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第一生命ホール:プレアデス・ストリング・クァルテットのベート-ベン [音楽時評]

3月19日夜第一生命ホールのSQW最終回#65を聴いてきました.今回は:プレアデス・ストリング・クァルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅲでしたが,素晴らしい名演を披露してくれました.

このクァルテットは第1ヴァイオリンが松原勝也,第2ヴァイオリンが鈴木理恵子,ヴィオラが川崎和憲,チェロが山崎伸子とトップ・クラスのメンバーを揃えています.
プログラムは,3曲ともベートーヴェンで,第3番op.18-3, 第5番op.18-5, 第15番op.132 でした.

今夜素晴らしかったのは,何といっても実力者が揃ったクァルテットが,非常に良いバランスを見せてくれたことです.とかく第1ヴァイオリンが勝ってしまうことが多いなかで,珍しく第1ヴァイオリンが抑制気味に,他の3人と絶妙のバランスをとって演奏し続けたのです.

第3番の曲の始まりから第1ヴァイオリンが美しい第1主題を静かに始めて,第1楽章を優雅に整えてくれましたし,次の緩徐楽章を経て,第3楽章のアレグロもまことにバランス良く優美に演奏され,終楽章のプレストでは力強く音を受け渡してから静かに締めくくられました.随所に馴染み深い旋律が現れて,まことに楽しい演奏でした.

第5番はチェロに乗って第1ヴァイオリンが綺麗な第1主題を弾き始め,ソナタ形式とはっきり分る展開部から再現部を経て美しいバランスで演奏され,第2楽章メヌエットでは各楽器がメロディを受け渡してまとめられ,第3楽章アンダンテ・カンタービレではまことに美しい主題が次々と変奏され,何度かチェロに始まってヴィオラ,第2ヴァイオリン,第1ヴィオリンあるいはその逆に,カノン風にメロディが受け渡されて,まことに美しい変奏が繰り広げられましたが,特に第2ヴァイオリンがたいへん美しい音を響かせていました.終楽章アレグロは軽やかな主題に始まって,耳慣れた第2主題が加わり,展開,再現されて,最後は静かに終わりました.
たいへん美しい見事な名演でした.

第15番は5楽章構成で,陰影に富んだメロディで始まり,かなり個性的な構成のアッサイ・ソステヌートの第1楽章,第2楽章アレグロ・マ・ノン・タントを経て,モルト・アダージョの美しい第3楽章は,オリジナル楽譜にかなり意図的な書き込みがあることで知られる明るさを持った緩徐楽章,2部構成の間奏曲風の第4楽章からアレグロ・アパッショナートの第5楽章は,馴染み深いやや暗いメロディの主題が何度か繰り返されて,最後は盛り上げられて終わりました.

何度も何度も聴いたことのあるベートーヴェンの3曲でしたが,これほどバランス良く美しい演奏は,外来のクァルテットを別にすればハレー・クァルテット以来といっても良いほどで,すっかり満足できた演奏会でした.

プレアデス・ストリング・クァルテットのベート-ヴェン全曲演奏は,9月と来年3月に予定されていますから,クァルテット・フアンにはぜひお奨めしたいと思います.

最後に今夜のプログラム解説についてひと言コメントしたいのですが,前にも繰り返し書いたことですが,客観的な文章を心がけてきた者にとって,解説に主観的なポスト・スクリプトをつけるのはいただけません.
音楽界はそもそも主観的なものだといえばそうなのでしょうが,研究者を参照してせっかく客観性を持たせた解説に,主観的言辞を加えるべきではないでしょう.いくらでもブログに回せば良かったのではないでしょうか?




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