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新日フィル:サントリー定期,アレクセーエフ,ゲルハルト(vc) [音楽時評]

4月24日に新日本フィルのサントリー定期に行って来ました.
指揮はアレクセーエフ,チェロにアルバン・ゲルハルトが加わっていました.

プログラムは,
シェドリンの「ショスタコービィチとの対話」
チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」(原典版)
ショスタコービィチの交響曲第11番「1905年」
でした.

シェドリンの曲はピッツバーグ交響楽団の委嘱作品で2001年に作曲されたもので,マリス・ヤンソンス指揮で2002年に初演されています.
波乱の時代を生きたショスタービィチを賞賛する曲になっているそうで,それはDimitry Shostakovich のスペルをとって,D-S(E-flat)-C-Hを冒頭から現れる主題としていることから明らかだといいます.
確かに随所にショスタコービィチ風の主題や楽曲構成が現れ,あまり聴いていない私にも彼を回想できるような曲でした.

2曲目のチャイコフスキーのチェロ協奏曲的な変奏曲は,比較的馴染み深い曲ですが,これまた波乱に満ちた生涯を送った作曲者の作品を,初演者が勝手に編曲してしまってそれが広く演奏されているというこの曲の原典版(チャイコフスキーのオリジナル版)を,今世界的に売り出し中のチェリスト,ゲルハルトがまことに美しい音色のチェロを駆使して,魅力たっぷりに演奏してくれました.希に見るまことに見事なチェロ演奏だったと思います.

最後のショスタコービィチの交響曲第11番「1905年」は,かなり忠実に1917年のロシア革命の先駆けとなった「血の日曜日事件」を扱ったもので,第1楽章が「宮殿前広間」,第2楽章「1月9日」,第3楽章「永遠の記憶」,第4楽章「警鐘」とそれぞれにテーマが設定されて,いわば表題音楽ともいうべきものです.
第1楽章ではハープに乗った弦楽の奏でる「宮殿前広場」のテーマにティンパニーの奏でる「抑圧」を象徴するテーマが混ざり合い,木管と低弦が2つの革命歌を提示して,悲劇を暗示します.
第2楽章では「血の日曜日」といわれる事件を描写する楽章で,皇帝に惨状を訴える第1部がクライマックスを作って静まったあと,第2部ではさらに民衆の訴えが悲痛な叫びとなったあと,第3部が1月9日の悲劇を再現し,死の静寂で閉じられます.
第3楽章は悲劇的な葬送行進曲に中間部でヴァイオリンの「今日は自由よ」が未来への希望を歌います.
第4楽章は,悲劇,惨状を乗り越える民衆の決起と革命の正義を訴える楽章で,「革命歌」がない交ぜられて,圧倒的なフィナーレが導かれました.
曲の初めから,チェロを独奏したゲルハルトが私の斜め前に座って聴いていたのですが,終わった途端に「ブラボー」と声を上げたのが強く印象に残りました.

指揮者アレクセーエフは,この1時間以上の切れ目のない大曲を,まことに綿密,しかも表情豊かにたいへん好演してくれました.
新日フィルの演奏としても年に数えるほどの5指に入る名演だったと思います.

5月には小澤征爾が定期以外の特別演奏会でチャイコフスキーの「悲愴」を中心に久しぶりに新日フィルを指揮するプログラムが予定されており,このアレクセーエフのチヤイコフスキーと比較できるのが今から楽しみです.

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