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再現芸術の新動向 [音楽時評]

今回のNHK音楽祭は「体感モーツアルト」というテーマを掲げて4人の指揮者にモーツアルトを演奏させました.そのなかで新しい演奏スタイルを明確にしたのが,1人はノリントン,もう1人はアーノンクールです.
ノリントンは最近レベルが落ちたともいわれるNHK交響楽団の弦楽器奏者に,ビブラートなしの演奏を要求したのです.NHKでNHK音楽祭が放映された時に,ノリントン自身がそれを語っていました.それがモーツアルト当時の演奏方式だったからというのです.そして舞踏会向けのリズム感,躍動感を求めたようです.
モーツアルトの交響曲第39番をやったのですが,その演奏はまことに音が澄んで美しく綺麗で,しかも躍動感の溢れるものでした.曲の終わりにノリントンはくるりと踊るように客席に振り向く形で曲を締めくくりました.彼はN響のB定期でもこの曲をやったのですが,その時には指揮台に立って,両腕を振って踊る仕草さえ示したのです.聴衆はそれに熱狂的な拍手で答えていました.

もう一人のアーノンクールは,自らがほぼ半世紀前に創設した古楽器管弦楽団ウイーン・コンツェンツス・ムジクスとヨーロッパで活躍中のシェーンベルグ合唱団を指揮して,モーツアルトの「レクイエム」を聴かせました.これはおよそ日本では聴くことの出来ないほど優れた演奏で,まことに感動的な「レクイエム」でした.NHK音楽祭のプログラムには,古楽器の使用について「歴史学の立場からではなく,芸術的な理由によるもので,なぜなら,どの時代の音楽も当時の演奏手段を用いることで,もっとも活き活きと,確信を持って演奏することが出来るようになるからである」と書かれています.
NHKがこの演奏を放映したとき,アーノンクールに語らせていたのですが,「モーツアルトは生涯を通じて自分の心を作曲に織り込んだことはなかった.それは自分の両親の死の前後の作品をみれば明らかである.しかし,このレクイエムには作曲者の心が盛り込まれている」と語っていました.
その後,新聞報道では,アーノンクールは「レクイエム」の演奏をマンネリ化させないため,10年間封印すると語っています.
年末にかけて,NHK音楽祭はまとめて放映される機会があると思いますから,音楽好きの方はぜひ視聴されることをお奨めします.


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