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サントリー:南西ドイツ放送響,ロト指揮,神尾真由子 [音楽時評]

2月14日,サントリーホールに,フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮の南西ドイツ放送交響楽団,協演者ヴァイオリンの神尾真由子を聴きに行って来ました.

ロトは1971年生まれといいますから,40歳というところでしょう.2011年9月に,ようやく一級のオーケストラ,南西ドイツ放送交響楽団バーデンバーデン&フライブルクの首席指揮者に就任したのだそうです.
その指揮振りは,聴衆席から見ていて必ずしも風格のあるものではありませんでした.たびたび指揮台で飛び上がるのですが,節目節目でと納得させるモノではありませんでした.いささか上背が足りないので補っているのかも知れませんが,両腕を振り上げれば済むように思えてなりませんでした.

オーケストラは金管,木管楽器は一流でしたが,弦楽器群はそれほど豊麗ではありませんでしたし,打楽器は頷けないところがありました.それはベートーヴェンの「英雄」でチンパニーを終始座った姿勢で叩いていて物足りなかった点です.

神尾真由子については,今さら説明を要しないと思います

プログラムは,
ヴェーヴェルン:夏の風の中で 大オーケストラのための牧歌
シベリュース:  ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
        ※※※※※※※※ 
ベートーヴェン: 交響曲第3番 変ホ長調 Op.55 《英雄》  
でした. 

今夜一番大編成だったのは,ヴェーヴェルン:「夏の風の中で 大オーケストラのための牧歌」でした.いわば,この曲は,大編成のオーケストラを引き連れてきたために組み込まれたマーラー交響曲第5番に代わる作品という感じでした.
それでも,ピアニッシモから始まって,何度か盛り上がりを繰り返すそれなりに麗美な曲でした.

シベリュースに移って,神尾真由子は一段と表現力を増し,スケールが大きくなった感じを強く印象づけました. 
この曲は,創作の比較的初期.交響曲第2番第3番との間に作曲されており,ヴァイオリニストを志したシベリウスの作品らしく、難技巧が随所に取り入れられています.
1904年に初稿版で初演されましたが結果は芳しくなく,1905年にブラームスヴァイオリン協奏曲を初めて聴いたシベリウスは、自らの協奏曲よりもさらに徹底してシンフォニックなこの作品に衝撃を受け、本作を現在我々が耳にする形に改訂したといわれます.
第1楽章 Allegro moderato - Allegro molt - Moderato assai - Allegro moderato - Allegro molt vivace ニ短調は,拡大された自由なソナタ形式で,大きくは提示部(3つの主題)-展開部(カデンツァ)-やや変形された再現部とコーダ の形を取っています.
弱音器付きのヴァイオリンが小さく和声を刻む上を、独奏ヴァイオリンが第1主題(ニ短調)を提示して曲が始まる部分は,たいへん印象的です.
その後,第2,第3主題が加わった後の展開部がそっくりヴァイオリン独奏のカデンツアという特徴を持っており,このカデンツアの華麗さも強く印象に残ります.その後,3主題が変形されて現れる再現部が続きますが,交響曲を思わせる重厚な響き、緊密な構成など,シベリウスらしい独創性に富んだこの協奏曲の白眉をなす楽章といえます.
第2楽章  Adagio di molto 変ロ長調3部形式 は,ヴァイオリンがオーケストラと渡り合う感じの楽章です.
第3楽章 Allegro ma non troppo ニ長調,自由なロンド形式では,独奏楽器が技巧性を発揮する華やかな楽章で,コーダでオーケストラの演奏が短く続いた後,ヴァイオリンが終結音を奏でて終わるエンディングも印象的です.
全体を通して,神尾真由子は,スケール感豊かに,見事にオーケストラとの協奏を展開していました.今後,さらなる成塾を期待させる好演でした.
なお,アンコールに得意のパガニーニの24のカプリースより17番が華麗に演奏されました.

「英雄」は,比較的小編成で,かなり早めのテンポで演奏されましたが,中間楽章のホルンの好演が目立ちました.ただ,前に書いたように,チンパニーの響きが気になりましたし,ロトが何度も飛び上がるのに違和感がありました.
ロトは昨年の9月就任ですから,今後,いっそう良好な関係の構築が望まれます.

 


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