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サイトウ記念オーケストラと小澤征爾 [音楽時評]

今年の松本音楽祭の最終日,9月12日の演奏会を聴きに行ってきました.

初の武満徹の曲はステージ最前列のオーボエとステージ最後部の笙という2人の組み合わせで,小澤の出番はありませんでした.

曲目は内田光子のピアノでベートーヴェンの「皇帝協奏曲」で,2人の息がピッタリ合ったたいへんな熱演でした.ただ,小澤がオケだけが音を出す時は奔放にオケの音を響かせながら,ピアノが入るとかなりオケの音を抑制してピアノを強調していたのが,いささか人為的で,内田光子ならそんな配慮は要らないのにと思えてなりませんでした.

後のショスタコービッチの交響曲第5番「革命」は,音が綺麗なゆったりとした演奏でしたが,小澤がボストンで評論家の酷評を受け続けたことに思い当たりました.小澤がスコアだけをいくら読み込んでも,マーラーやブルックナーに始まって20世紀に至る音楽の場合,作曲家の生涯や社会的背景まで踏み込まないともの足りないことを典型的に示した演奏でした.

ショスタコービッチはNHK響の音楽監督アシュケナージが,奥さんがイギリス人であったことが幸いしてスターリン政権から亡命に成功するまで,親友関係にあったことで知られており,その解釈はまことに優れたものがあります.私はアシュケナージとフィルハーモニア・オーケストラの組み合わせでロンドンのフェスティバルホールでこの曲を聴いたことがあり,しかもその時アシュケナージは演奏の1時間半前からプレトークをやり,ショスタコービッチとの交遊を詳しく話してくれて,ショスタコービッチが5番を作曲した当時の社会状況と作曲当時の心境を解説してくれたのです.その時のショスタコの5番は忘れがたい名演として私の記憶に残っています.

れほど小澤征爾に酷評を続けたBoston Globe がこの夏のタングルウッドでのマーラーの「復活」の演奏に初めて好意的批評を書いたのを全文いくつか前の書き込みに引用しましたが,ここで小澤が変ったという部分を繰り返しておきましょう.
Although there are only a few new faces in the BSO since his time, it has become a different and more responsive orchestra now, and Ozawa is a different conductor, too. Four years in Mahler's city, Vienna, and a busy schedule with Mahler's orchestra, the Vienna Philharmonic, in concerts and operatic performances, have been good for him.

小澤は5月にハワイでスコアを4つ勉強したそうですが,そのなかにショスタコもあったはずです.でも,小澤のやり方として作曲家の勉強までは十分にはやらなかったとしか考えられません.

ショスタコービッチ : 交響曲第5番

ショスタコービッチ : 交響曲第5番

  • アーティスト: ロシア国立交響楽団, ショスタコーヴィチ, スベトラーノフ(エフゲニ)
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 1992/09/18
  • メディア: CD


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