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サントリー:N響,ソキエフの名指揮,神尾真由子の名演 [音楽時評]

10月12日,日曜日にサントリーホールへN響ロマンティック・コンサートを聴きに行ってきました.

久しぶりのN響の指揮者は,ゲルギエフと同じ北オセチア出身の俊英,弱冠31歳のトゥガン・ソキエフ,
そしてヴァイオリンのソリストは昨年のチャイコフスキー.コンクール優勝者として一躍世界に羽ばたいた神尾真由子でした.
土日の2日開かれたコンサートはいずれも完売の人気ぶりでした.

プログラムは,
リヤードフ:     「魔法にかけられた湖」 op.62
プロコフィエフ:   ヴァイオリン協奏曲第2番 ト長調 op.63
    アンコール:パガニーニ;「カプリス」17番
        ※※※※※※※※
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47
    アンコール:プロコフィエフ;古典交響曲からガボット
でした.

リヤードフの曲は,あまり演奏機会はありませんが,明確な主題はなく,うねるような音の流れや細かなトレモロ,など多彩な管弦楽法による音色の変化が,音画とも呼ばれる視覚的イメージを生むような手法で,「音」による風景のデッサンを意図しているといわれます.
曲は多彩な音色,演奏法を駆使して,たいへん滑らかにかつ濃密に演奏されました.

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番は,古典的な手法による分りやすい曲で,第1楽章の冒頭にヴァイオリン・ソロで叙情的な旋律が奏でられ,曲全体のイメージを提示して始まります.
緩徐楽章の第2楽章では,ヴァイオリンが終止多彩な美しいメロディを奏します.
第3楽章は,テンポが幾度か変化しますが,最後のコーダで盛り上がって終わります.
ヴァイオリン協奏曲のなかでは珍しくヴァイオリンがほとんど弾き詰めで大変ですが,神尾真由子はまことに力強く,絶えずオケを圧倒しながら,多彩なヴァイオリンの表情を鮮やかに示して好演を聴かせてくれました.
しばしば苦悶の表情を見せる癖は相変わらずでしたが,昨年よりまた一段とスケールが大きくなったようで,年内に聴く予定のベートーヴェンの協奏曲がますます楽しみです.

今日の白眉は最後のショスタコーヴィチの交響曲第5番でした.
この若きマエストロに余程鍛えられたようで,NHK響がこれまで聴いたことのないような名演を聴かせてくれたのです.
チューバ,トランペット,トロンボーン,ファゴットの不安定さは克服困難だったようですが,N響がこれほどの演奏を聴かせてくれたのは驚きでした.

今日ほど第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバスが揃って強い響きを見せ,弦楽器間と管弦の間に絶妙のバランスを築いて聴かせてくれたのは破天荒なできごとでした.
それによって,ショスタコーヴィチが多用する金,木管楽器と弦楽器の交響のバランスが素晴らしく良かったのです.その絶妙な交響のバランスに乗って,各楽章の各フレーズがトレモロ,ピチカートなどを含めてまことに歯切れ良く,メリハリを効かせて鮮烈に奏でられ,初めて聴くような見事なショスタコ第5番の名演が盛り上がって締めくくられたのです.
まったく久しぶりに全身に粟立つほどの名演でした.

前に小澤征爾,サイトウキネンのショスタコ第5番をもの足りなかったと書いたことがありますが,ソキエフの演奏はまことに明快で,鮮やかなものでした.

NHK交響楽団をここまで高揚させたソキエフには,今後もぜひ毎年来日して貰いたいものです.




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