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マエストロサロン:ギュンター・ヘルビッヒ [音楽時評]

12月10日,日本フィルのマエストロサロンに出かけてきました.

今までは,このマエストロサロンの概略を書いてきたように思いますが,最近はサロンの内容がほとんどその夜の内にネット上で公開されてパソコンで聞くことが出来ますから,これからは興味を持った点だけを紹介したいと思います.

彼は1931年ボヘミヤ生まれで,主として東独で活躍していたのですが,ベルリンの壁の崩壊前の1984年にデトロイト交響楽団の音楽監督として招かれた機会に,デトロイトに定住しています.
もうヨーロッパは昔のヨーロッパと違ってしまったので,ヨーロッパに帰る気持はなく,今後もデトロイトで過ごすそうです.

金曜日からの定期公演のプログラムは,
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 
             ピアノ; ゲルハルト・オピッツ
シューベルト:交響曲第8番《ザ・グレート》
で,話題はこの2曲とソリストが中心になりました.

ヘルビッヒは,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を,ヨーロッパの変革,フランス革命とナポレオンのヨーロッパ制圧という大事件がもたらした社会変革の産物として,第3交響曲エロイカ同様,たいへん新しい面を持った協奏曲だと位置づけていました.

シューベルトについては,交響曲第8番《ザ・グレート》は,従来,未完成の作品こそ最後の曲と考えていたのが,シューマンによって発見され,メンデルスゾーンによって初演された第8番がその後にくるものと分って,今はこの曲が第8番として定着していると解説していました.
たいへん長い演奏時間55分を要する曲だが,これでも第1,3,4楽章の繰り返しを全部省略しているので,本当に譜面通りにやったら,もっともっと長いのだといっていました.「天国を思わせる長さ」という言葉が紹介されました.しかし,非常に明るい曲なので,聴衆は堪能出来るはずで,第2楽章に哀愁を帯びたメロディが含まれて,曲の構成に魅力を与えていると解説していました.
第4楽章にベートーヴェンの歓喜の歌を参照したと思われるメロディがある点については,シューベルトはベートーヴェンと会ったことはなく,第9を聴いたとは思えないとして,単なる偶然の一致と言う考え方を示しました.

参加者からの質問で,アメリカのオーケストラとヨーロッパのオーケストラの差違ないし特徴を聞かれて,彼はグローバリゼーションで,どこのオケも国際化して収斂してきており,全体にレベルは上がってきているが,もうドイツのオケ,アメリカのオケといった差違,特徴は残念ながら失われていると答えていました.
たとえばスイス・ロマンド交響楽団には21ヶ国からの楽員が参加しているし,どのオケも人種が多様化しており,もう純粋にドイツのオーケストラとはいえなくなっているそうです.

何度も同じ曲を取り上げて,毎回新しい発見があるかという質問には,自分は年をとって,次第にテンポが速くなってきていると答えていました.

ご関心の方は,http://japanphil-21.music.coocan.jp/21bekkan/ にアクセスしてご自分でお聞き下さい.
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