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オペラシティ:スクロヴァチェフスキー指揮,SKドイツ放送フィル [音楽時評]

名前が長いのは,先日のベルリン放送交響楽団が,2年前に,ベルリン・ドイツ交響楽団(やはり放送交響楽団)と合併しようとして,ドイツ交響楽団側がヤノフスキーの指揮下に入ることに強く抵抗して話がご破算になったのに対して,この長い名前のザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団は合併に成功したため,名前が長くなったのです.

先日のヤノフスキー,ベルリン放送交響楽団の演奏水準には疑問を感じましたが,ご丁寧に10月下旬にはもう一方のベルリンドイツ交響楽団(これも放送交響楽団)が来日し,佐渡裕指揮で各地で演奏会を予定しています.ヤノフスキーはNHK音楽祭でしたが,佐渡裕はTBSがバックしています.もっともベルリンドイツ交響楽団のMusic Director は来年から期待の大物若手指揮者トゥガン・ソヒエフ(34歳)の就任が決まっていますから,疑いなくこちらの方が演奏水準は上だと思います.因みに,ケント・ナガノがかつて音楽監督を務めていました.

余談になりましたが,SK(略称)は,今秋からカレル・マーク・チチヨンが音楽監督で,スクロヴァチェフスキーは首席客演指揮者だそうです.
なお,スクロヴァチェフスキーは,今年年末のNHK交響楽団のベートーヴェン第9交響曲の連続演奏会指揮者に予定されています.

SKは19,20日とオペラシティで公演しましたが,昨夜はブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」,今夜が同じブルックナーの第9番交響曲でした.私は,ウイーンフィルで「ロマンティック」を聴きましたから,比較してしまうのが嫌で,第9番のチケットにしました.

今夜のプログラムは,
シューマン:  交響曲第4番 ニ短調 op.120
※※※※※※※
ブルックナー: 交響曲第9番 ニ短調
でした.

シューマンの4番は,クララとの結婚後間もなく完成され,クララに捧げられた曲ですが,4楽章構成をアタッカで全楽章が続けて演奏される形式への改訂の時期をとって,最後の交響曲となっています.
第1楽章はやや重苦しい序奏に始まり,悲哀を訴えるような主部が続きます,第2楽章でもメラコリックな部分と夢想的な部分が入り混じります.第3楽章はドラマティックな部分ですが,循環形式でこれまでの主題が繰り返されたりして,金管の斉奏をブリッジにして終楽章に入り,暗から明への意図を明確にして曲を閉じます.
オーケストラの右側の2階席から見下ろしていたので,スクロヴァチェフスキーの指揮がよく見えたのですが,譜面台に置かれた楽譜は表紙のままで,暗譜で,ほとんど両手の上下だけで指揮していました.それでもリハーサルが行き届いていたのでしょうが,各パートがたいへん綺麗な響きを聴かせていましたし,アンサンブルも見事で,さらにソロで長いフレーズを弾いた女性コンサートマスタも鮮やかで,滅多に聴けないような名演でした.
この位置でオケを聴くのは,トリフォニーの新日フィル以来ですが,今夜の音の輝きには感嘆しました.

今夜の名演はさらにスクロヴァチェフスキーお得意のブルックナーでした.今夜は,最近の傾向に従って,オリジナル版,つまりブルックナー自身の手で完成された3楽章までの構成で演奏されました.
楽器編成が一段と大きくなり,ホルン8本を間近に見るのは初めてでしたが,前に聴いたウイーンフィルで気になったようなホルンの音の濁りは,まったく聴こえませんでした.
「厳粛さをもって,神秘的に」の第1楽章は,3つの主題を持つソナタ形式で,展開部ではそれが融合されて現われます.とにかく木管のオーボエ,フルート,クラリネット,ファゴット,そして金管のトランペット,トロンボーン,ホルンが間近で鳴り響くのですが,五弦もステージ右手前に位置したチェロ,私のほとんど真下にいたコントラバス,その前のヴィオラの重厚な音がよく聞けましたし,高音の第1,第2ヴァイオリンも透き通って良く聞こえました.
第2楽章「躍動的に,生気に満ちて」では,有名なブルックナー旋律ダ,ダ,ダッダ,ダ,ダ,ダッダのピチカート音型が音程を上げたり下げたりしながら鳴り響いていました.ホルン8本がことのほか壮観でした.
第3楽章「緩やかに,厳粛さをもって」では,ホルンの8人の内4人がワーグナーチューバと持ち替えていましたから.また彩りが豊かになっていました.「抒情的な静けさと畏怖の念をもつ音楽」と呼ばれますが,ワーグナーチューバに荘厳なコラール風の主題が挿入されます.第1楽章第1主題を暗示したこの主題を,ブルックナーは「生との訣別」と呼んだと伝えられています.
いったん静まって,弦楽が主題を奏しはじめますが,次第に木管,金管に広がって,新たな主題に発展し盛り上がります.やがてホルンの動機を加えつつ、最終的にはワーグナーチューバが不協和音を奏で,フルートがコーダに登場する伴奏音形を予告する形で総休止となり,コーダに入ります.そこでは,第7交響曲の冒頭主題や第8交響曲のアダージョ主題をワーグナーチューバで回想し静かに全曲を閉じます.
ブルックナーの最後のそして畢生の大作と呼んでよいのでしょう.たいへんな名演奏の聴きモノでした.

私は大野和士指揮でベートーヴェンの第9を聴きますが,スクロヴァチェフスキーの第9も,さぞかし名演を展開してくれるのではないでしょうか.ますますのご壮健を祈りたいと思います.


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