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【短信】サイトウ記念は吉田秀和氏の常識に従うべき [音楽時評]

最近の水戸室内管弦楽団の水戸芸術館とサントリーホールでの公演で,小澤征爾が水戸の2日目は指揮者なし演奏への変更,サントリーホールでは後半のハイドンのチェロ協奏曲(約30分)だけの指揮に変更したことについて,水戸芸術館の吉田秀和さんは,英断をもって,チケット代をチケットのランクにかかわらず,一律に3,000円払い戻すこととされました.

私は,以前に,サイトウキネンで小澤征爾がたった僅か9分間のセレナード演奏でお茶を濁した事例と,短いオペラ公演を代役に委ねた事例について,チケットの払い戻しをすべきだとこのブログに書きましたが,サイトウキネンは多額の資産積み立金にもかかわらず,チケット代の払い戻しに応じませんでした.

しかし,今回,吉田秀和さんという音楽界を代表する知識人が,水戸芸術館長としての責任で,チケット料金の一部払い戻しを実施された事実を真摯に受け止め,サイトウキネンは,昨年と一昨年のチケット代の一部払い戻しにこれからでも応ずべきですし,今年,予定されている「マダム・バタフライ」のチケット販売に当たっては,万一指揮者交替の場合は,チケット料金の一部払い戻しに応ずる旨を明記すべきだと考えるものです.

アメリカで小澤征爾が長居し過ぎたあと,ボストン交響楽団を一流に引き戻したJames Levine は,Metropolitan Opera のMusic Director と Boston Symphony のMusic Director を兼任していましたが,腰の何度目かの手術のあと,Boston を辞任し,Metropolitan Opera は,いち早く,2013年までの休演を申し出て休養中です.

小澤征爾も,Levine のような責任ある身の処し方を見習って,思い切って来年までの休養を決められるのも一つのあり方ではないでしょうか? 

以上のことを,サイトウキネンに強く要望するモノです.


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サントリーホール:読響定期,上岡指揮,ブランク(sp) [音楽時評]

1月25日,サントリーホールに読売交響楽団第511回定期演奏会を聴きに行って来ました.
私はかねて小澤征爾と大植英次にはアメリカで幻滅し,代わって,大野和士と上岡敏之を高く評価しているのですが,その上岡がマーラーの第4交響曲を振るというので出かけたのです.

プログラムは,
モーツアルト: 交響曲第34番ハ長調 K.338
            ※※※※※※※
マーラー:    交響曲第4番 ト長調〈大いなる喜びへの賛歌〉 ソロ:ブランク(sp)
でした.

モーツアルトの交響曲第34番は余り演奏されない曲ですが,
1.Allegro vivace 2.Andante di molto piu tosto Allegretto 3.Allegro vivace の3楽章を,上岡は,この曲の構成をくっきりと浮き彫りにさせる,身体全体を使った精妙な指揮で,好演してくれました.アンコールで3回もステージに呼び戻されていました.

マーラーの第4番は,ほぼ1時間弱のマーラーにしては短い曲ですが,4楽章構成で,
第1楽章:中庸の速さで、速すぎずに.ト長調4/4拍子 ソナタ形式
第2楽章:落ち着いたテンポで、慌ただしくなく.スケルツォハ短調3/8拍子 三部形式
第3楽章:静かに、少しゆるやかに ト長調 4/4拍子 変奏曲形式
第4楽章:非常に心地よく.ト長調 4/4拍子
と,あまりテンポの変化は明確ではありませんが,各楽章が独立性を持ちながら,実は密接に結びついています.第4楽章はソプラノ独唱で「少年の不思議な角笛(天上の生活)」が用いられていますが,それは,第2楽章,そしてとりわけ第3楽章でも用いられており,楽章間の連関が形成されています.

上岡は,この総体的にゆったりしたテンポの各楽章を,実に丁寧に音響の強弱をたっぷりと効かせて,たいへんドラマティックに演奏して呉れました.時にオーバーでは?と感じさせるほどでしたが,第1楽章で,いったん収束した上で,フエルマータを巧みに使って,最弱音から最強音まで盛り上がりを作って終始させた演奏はまことに見事でした.
第2,第3楽章でも曲の盛り上がらせ方は充実していましたが,2楽章では.コンマス藤原浜雄の長2度高く調弦したヴァイオリン・ソロが入っていました.
3楽章の盛り上がりから入ったソプラノ・ソロ入りの第4楽章では,歌詞がフモレスケというか,ユーモア混じりの歌詞ですから,あまり盛り上がらずに,比較的,静かに終わりました.
ソプラノのキリステン・ブランクは,トイツ人歌手ですから,よく曲に乗せて透き通るような美声で歌っていました.

改めて上岡敏之の実力を示した,たいへん内容豊かな演奏会だったと思います.

 

 


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