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日本音楽コンクール受賞者発表演奏会 [音楽時評]

3月6日,オペラシティに日本音楽コンクール受賞者発表演奏会を聴きに行ってきました.      受賞者の関係者でも何でもないのですが,本選会を聴いて,                         ①1昨年の長尾春花さんについての漏洩された審査員採点内容への疑問もからんだ審査の公平性に対する疑問,そして,                                             ②これだけ日本の音楽市場が国際化した中で,まったく国際性のないこの日本で一番老舗の音楽コンクールのあり方に,本選会の感想で,強い疑問を提起しましたから,                                     それらを確かめたくって行ったというのが正直なところです.

率直にいって,今日の受賞者発表会を聴いて,上の①②への疑問はますます強まり,このコンクールを国際的に開放して,参加者は国際的に広く公募し,かつ審査員に大幅に海外有名審査員を招聘すべきだと改めて痛感しました.

コメントが先になりましたが,演奏とソリストのバックは 藤岡幸夫指揮,東京フィルハーモニー交響楽団でした.                                                      演奏順に,部門別受賞者と演奏曲目を列記しますと,                           作曲部門:江原 修; 『レ・フレオ』(この表題は敬愛するボードレールの詩編からの借用)       チェロ:  伊東 裕; ポッパー,「ハンガリー狂詩曲」 作品68                       ホルン:  福川伸陽; ルース・ギッブス,「ホルン協奏曲」 作品58                    ヴァイオリン: 瀧村依里; ショーソン,「詩曲」 作品25                                                        ※※※※※※※※                                      声楽:    岩下晶子; バーバー,「ノックスヴィル 1915年の夏」                     ピアノ:   入江一雄; プロコフィエフ,「ピアノ協奏曲 第1番 変ニ長調」 作品10                                     喜多宏丞; シューマン,「ピアノ協奏曲 イ短調」 作品54 第1楽章                    でした.

江原の新曲は,5弦を左右対称に並べ,後方打楽器群に見慣れない摩擦音を出す打楽器を配置して,弦と管打楽器のバランスをとったちょっと珍しい曲でした.楽器配置と独特の打楽器から来る不思議な音の群れが揺れ動いて,なかなか斬新さのある曲でしたが,何を表現したいのかが今ひとつ明確に伝わりませんでした.東京芸術大学音楽学部楽理科の出身で作曲は独習だということですが,何か独りよがりの曲のように感じました.

チェロの伊東 裕はなかなか音の豊かな人で,朗々とホール一杯に美音を響かせて,なかなかの好演でした.将来性は大きいと感じました.

ホルンの福川伸陽は,馴染みのない曲でしたが,なかなか正確な音を響かせた好演でした.既に日本フィルのホルンで活躍しているということですから,今後のいっそうの活躍を期待したいと思います.

ヴァイオリンの瀧村依里さんは,私は前にその1位に異を唱えた者ですが,やはり今日のショーソン「詩曲」でも,正確ではあっても,自己主張が見られず,没個性的でした.1697年製のストラディヴァリウス<レインヴィル>の貸与を受けているそうですが,お蔭で音の美しさは豊かでしたが,結構,オーケストラに被られていたのがモノ足りませんでした.                                    むしろ前から主宰しているステラクァルテットでの活躍を期待したいと思いました.

声楽の岩下晶子は,ソプラノでなかなか将来性豊かな人材だと思いました.オペラシティ一杯に美声を響かせる力はまことに見事なモノでした.                                  私が今まで経験したことのないホホえましい光景を経験したのですが,歌い終わって拍手を受けながら,指揮者,藤岡幸夫さんに上着を借りたのです.拍手が続いてステージに戻るときにも,藤岡さんの上着を羽織った姿でした.スデージ上が寒かったので喉を大事にしたくて咄嗟に思いついたのでしょうが,まことにホホえましい光景でした.

入江一雄のピアノ演奏は,本選会と同じ曲でしたが,本選会より落ち着いて,実に伸び伸びと弾いていて,本選会のブログで書いたように,まことに1位に相応しい好演を示してくれました.       それに引き替えて,もう1人の1位,喜多宏丞は,本選会のリストの難曲からシューマンのピアノ協奏曲の第1楽章に代えて弾いたのですが,いくらか未だ練習不足というか,堅さが目立ち,楽章の構成,表現力が明らかにされず,本選会の時と同じように,かなり目立つミスタッチも気になりました.
私は瀧村さんと同様にこの人の1位にも異を唱えたのですが,今夜を聴く限り,私の耳もなかなかのモノだと再認識しました.

最後にこの日本音楽コンクールの改善策についてですが,冒頭にヒントを書いたように,これだけ音楽市場が国際化した中で,日本人の参加者だけで,閉鎖的な日本人の審査員だけでコンクールを続けていては,いつまで経っても,さらに外国の主要国際コンクールを受け直さなくては1人前にならないでしょうから,そうした閉塞化したコンクールを思い切って国際化して,広く参加者も審査員も国際的に公募して,ヨーロッパの主要国際コンクールに肩を並べることを目指した積極的改善策を検討するよう求めたいと思います.                                        日本が経済的に小国化したなかで何をいうかといわれそうですが,日本はたとえばチェイコフスキー国際コンクールの大スポンサーであり続けてきたことを考えれば,それを潰してでもやれるのではないでしょうか!                                                   ご意見をお聞かせいただければ幸いです. 

 


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