トリフォニーホール:ブリュッヘン指揮新日フィル,ミサ曲 [音楽時評]
2月28日,久しぶりにトリフォニーホールに,フランツ・ブリュッヘン指揮,新日本交響楽団のバッハ;ミサ曲 ロ短調 BMW 232 を聴きに行ってきました.
共演者は,
第1ソプラノ:リーサ・ラーション 第2ソプラノ:ヨハネッテ・ゾーマー カウンターテナー(アルト):パトリック・ヴァン・グーテム テノール:ヤン・コボウ バス:デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン 合唱:栗友会合唱団 合唱指揮:栗山文昭 でした.
第1部 ミサ キリエ(あわれみの讃歌) グロリア(栄光の讃歌) 第2部 ニケーア信経 クレド(信仰宣言) 第3部 サンクトゥス(感謝の讃歌) 第4部 オザンナ ベネディクトス アニュス・ディ(平和の讃歌)とドナ・ノビス・バーチェム という構成で,『ミサ曲 ロ短調』というタイトルをバッハ自身は付けていないのです.
それでもマタイ受難曲、ヨハネ受難曲と並び、バッハ作品の中でも最高峰に位置するとされています.バッハは熱心なルター派信者だったそうですが、そのバッハがカトリック教会の典礼であるラテン語ミサをこれほどの規模で作曲したことが注目されます.
もっともこの作品全体に他の自作からの転用がたいへん多い点も指摘されています.
「ミサ曲ロ短調は、全人生を捧げて書かれている。1733年に「外交的な」理由で作曲がはじまり、バッハがすでに盲目となっていた人生最晩年に完結した。この記念碑的な作品は、「ライプツィヒのカントール」が編み出した、音楽の様式と技術のすべてを結集したものである。しかしまたこの作品は、カトリック的な神の讃美の世界と、ルター派的な十字架信仰の世界が、類のないほど衝撃的に出会う場でもある。」といった指摘があります.
個々の感想は述べませんが,全体に,日本の合唱曲演奏の特色として,オーケストラが小編成になっても合唱団は大規模だということがあります.4部合唱以外に5部,6部といった合唱が入りますからやむを得ない面もあるのでしょうが,ソリストがアリアとしてソロや2重唱で歌う部分との対比でも,いかにも大合唱に過ぎたと思います.
また,せっかくのパイプオルガンがオルガン席から弾かれず,指揮者の指揮台の横に置かれた小規模オルガンから弾かれたのは意外でした.推測では,ブリュッヘンが指揮台で椅子に座って指揮するので,両腕ないし両手だけの微妙な動きで指揮するので,パイプオルガン席のビデオや反射鏡では見にくいという点があったのでしょうか.
ステージ上の並び方も変わっていました.上に挙げたオルガンの直ぐ後ろにファゴットが2人並び,その後ろにコントラバス,コントラバスの前にチェロ,そしてチェロの左にヴィオラ,そして第2ヴァイオリン,第1ヴァイオリン10人,第2ヴァイオリンの後方にトランペット(ピッコロ・トランペット),チャンパニー,そこから後列になって,第1,第2ソプラノ,アルト,そしてフルートとオーボエを挟んでテナーとバスが座り,その後ろに縦4列横24列の大合唱団でした.
演奏はノン・ビブラートでやっていましたから,五弦の音は澄んで綺麗に聴こえていましたし,管楽器も綺麗な音を鳴らしていました.
合唱はラテン語を暗ずるのが難しかったらしく,全員が楽譜持ちでした.それは5人のソリストも同じでした.
音楽は全体として好演だったと思います.これを2日連続で2回指揮したブリュッヘンには,大いなる敬意を表したいと思います.
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