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サントリーホール:ヘンシェルQのベートーヴェン連続演奏会3日目 [音楽時評]

6月10日,サントリーホール,ブルー・ローズ・ガーデンにヘンシェル・クァルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会の3日目を聴きに行って来ました.

メンバーは昨夜と同じ,
第1ヴァイオリン/クリストフ・ヘンシェル
第2ヴァイオリン/ダニエル・ベル
ヴィオラ/モニカ・ヘンシェル=シュヴィント
チェロ/マティアス・D・バイヤー=カルツホイ

プログラムは,オール・ベートーヴェンで,
弦楽四重奏曲 イ長調 op.18-5
弦楽四重奏曲 ホ短調 op.59-2 「ラズモフスキー第2番」
弦楽四重奏曲 変ホ長調 op.127
でした.

3日目ともなると,メンバーもホールに慣れて,2日目より好演してくれるかと期待しましたが,そうはいきませんでした.

昨夜はメンバーの正式交替を知らなかったのですが,サントリーホールのPRには,とってつけたように,終わり部分に,2010年、ベルリン・フィル団員でペーターセン四重奏団メンバーであったダニエル・ベルをヴァイオリンに迎え、創設メンバーのクリストフとモニカ・ヘンシェル姉弟、マティアス・バイヤー=カルツホイと共に、宿願のベートーヴェン全曲演奏に臨む.と書かれていました.

しかも,サントリーホールの前宣伝では,ガーデン名物のベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会、2012年はドイツ・ミュンヘンを拠点とする精鋭、ヘンシェル・クァルテットが挑戦します.本家ドイツの今を聴かせるサイクルです.当ホームページおよび一部印刷物にて「日本でドイツの弦楽四重奏団がベートーヴェン全曲を集中して演奏するのは、これが初めて」と事実と異なる情報を誤って掲載しておりました.つつしんでお詫び申し上げます.

とありますが,そうなると「本家ドイツの今を聴かせるサイクルです.」の部分も怪しかったことになります.ダニエル・ベルはイギリス人だからです.

基本的に,第2ヴァイオリンに新楽員を入れてきたのですが,このダニエル・ベルは,演奏レベルでは第1ヴァイオリンのヘンシェルを超えていると思えます.しかし,この新編成のヘンシェル弦楽四重奏団は,時にビブラートから無駄な音が混ざる第1ヴァイオリンとしばしば濁った音を聴かせるチェロが前面に出ていて,綺麗な音を響かせる第2ヴァイオリンとヴィオラは一歩退いた感じです.

要するに緊密なアンサンブルが形成されないまま,音の濁る第1ヴァイオリンとチェロが勝っているのです.この形は日本の弦楽四重奏団にもよく見られる形ですが,ヘンシェルがそんな状態とは知りませんでした.

あと,15日にもう一度ヘンシェルを聴きますから,ヘンシェル評はそこで纏めてするとして,今日はサントリーホールのホームページから引用序でに,今日のマチネーの公演詳報から,林田直樹さんのプログラム解説を引用しておきます.

【6月10日(日)14:00開演】

第5番 イ長調 op. 18-5
 op. 18の6曲の中では最も晴朗で、モーツァルトに近いなどと言われるが、弦楽四重奏曲の最大の確立者ハイドンの存在も忘れてはならないだろう。それまでの伝統にのっとった穏健な一作を創りあげてみせたというところだろうか。しかしどの楽章にもベートーヴェンらしい不穏な緊迫感が一瞬顔を見せる。無駄なく引き締まった第1楽章ソナタ形式はまだしも、第2楽章メヌエットは特にそうである。第3楽章はベートーヴェンが弦楽四重奏曲の中に初めて変奏曲を用いた楽章である。瞑想的な主題が次々に表情を変えていく様は美しい。第4楽章はソナタ形式の終曲で、タタタターというリズムを持つ動機が張り巡らされている。穏やかな終わり方も印象的である。

第8番 ホ短調 op. 59-2「ラズモフスキー第2番」
 ラズモフスキーの3曲の中では最も悲劇性が強く、異常な緊張に貫かれている。第1楽章は序奏なしに単刀直入に2つの強い和音で斬り込むように始まり、内省的な表情を見せる第1主題、平明な第2主題という対照によるソナタ形式。第2楽章もソナタ形式で、不安を抱えながらも、心の平和を求める穏やかな祈りの歌が続いていく。第3楽章はメランコリックなスケルツォ。中間部のトリオでは、のちにムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』の戴冠式のシーンにも出てくるロシア民謡が姿を見せる。第4楽章はロンド・ソナタ形式で、明るさと暗さのないまぜになったような情熱的な音楽。

第12番 変ホ長調 op. 127
 10年以上弦楽四重奏曲から遠ざかっていた晩年のベートーヴェンが、第9交響曲初演の後に、再びこのジャンルへの意欲を燃え上がらせた最初の作品。第1楽章は、冒頭の念を押すような厚みある和音による序奏からして、しみじみと深い味があり、優しさと快活さに満ちた主題群によるソナタ形式。最も長い第2楽章はどこまでも思索を深めていくような変奏曲形式。本日の1曲目、第5番第3楽章の変奏曲とも呼応する。ピチカートに始まる第3楽章スケルツォは、付点のリズムが多く、気まぐれな情緒の変化に満ちている。短く効果的な序奏に続くソナタ形式による第4楽章は、ベートーヴェンの書いた最も幸福感に満ちた音楽のひとつ。なお、この作品は初演後ただちに繰り返し演奏され、熱狂的な聴衆の反応を得たという。

これは,もっと4人が良く揃って,優れたアンサンブルを聴かせるクァルテットを念頭に置いたのでしょうが,ヘンシェルを前にしては白々しく聴こえます.


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