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紀尾井ホール:河村尚子(pf)リサイタル [音楽時評]

9月28日,紀尾井ホールに河村尚子のピアノ・リサイタルを聴きに行ってきました.河村尚子についてこのブログに書くのはこれで3度目ですが,私が宮谷理香さんと共に最も期待しているピアニストです.河村尚子は,2006年ミュンヘン国際コンクール第2位入賞,2007年クララ・ハスキル国際コンクールで優勝した実力者です.

何度もいいますが,今現役バリバリの日本在住日本人ピアニストは,いつの間にかどの作曲家の曲もなんとなく似たような演奏をするのです.Cliburn Competition で審査に物議を醸した1位金賞タイの日本人が,楽譜からではなく,耳で聞いて曲を覚えるそうですが,彼に向けられた厳しい評が,誰の曲も同じように弾くというものでしたが,それは彼に曲を教えた日本人教師の側に責任があったというべきなのでしょう.

そこへいくと河村尚子は5歳からドイツ在住という恵まれた環境で,現在はハノーフアー在籍です.

今夜のプログラムは,                                                     ハイドン:       ピアノ・ソナタ 第40番 ト長調 Hob.XVI:40                                        シューマン:     クライスレリアーナ  op.16
                 ※※※※※※※※※                                                       メンデルスゾーン: 厳格なる変奏曲  op.54                                                             ショパン:      華麗なる変奏曲  op.12                                             ショパン:      夜想曲  第20番 嬰ハ短調 「遺作」                            ショパン:      ワルツ 第5番 変イ長調 op.42                                               ショパン:      幻想ポロネーズ  ポロネーズ No.7  op.61                                   でした. 

まずこのユニークなプログラミングに感心しました.お得意のシューベルトもかねて弾きたいといっていたベートーヴェンも外して,ハイドンの古典的ソナタにロマン主義のシューマンを並べ,メンデルスゾーンの厳格な変奏曲とショパンの華麗な変奏曲を並べるというのはユニークな発想です.
     そして印刷されたプログラムを変更して,ノクターンを先に弾いてから,舞曲のワルツとポロネーズを並べたところです.気がつかなければそれまでですが,演奏を聴いていれば自ずと理解されてくると思います.

演奏を曲ごとではなく総評でいいますと,河村尚子はしっかりと自分のピアノ演奏を持った人で,非常に丹念に各フレーズを大事にして,曲の内面を描き出してくれる人です.                      ハイドンの2楽章のソナタの各楽章,クライスレリアーナの8曲構成が,実に丹念に弾き分けられていました.

メンデルスゾーンの厳格なる変奏曲とショパンの華麗なる変奏曲の対照の妙も見事でした.     ショパンの夜想曲第20番「遺作」は,映画「戦場のピアニスト」で弾かれて一躍有名になりましたが,舞曲の前に,この綺麗な美しい,しかし悲哀に満ちた曲を実に丹念に弾いてくれました.

ワルツとポロネーズが並べて鮮明に弾かれて,それなりに差違を理解させてくれました.

ステージに出てきて,お辞儀をしたままピアノの前の椅子にすーっと座るポーズは相変わらずで,プログラムが終わってから,少なくとも6曲もアンコールしてくれました.馴染みのある曲ばかりだったのですが,彼女が全然曲名を喋ってくれませんでしたから,当てずっぽうに書くのはやめます.

今後がますます楽しみな日本人離れしたピアニストです.

                   

 

 


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