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芸術劇場:アルブレヒト指揮読売日響&神尾真由子(vn) [音楽時評]

2月19日,ゲルト・アルブレヒト指揮読売日本交響楽団の芸術劇場名曲シリーズを聴きに行ってきました.

Violin に神尾真由子が加わって,Brahms のViolin Concerto と                                アルブレヒト指揮で Brahms の交響曲第2番が演奏されました.

アルブレヒトと神尾真由子は,2002年にブルッフで協演したことがあり,アルブレヒトが絶賛したという話が残されていますが,今度は,若手ヴァイオリニストにとってはチャレンジになるBrahms ですから,たいへん楽しみでした.

上記の2曲は,1878年(Brahms 45歳)南オーストリアの山々に囲まれた美しいヴェルター湖畔の村、ペルチャッハで相次いで作曲されたものといいます.

Violin 協奏曲は,ゆったりとした牧歌的な第1主題で始まり、美しい旋律が途切れなく続く第1楽章、オーボエの優美な旋律で始まり、重厚で、渋い中間部が、最高に魅力的な第2楽章、情熱的で軽快な第3楽章からなっています.                                       演奏は,前にグリーグのピアノ協奏曲で,河村尚子がピアノの音をオーケストラに溶け込ませて弾いていたと書いたことがありますが,今夜の神尾真由子は終止Violin の音をオケから際立たせて,優美かつ透明で力強い音を鳴らして弾いていました.第2楽章のオーボエ協奏曲と言われる部分も,オーボエが好演していました.                                           アルブレヒトが巧みにオケを協奏させていましたから,まことに希に見る好演だったと思います.

交響曲第2番は,同じ美しい風景とおだやかな自然環境のなかで,すばらしい創作の霊感を受けて大半が作曲され,美しい旋律がよどみなく流れ、柔和かつ温和で、幸福感に満ちた曲となっています.                                                         アルブレヒトは,ほぼ同年代の小澤の大振りな指揮と違って,たいへん身体はほとんど動かさず,ほとんど両腕だけで,省力的な指揮を暗譜でやっていました.読響の団員も今は桂冠指揮者のアルブレヒトの久しぶりの指揮をしっかりと受け止めて,美しい旋律のつづくなかに,ハッキリしたメリハリをつけて,この曲を非常に好演していました.

Brahms のほぼ同じ時期に同じ美しい環境で作曲された2曲を,大いに堪能した一夜でした.   来週は,同じ顔ぶれで,シュポアを聴く予定ですが,今からたいへん楽しみです.

 

 


王子ホール:東京クァルテット演奏会 [音楽時評]

2月18日,王子ホールに東京クァルテットの演奏会を聴きに行ってきました.何よりも4人ともたいへんお元気そうでした.                                               メンバーは,Violin: マーティン・ビーヴァー,池田菊衛, Viola:磯村和美, Cello:クライブ・グリーンスミス でこのところ固定しています.

プログラムは,                      
ハイドン:    弦楽四重奏曲 第82番 ヘ長調 Hob.Ⅲ/82. Op.77-2
           ※※※※※※
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130 「大フーガ付き」 
でした.

ハイドンの4楽章は,とにかくアンサンブルが綺麗でした.各楽器(いずれもストラディヴァリ)の音が美しくって,4つの楽章をひきたていました.
なかでもチェロの澄んだ音がたいへん目立ちました.他の日本のクァルテットではロータス,アルティ,それにアルモニコ位しかこのレベルには近づけないと思います.

べートーヴェンの第13番は,最初この大フーガ付きで作曲されましたが,あまりに長大になるというので,別の楽章を書いていますが,今夜は元の大フーガ付きの演奏でした.             
第1楽章の序奏の導入がちょっと温和しすぎましたが,直ぐに調子を戻して,ソナタ形式の楽章を通して何度か反復されました.第2楽章はPresto でたいへん切迫感のある楽章です.  
第3楽章はAndante con moto, ma non troppo. Poco scherzoso とあって,ややくだけた感じのメロディが表現されていました.第4楽章も比較的短いブリッジ風の楽章でした.
第5楽章は,Cavatina. Adagio molto espressivo でバートーヴェンの弦楽四重奏曲全体を通しても,最も叙情味に溢れ,やや哀愁に満ちた美しく忘れがたい楽章です. 
大フーガは,3つのフーガからなる難解な曲で,ベートーヴェンと神との対話とも呼ばれるモノですが,4人の名手によってかなり掘り下げた演奏を聴かせてくれました.

たいへんな名演で鳴り止まぬ拍手に答えて,シューベルトの弦楽四重奏曲「断章」のフィナーレが丁寧に演奏されました.

たいへん充実した滅多に聴けないような演奏会でした.                                              

なお,アンコール曲の紹介に先立って,今年の夏に,ベルリン・フィルの首席ビオラ奏者清水直子さんを加えた弦楽五重奏の演奏会の紹介がありましたので,付言しておきます.


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