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第8回東京音楽コンクール優勝者演奏会 [音楽時評]

昨年,ピアノとヴァイオリンの本選会に行きましたが,ピアノの審査内容への不満,審査結果のネット上への公表のとんでもない遅延に,このコンクールに不信を抱かせる部分があって,もう来年は優勝者コンサートにもコンクールにも行かないと書いていましたが,ヴィオリンの優勝者には期待があったので,今日の午後,優勝者演奏会に行ってきました.

出演順に曲を挙げますと,
金管部門第1位,トランペット:多田将太郎,
           マルセル.ケンツビッチ:トランペット協奏曲   
ピアノ部門第1位,ピアノ:安部マリア 
             サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 Op.103 「エジプト風」
声楽部門第1位,ソプラノ:上田純子  
          モーツアルト:「イドメネオ」K.366より”お父様,お兄様,さようなら” 
          ラフマニノフ:「フランチェスカ・ダ・リミニ」Op.25より’泣かないで下さい,パオロ”
            ドヴォルジャーク:「ルサルカ」Op.114,B203 より”月に寄せる歌”                  
          グノー:「ファウスト」より”トゥーレの王~宝石の歌”         
弦楽部門第1位,ヴァイオリン:二瓶真悠      
          バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番 
でした.

私は金管部門,声楽部門はいずれも本選会を聴いていないので,今夜は私が本選会を聴いたピアノとヴァイオリンだけをコメントしたいと思います.

ピアノ部門第1位の安部まりやさんは,私が聴くのは3度目でした.最初は2009年の日本音楽コンクール本選会で,ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を弾いて入選に終わった時です.昨年の東京音楽コンクールでも,私はプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を弾いた彼女の1位は想定しませんでした.                                                その彼女が,今日はサン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 Op.103 「エジプト風」を弾いたのですが,今ひとつ素晴しいとは思えませんでした.第1楽章 アレグロ・アニマートはソナタ形式で書かれていながら,提示部に出てくる楽想が多彩なのですが,それをほぼ同じ音色で弾いていて,やや単調でした.第2楽章は3部形式をとっており,第1部 アンダンテはエキゾティックな情緒が濃く,第1楽章とのコントラストが鮮明なのですが,相変わらず音色が単調だったため,コントラストがそれほど鮮やかには描かれませんでした.第2部,第3部もそれにつれて異国情緒を描き切れていたとは思えませんでした.休みなく次の第3楽章モルト・アレグロに入りますが,ソナタ形式で書かれていて,清々しさしさに富んだサン=サーンスの特色が強く現れた楽章で,3楽章中、最も優れた部分ですが,それが十分鮮明に反映されたとは思えませんでした.
先入観に支配されてしまったところがあったかと思いますが,以上が私の率直な感想です.

ヴァイオリンの二瓶真悠さんは,バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番をオーソドックスに弾ききって好演していました.昨年より一段と自信を付けて登場した印象を持てました.            自身がピアニストだったバルトークですが,民俗音楽収集やヴァイオリニストの友人たちを通してヴァイオリン技法には精通していたといわれており、この曲にも民族舞曲調の即興性から伝統的なパッセージや名人芸までが詰め込まれており,オーケストラにもかなり比重が傾けられて、色彩豊かな管弦楽の響きも特徴的です.この曲はバルトークの唯一のヴァイオリン協奏曲と考えられていましたが,彼の死後,もうひとつの協奏曲が発見され,この曲が第2番となった経緯があります.                                            3楽章構成をとり,第1楽章 Allegro non troppo はソナタ形式によっており,独奏ヴァイオリンが弾きはじめる第1主題は五音音階風ですが,次第に音が増えて、第2主題では12半音階の音がすべて出てきますが,彼女はその変化を見事に表現していました.                     第2楽章 Andante tranquillo は変奏曲形式で6つの変奏で構成されていますが,豊かな音量で,変奏を着実に表現していました.                                     第3楽章 Allegro moltoもソナタ形式で、俗舞曲的な疾走感が強い楽章ですが,第1楽章の素材に基づく主題が多用され,新しい主題も加えて、バルトークの好んだアーチ形式が形成されていますが,オーケストラの好バックを得て,彼女は着実に弾ききっていました.

是非,早い機会にヨーロッパに留学していっそう研鑽を積まれ,大きく成長されることを期待したいと思います.

序でにいいますと,国際コンクールを制覇した新人がまず演奏に招かれるのは,名曲コンサート,プロムナード・コンサートなどだと思いますから,優勝者演奏会もいわばフィギャー・スケートのエギジビジョンと同様に考えて,もっと楽しめる選曲にされることを奨めたいと思います.            その点では,私の次のブログもご参照下さい.

   


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