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武蔵野文化小ホール:ブロドスキー弦楽四重奏団 [音楽時評]

The Quartet is named after the great Russian violinist Adolf Brodsky, dedicatee of Tchaikovsky's violin concerto and passionate chamber musician, who played an important role in musical life in 1920s Manchester and at the Royal Northern College of Music where the Quartet studied.
とあるように,イギリスでは聞き慣れないロシア出身のヴァイオリニストで,有名なチヤイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を献呈された人物で,イギリスに渡って,最初にこのカルテットを教えた教師の名前を団体名として,1972年に結成されたとあります.
今年は,結成40年の記念すべき年に当たるそうですが,凄く積極的な団体で,世界中を回って演奏旅行をしており,いわゆるクロスオーバーの曲まで含めて広範囲にレコーディングしています.

ただ,オリジナル・メンバーは今では第2violinとcelloの2人に減っています.一番新しいのが   第1violinの2007年参加です.前任者は,BBC交響楽団のLeader に転出した後を継いだのだそうです.
現メンバーは,
第1violin:  Daniel Rowland
第2viiolin: Ian Belton
viola:        Paul Cassidy
cello:        Jacquline Thomas
です,

Rowland が30歳前後で,後の3人は50代から60代でしょうか.その所為もあるのでしょうが,第1violinがいささかアンバランスに鳴り響いて,クァルテットのバランスを崩す場面が目立ちました.

たいへん面白いプログラミングの仕組みを取っていて,40曲の演奏リストから聴衆が任意に選択したモノをその場で演奏するシステムでコンサートをやっているといいます.

ただ,今夜の選曲を誰がやったのか知りませんが,大きな失敗だったのではないでしょうか.
プログラムは,
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第4番 ニ長調 Op.83
ドビュッシー:    弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
            ※※※※※※※※
ハイドン:       十時架上のキリストの最後の7つの言葉 Op.51 Hob.Ⅲ50-56
でした.

今夜の白眉は冒頭のショスタコーヴィチの第4番でした.1949年に作曲されながら,初演は1953年です.まだ,スターリンが健在でしたから,慎重を期したようです.
第1楽章 Allegretto ニ長調 2/2拍子 小ロンド形式,
第2楽章 Andantino ヘ短調 3/4拍子 三部形式 
第3楽章 Allegretto  ハ短調 4/4拍子 ロンド形式,
第4楽章 Allegretto   ニ長調 4/4拍子 ソナタ形式.
の4楽章構成で,古典的様式ですが,第1~第3楽章の舞踏調が第4楽章では一転して悲劇性を帯びています.たいへん歯切れの良い演奏で,私も思わず身を乗り出さんばかりでした.

しかし,ドビュッシーは完全にプログラミング・ミスだったと思います.テンポ早くぐいぐいと押し通して,どう考えてもフランスの印象派的な演奏ではありませんでした.この楽団のラヴェルのレコーディングは好調ですが,ドビュッシーは不慣れだったのではないでしょうか, 

それよりも大きなプログラミング・ミスは,ハイドンです.
私がこの曲の日本初演を聴いたのは,カザルスホールでのハレー弦楽四重奏団に俳優の寺田農さんが加わった演奏で,ステージに作ったタワーを十時架に見立てて,その上から,7つの言葉を朗読しながら,第1~第7ソナタを演奏したのです.これなら,聴衆にもまことに分かりやすい演奏になっていました.

それが,今夜は何の工夫もなしにやったのです.
せめてステージ上にテロップを流すくらいは出来たでしょうに,..それどころか,事もあろうに,クアルテットだけを楕円形に照明して,客席を暗くしてしまいましたから,プログラムも読めない状態だったのです.
そして,演奏も,すっかり第1ヴァイオリンが勝ってしまって,アンサンブルに難が目立ちました.

一体全体,武蔵野文化会館は何を考えてこんな曲を選び,無謀なセッテイングをしたのでしょうか.あまりにも無為無策に過ぎます.

しかも,この曲の終曲は,キリストが息絶えて生じたとされる「地震」なのです.3.11から1年も経たないのにいったい何を考えて「地震」を表現する音楽を聴かせたのでしょう.
武蔵野の聴衆はそれが分かっていて「ブラボー」を連発し,盛大な拍手を贈ったのでしょうか?

私自身を含めて,東日本大震災の大なり小なりの被災者は,帰宅困難者を含めれば,500人の聴衆の中に何人かはいたはずではないでしょうか?

武蔵野文化会館のプロデュース関係者に猛省を促したいと思います.
もっと出演者にも,聴衆にも望ましい選曲を心がけるべきでしょう.相手は40曲はいつでも弾ける弦楽四重奏団なのです.

東京クワルテットが残る日本人2人が来年退団して,解散を予定されていますが,ブロドスキーも,ブロドスキーから教育を受けた残り2人のメンバーが退団すれば解散するでしょう.その意味では,たいへん貴重な機会を無駄にしたというべきです.

参考までに,関西でのブロドスキーのプログラミングを載せますと,
Friday 10 February 2012
Izumi Hall, Osaka (with Ryota Komatsu, bandoneon)
Piazzolla Four for tango
Lavista Reflejos de la Noche
Alvarez Metro Chabacano
Golijov Tenebrae

Saturday 11 February 2012
Sanda City, Japan (with Ryota Komatsu, bandoneon)
Piazzolla Five Tango Sensations
Villa-Lobos, Heitor (arr. Ryota Komatsu) First movement of Bachianas Brasileiras No. 5
Ryota Komatsu A Omar Valente
Victor Lavallen Vigilia
Piazzolla Invierno Porteno
Piazzolla Libertango

というたいへん興味深いモノです.

 

 


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