小澤征爾自身が,自分の代役も探せなかったのはまたったく惨めな話ですね.

強いて挙げれば,新日フィルのアルミンクとハーディングは,一緒にTanglewood の教育プログラムに参加していますが,かつて若くしてラトルやアバドに認められて,ベルリンフィルの指揮台にも上がったハーディングが,35歳になっても主要ポストに就けないでいるのはどうしたことでしょう.
それでも,ごく最近,軽井沢の大賀ホールの音楽監督に就任していますし,もともと今年のサイトウキネンのオーケストラ・プログラムの指揮者にも予定されていますから,彼を今年の音楽監督(小澤は元々総監督)に据えることを提案したいと思います.

その間に,来年以降の音楽祭の斬新な理念を掲げる音楽監督を,全員でしっかり選考して欲しいモノです.
サイトウキネンは既に改名すると打ち出していたのですから,最早,色褪せた理念を唱えた個人名にこだわる理由は全くないでしょう.斬新な理念に相応しい名称にすれば,新たなアピールになることでしょう.

 

追記出発点から理念を外れ,仲間を排斥したサイトウキネン

3月10日,東京交響楽団に協演した神尾真由子を聴きにサントリーホールに行って来ました.指揮が,最初サイトウキネンを一緒に立ち上げた秋山和慶さんだったので,思いついたことを追記します.それは,松本でサイトウキネンがスタートした時まで一緒だった秋山さんが,翌年から外れたことを思い出したからです.

それは初年度にサイトウキネン財団は赤字を出したといいますが,会計が2分裂していて,小澤征爾がサイトウキネンの目的:"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland." に最初から反して,大物歌手ジェシー・ノーマンを招いたほか,その後サイトウキネンの相当数に達してしまう外国人勢を加えていたからです.

目的が本当なら,初めから,日本人ないし桐朋学園関係者に出演者を限定すべきだったでしょうし,今日見るように,1/4~1/3が外国勢では,最早,スローガンの意義は失われて久しいというべきです.

有力外国勢は小澤征爾がNew York の有力エイジェントCAMI(Columbia Artists Management Inc.)と繋がっていて,自分の利益のためにそことの関係強化により強い関心があったからだといいます.また,小澤はサイトウキネンの放映権料を一存でいち早く契約していて,事実上,2つの会計が小澤側に吸収されたのだといいます.現在では10億円超の剰余金の蓄えが出来ているはずです.

当該エイジェントといわず,Boston Symphony も,小澤が日本に1997年に新設される新国立劇場の音楽監督に就任してくれると期待を寄せた(前者はタレントの売り込み先として,BSOは追い出しの手間が省けるとして)のですが,これは日本独特の歌手人脈が暫く独占しましたから,期待は裏切られました.実際にその初代音楽監督になった畑中良輔は,「小澤はオペラが分かっていない」と切って捨てたといいます.もっとも歌手上がりの歴代音楽監督のお陰で,新国立劇場には未だに専属管弦楽団がいない半端なオペラハウスに終わっていることは周知の事実です.

小澤が,エイジエントのコネでウイーン国立歌劇場の音楽監督に就いたのは,畑中を見返した積もりだったのでしょうが,小澤が実質的な仕事は何もできなかったことも周知の事実です.

本題に立ち返って,私は,サイトウキネンは,最初から理念を見失っていましたが,その極みが今年のカラヤンの娘さんのジャンヌダルクへの起用に現れていると思います.
要するに,サイトウキネンは,発足当初から,小澤征爾コネ集団に成り下がっていて,それでもなお綺麗事の"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland."が掲げられてきたのは,外部に対する体裁を取り繕ってきたに過ぎないと考えるものです.

松本を短縮して海外進出というのは,Boston Symphonyを追われ,コネのお陰で就いたウイーン国立歌劇場では,ほとんど無為に過ごした小澤征爾が,小澤征爾コネ集団を最後のより所として,海外に顔を繋ごうという目論見に過ぎないと考えるモノです.

サイトウキネンを実質的に存続させたければ & or サイトウキネン自体が勇気を持って実質的に存続したければ,エゴイストを極めた小澤征爾から,サイトウキネンを取り戻すことから出直すしかないのではないでしょうか.

そもそも松本が開催地に選ばれたのは,小澤が奥志賀を別荘地としていたからですから,新生音楽祭は,開催地も斬新な理念に従って新たに選別し直した方が,後腐れのない,いっそうの心機一転になるだろうと信ずるモノです.
他の音楽祭との合流も視野に入れれば,内容充実には事欠かないのではないでしょうか.

 


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