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武蔵野文化小ホール:レヴィット(pf)の名演 [音楽時評]

2月20日,武蔵野文化会館小ホールに,イゴール・レヴィット・ピアノリサイタルを聴きに行って来ました.

招聘元のプロアルテムジケの紹介では,今世紀最大のピアニストになる才能の持ち主!完璧なテクニックと芸術的成熟を合わせ持つ若き天才ピアニストとあり,期待していましたが,確かに期待を裏切らない鬼才でした.

1987年ロシア生まれ,8歳でドイツに移り,ハノーファー音楽大学を歴代最高成績で修了とありますから,年齢は24歳でしょうか.2004年に浜松ピアノアカデミー・コンクールで1位になっています.これまでの音楽評の1例を挙げますと,“Such an absolutely reliable virtuoso skill and a creative power, which excellently handles the balancing act between precision and the necessary degree of freedom - something one doesn’t see every day.”(Göttinger Tageblatt, April 2011)と絶賛されています.

日本で,今期最も期待されている小菅優,河村尚子より少し年下ということですが,たいへんな競争相手が現れたモノです.

今夜のプログラムはオール・ベートーヴェンの素晴らしいモノでした.
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 Op.79 「かっこう」
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
※※※※※※※※
ベートーヴェン: ディアベリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調 Op.120
でした.

まず,この若さで果敢にディアベリ変奏曲に挑んだ力量に目を見張りました.

第1曲からそのテクニックに感嘆しました.出だしから本当に綺麗にカッコウの響きを鳴らすのです.ソナタとしてはソナチネに近くて短い「かっこう」が終わって,拍手が入るところを彼が立ち上がらなかったので,そのまま,テンペストに移りました.これがまた実に表現力豊かな見事な演奏で,すっかり魅了されました.

休憩後,ベートーヴェンがソナタを離れて形式を打ち破って選択した変奏曲のなかでも,旋律や音型を装飾していく装飾変奏から、変奏が主題の性格そのものに及ぶ性格変奏へと変化した,この代表的なディアベリ変奏曲に,レヴィットはスパット入って,1曲,1曲の変奏曲を完璧といってよいテクニックで実に見事にそれぞれの曲の輪郭をクッキリと描き出していたのには感嘆しました.ちなみにこの曲は,ベートーヴェンの「不滅の恋人」とされるアントーニア・ブレンターノに献呈されたノです.ベートーヴェンにとっても自信作だったのでしょう

私の印象に残っているこの曲の名演は,もう10年以上前のポリーニによる演奏でしたが,1曲,1曲が新鮮に聴こえたという意味では,レヴィットを取りたいという気持ちになりました

なお,21日には東京文化会館小ホールで,シューベルト:楽興の時 D.780
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第4番 ハ短調「古い手帳から」 Op.29
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 10番 ト長調 op.14-2
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番ハ長調「ワルトシュタイン」op.53
を弾くそうです.
手持ちのレパートリーもなかなかのもののようです.

これからの鬼才レヴィットの将来を大いに期待し注目したいと思います.


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