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武蔵野文化小ホール:デセール・ピアノリサイタル [音楽時評]

10月21日,武蔵野文化会館小ホールに,フランスから来日したクレール・デセールのピアノ・リサイタルを聴きに行ってきました.

今年5月のラ・フォル・ジュルネに多くの外国人参加予定者がキャンセルした中で,彼女は進んで来日し,彼女の人気がたいへん高まったといいます.堤さんの伴奏もこなしたそうです.
30代はじめと思われますが,正確には分かりません.名手とは言い切れませんが,なかなか気さくに,そして誠実に演奏する人という印象を受けました,

プログラムは,
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
ショパン:     夜想曲 第20番 嬰ハ短調 遺作
ショパン:     幻想曲 ヘ短調 Op.49
      ※※※※※※※※
ムソルグスキー: 展覧会の絵でした.

「テンペスト」はたいへん慎重,誠実に弾かれましたが,Ⅰ.Largo-allegro,Ⅱ.Adajio,Ⅲ.Allegrettto を情熱的に弾いてくれました.時にトレモロの乱れ,ミス・タッチがありましたが,全体を見据えたまとまりの良い演奏だったと思います.

ショパンは,夜想曲も幻想曲も,ちょっとショパンならではの情感,叙情性が十分には伝わらず,いささか不満が残りました.

「展覧会の絵」に彼女自身の力点が置かれていたように見受けました.

この曲はムソルグスキーが、彼の友人であったヴィクトル・ハルトマンの遺作展を歩きながら、そこで見た10枚の絵の印象を音楽に仕立てたものです.ロシアにとどまらずフランス、ローマ、ポーランドなどさまざまな国の風物が描かれており,また、この10枚の絵がただ無秩序に並ぶのではなく、「プロムナード」という短い前奏曲あるいは間奏曲が5回繰り返して挿入されるのが特徴的で、この「プロムナード」はムソルグスキー自身の歩く姿を表現しているといわれます.「プロムナード」、「古城」、「卵の殻をつけた雛の踊り」、「ビドロ」、「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤーガ」、「キエフの大門」など覚えやすいメロディーと緩急自在の構成(ユーモラスな曲、優雅な曲、おどろおどろした曲、重々しい曲など)から、ムソルグスキーの作品の中でももっとも知られた作品の一つになっています.

第1プロムナード 
 第1曲 小人(グノーム)
第2プロムナード 
 第2曲 古城
第3プロムナード 
 第3曲 テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか 
 第4曲 ビドロ
第4プロムナード
 第5曲 卵の殻をつけた雛の踊り
 第6曲 サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
第5プロムナード
 第7曲 リモージュの市場
 第8曲 カタコンベ - ローマ時代の墓
      死せる言葉による死者への呼びかけ
 第9曲 鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤーガ  
第10曲キエフの大門
という,プロムナードを含めて15曲構成です.

デセールは,パリ音楽院修士課程からチャイコフスキー音楽院に留学した経験を踏まえて,この曲への彼女なりの思い入れを加え,たいへん深みのある,重厚な演奏を展開してくれたと思います.

来年のラ・フォル・ジュルネでは,彼女が何を聴かせてくれるにせよ,注目しておきたいと思います.


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