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東京音楽コンクール ピアノ本選会 [音楽時評]

26日に東京音楽コンクールピアノ本選会に行ってきました.

第1次予選(録音による審査)と第2次予選(実演奏会)を経て,4人が本選会に登場しました.

演奏順に
石井 楓子: ラフマニノフ,パガニーニの主題による狂詩曲Op.43
       (1991年生まれ,桐朋女子高校音楽科2年在学中)
佐々木 崇:  ベートーヴェン,ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」Op.73
    (1981年生まれ,東京芸術大学博士課程2年在学中)
崎谷 明弘: ラフマニノフ,ピアノ協奏曲第3番ニ長調Op.30
    (1988年生まれ,兵庫県立西宮高校卒業---今秋パリ国立高等音楽院に留学予定)
富永 愛子: ラフマニノフ,ピアノ協奏曲第1番嬰へ短調Op.1(改定版、1917年出版)
    (1987年生まれ,東京音楽大学ピアノ演奏科コース3年在籍)
の4人でした.

なお,協演したのは,渡辺一正指揮の日本フィルでした.

石井 楓子のラフマニノフ,パガニーニの主題による狂詩曲は,川崎ミューザでの今月5日の尾高忠明指揮,東京フィルハーモニーと小山実稚恵の好演を彷彿させる見事な演奏でした.とくに中程の親しみぶかいメロディーを持った変奏曲の部分は,まことにクリアーできれいなタッチで,聴衆に訴えかけていました.
未だ高校2年生でここまで早熟なピアニストに少なからず驚くと共に,たいへん嬉しく思いました.

佐々木 崇のバートーヴェン「皇帝」は,あまりにも有名な曲だけに,出だしから未だ未熟なところと見せていました.東京芸術大学博士課程2年生で,昨年は入選どまりだったことからそれほど大きく成長した訳ではなかったようです.3楽章を通じて,もの足りない演奏でした.

次の崎谷 明弘はステージにゆったりと堂々と登場して,驚かされました.自分がオーケストラと協演するのだとでもいいたげでした.
ピアノをよく叩いて音を響かせていましたが,なんともこの有名なピアノ協奏曲が持っているメラコリックな陰影が消し飛んでしまっており,オーケストラとの協奏を超えて,ピアノを目立たせ過ぎていました.
しかも華やかに曲を終わった途端に派手に飛び上がらんばかりにピアノを離れて,指揮者とコンマスに握手して回っていました.まるで自分の演奏に大満足だといいたげでした.

最後の富永 愛子は傑出していました.まず何よりも,初演が悪評に過ぎたためもあって,滅多に演奏されることのない
ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番を持ってきて,これを本来まことに良い曲なのだということを,細かなタッチにまで心配りをした自分の演奏で聴衆に訴えかけてくれたのです.
この人の指の運びはまことにレベルが高く,ラフマニノフのメロディーを十二分に歌わせて,オケをリードせんばかりに好演してくれました.

私自身の審査では,富永 愛子1位,石井 楓子2位で,3位なしの2人入選というところでしたが,
発表された結果は次の通りでした.

第1位 冨永 愛子
  Aiko Tominaga ピアノ
第2位 石井 楓子
  Fuko Ishii       ピアノ
第3位 佐々木 崇
  Takashi Sasaki ピアノ
入選と
聴衆賞  崎谷 明弘
  Akihiro Sakiya ピアノ
  

2009年2月に開かれる優勝者コンサートが今から楽しみです.
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