武蔵野文化小:ベルリン・フィル弦楽五重奏団 [音楽時評]
10月12日,武蔵野文化小ホールへ,ベルリン・フィル弦楽五重奏団を聴きに行ってきました. 日本では室内楽を代表する弦楽四重奏にすごく堅いイメージが付きまとって,決して楽しいモノではありませんが,今日は室内楽とは,本来,こんなに楽しいモノだったと実感させてくれる素晴しい演奏会でした.
出演者は, Cello: タチヤーナ・ヴァシリエヴァ 1977年ロシア生まれ,2001年ロストロポーヴィチ国際チェロ Competition 優勝から一躍世界的に羽ばたいている世界トップ.クラスの奏者, 第1Violin:トーマス・ティム 1973年ドイツ生まれ,ベルリン・フィル首席第2ヴァイオリン奏者 第2Violin:ロマノ・トマシーニ 1960年ルクセンブルグ生まれ,ベルリンフィル団員 Viola: ヴォルフガング・ターリツ,ドイツ生まれ,ベルリン・フィル団員,室内楽でも活躍 Double Bass:ナビル・シェハタ 1980年クエート生まれ,2003年ミュンヘン国際Competition
優勝, ベルリン・フィル首席コントラバス奏者. とまことに俊英揃いです.
プログラムは, モーツアルト: ディヴェルティメント ヘ長調 K.138 ドヴォルザーク: 弦楽五重奏曲 第3番 変ホ長調 Op.97 より第2楽章 ラヴェル: 道化師の朝の歌 (組曲「鏡」より) Solist;トーマス・ティム(vn) ドヴォルザーク: ロンド ト短調 Op.94 Solist;タチヤーナ・ヴァシリエヴァ(Cello) ボッテジーニ: ベッリーニの歌劇「夢遊病の女」による幻想曲 Solist;ナビル・シェハタ(Db)
※※※※※※※※ レスピーギ: リュートのため古い舞曲とアリア 第3集 I.イタリアーナ II.宮廷のアリア Ⅲ.シチリアーナ Ⅳ.パッサカリア チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ (弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 Op.11より バーバー: 弦楽のためのアダージョ Op.11 ピアソラ: ブエノスアイレスの冬 ピアソラ: ブエノスアイレスの春 でした.
これだけ芸達者な五人による五重奏はたいへん音のバランスがよく,コントラバスが時々入るのも入れて,絶えずすべての演奏楽器の音がバランス良く綺麗に響いていました. それは最初のやや長い全曲演奏だったディヴェルティメントから遺憾なく発揮されていました. 前半のプログラムで Solist を明記した場合は,それぞれの楽器のソロで,他は伴奏役に徹していました.そのソロのうちでも圧巻だったのは,チェロのタチヤーナ・ヴァシリエヴァでした.この女性チェリストは世界トップ・クラスの奏者で,既にバッハ無伴奏チェロ組曲その他のレコーディングがあり,世界的オーケストラとの協演歴も豊富で,有名音楽祭の常連にもなっている俊英で,2度目の来日だそうです. チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレでもこのチェロが重要な役割を担っていました.要するにこの五重奏団の支柱になっているというべきなのでしょう.
アンコールにボッケリーニ,グリーグ,ドヴォルザークの小品が演奏されましたが,いずれもまことに楽しげな曲でした.
改めていいますが,室内楽の楽しさを存分に味あわせてくれた演奏会でした. ぜひ毎年のように来日して欲しい楽団ですが,タチヤーナ・ヴァシェリヴァにはぜひソリストとしての来日も期待したいモノです.
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