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サントリーホール:都響プロムナード・コンサート [音楽時評]

2月18日,サントリーホールのマチネーで,東京都交響楽団プロムナード・コンサートを聴きに行って来ました.
指揮は1976年,ウクライナ系の父,ドイツ系の母の下に,イスラエルで生まれたといいますから,35歳でしょうか.BBC Scotish Orchestra のPrincipal Conductor を経て,現在はIceland Symphony のPrincipal Conductor だそうです.多分インバルの推薦で招かれたのでしょう.
ピアノに清水和音が出演していました.

プログラムは,
武満徹:   ハウ・スロー・ザ・ウィンド
シューマン: ピアノ協奏曲 イ短調  作品54
      ※※※※※※※※
ブラームス: 交響曲第3番 ヘ長調 作品90
でした.

武満の曲は,1991年,晩年の作品で,アメリカの女性詩人エミリー・ディキンソンの詩からヒントをえた作品で,その詩から題が付けられています.
ですから,曲はたゆたうように静かに始まり,オーボエで奏された主題が他の楽器で繰り返され,循環して,静かに終わります.
武満は元来はポリフォニックな音楽を作曲してきましたが,晩年は比較的モノリシックな作風に変化したといわれますが,それを実感させる曲でした.

この指揮者は,両腕を下から上に挙げる形で指揮していました.そういえばBoston Symphony のAssistant をしていたことがあるそうですから,小澤征爾風が入っていたのかも知れません.

シューマンは,クララのために書かれた単一楽章の協奏曲「幻想曲」を3楽章に改訂して,1845年に完成した作品です.クララ自身が作曲したピアノ協奏曲が時に片鱗を見せるといいます.
ピアノの技法とオーケストラの有機性が渾然一体化された名作として挙げられる作品ですが.この名曲を清水和音がたいへん鮮明に好演してくれました.

ブラームスの交響曲第3番は,1883年5月,ブラームスが温泉地として知られるヴィースバーデンに滞在して作曲したといわれます.ヴィースバーデンでは,同地出身の若いアルト歌手ヘルミーネ・シュピース(ブラームスより24歳年下)との恋愛感情が,この曲に影響を及ぼしたといわれています.
ブラームスはこの曲であえてF-♭A-F(ドイツ語ではF-As-F)というヘ短調に属する音型を用いており,そこから生ずるヘ長調とヘ短調の葛藤が,全曲の性格に決定的な影響を与えているといわれます.シュピースとの恋は実らなかったのです.

第1楽章 Allegro con brio から,管楽器の基本音型にヴァイオリンが覆いかぶさるように第1主題を提示しますが,基本音型の翳りが付きまといます.クラリネットの第2主題がイ長調で艶やかに現れますが,展開部ではそれが低弦によって嬰ハ短調で展開されます.コーダでは,基本音型と第1主題が対峙しますが,基本音型が優位に楽章を閉じます.
第2楽章 Andante では,クラリネットファゴットのひなびた旋律が歌われますが,憂愁を帯びた基本音型が付きまといます.
第3楽章 Poco allegretto は,ハ短調で,木管のくぐもったような響きの上に、チェロが憂愁と憧憬を湛えた旋律を歌いますが,3番のなかで特に印象的な旋律です.中間部は変イ長調で、木管の夢見るような柔らかな表情が特徴的で,再現部で主部の旋律がホルン2本によって再現されます
第4楽章 Allegro - Un poco sostenuto では,。ファゴットと弦がやや暗い感じの第1主題を示し,トロンボーンの同音反復に導かれて,第2楽章のコラール風動機が奏されます.音楽は激しくなり情熱的に進みますが,第2主題はハ長調,チェロとホルンによる三連符を用いた快活なものでイ短調、ト長調、変ロ長調と転調を繰り返します.再現部で,第1主題,第2主題が表情を変えながら再現され,コーダでは,めまぐるしく主題と基本音型が入り乱れて,最後には第1楽章第1主題が回想され、静かに曲を閉じます.
ブラームスの4つの交響曲中,最短の曲ですが,まとまりのある充実した曲として心に遺ります.

指揮者は,両腕の振りがむしろ左右主体となり,適宜,左手で管楽器群に指示を送っていました.
ブラームスはなかなかの好演だったと思いますが,早い機会に再来日を期待する気分ではありませんでした.


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