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サントリーホール:山田和樹指揮,都響プロムナード [音楽時評]

1月28日,サントリーホールへ東京都交響楽団のプロムナード・コンサートに出かけ,期待の若手指揮者,山田和樹を聴いてきました.トランペットのマティアス・ヘフスがソロで協奏曲に参加していました.また,コンサート.マスターは筆頭の矢部達哉でした.

山田和樹は,松尾葉子さんと小林研一郎さんの弟子で,2009年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し,一躍,脚光を浴びた期待の若手です.
同年に,サイトウキネンの指揮者に招かれ,なんと,小澤征爾ワンマン・ショウに飽きがきていた聴衆から,サイトウキネン始まって以来の好演と賞賛された素晴らしい指揮者です.

プログラムは,
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より〈ポロネーズ〉
アルチュニアン: トランペット協奏曲 変イ長調
       ※※※※※※※※
ラフマニノフ:   交響曲第2番 ホ短調 作品27
でした.

山田和樹の指揮振りは,あまり身体を動かさず,両腕だけで指揮するタイプですが.最初の「ポロネーズ」からしっかりと都響を掌握して,まことに鮮やかにポロネーズのリズムを刻んでいました.
歌劇は,厭世的なオネーギンが,村の地主の娘タチアナの純愛を拒否しながら,やがて彼女が公爵夫人として首都の社交界に華やかに登場したのに出会って,今度はオネーギンが求愛して拒否されるという筋書きですが,このポロネーズは第3幕冒頭でペテルブルクの社交界を描写したモノです.
この曲だけで山田は,なかなか非凡な才能の持ち主であることを強く印象づけました.

次のトランペット協奏曲は単一楽章ですが,3部構成で,即興的な序奏主題,明朗な第1,メランコリックな抒情的第2主題が第1部で提示され,その展開の後,弱音器を付けたトランペットが抒情的で美しいメロディを歌う緩徐部分が入り,第3部では第1部の第1主題が回帰し,カデンツァを経て結ばれます.
アンコールに応えて,この緩徐部分が再演奏されました.

ラフマニノフの第2交響曲は,約1時間を要する,名曲コンサートの定番ですが,
第1楽章:Largo - Allegro moderato ホ短調 序奏つきのソナタ形式
第2楽章:Allegro molto イ短調 複合三部形式スケルツォ
第3楽章:Adagio イ長調 三部形式
第4楽章:Allegro vivace ホ長調 ソナタ形式
という構成ですが,第1楽章の長大な序奏冒頭の低弦の音型が,全曲の循環動機となっています.その後,ラフマニノフ特有のメランコリックな第1主題とロマンティックな第2主題が提示され盛り上がりますが,中間部への序奏が入り,中間部では各種の動機が入り交じって盛り上がり,再現部でも主題が反復された後,不安げなコーダで終わります.
第2楽章は緩徐楽章の前に置かれたスケルツォで,特記すべきは「グレゴリオ聖歌」の《怒りの日》が主題として現れ,展開されていることです.
第3楽章は情感に溢れた緩徐楽章で,ここでもラフマニノフらしい耽美的なメロディが歌われます.
第4楽章は,ロシア交響曲の伝統に従って先行楽章の動機や主題が集約的に総括される終楽章となっています.

山田和樹は,絶えず,小さな動きで的確な指示を与えながら,大オーケストラをぐいぐいと引っ張っていました.最近,管弦の演奏が充実した都響を背景に,希に見る好演だったと思います.

山田和樹は近くスイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者の地位に就くそうですが,彼の今後さらなる成長を期待してやみません.


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