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2012年09月19日| 2012年11月24日 |- ブログトップ

神尾真由子&クルティシェフ・デュオ・リサイタル [音楽時評]

ご無沙汰しました.
初秋に肺炎で1ケ月余の入院の後,私にとって最初の音楽会,「神尾真由子&ミロスラフ・クルティシェフ」デユオ・リサイタルを聴きに,11月24日,オペラ・シティに行って来ました.

ミロスラフ・クルティシェフは,神尾真由子が優勝した2007年のチャイコフスキー・コンクールで,1位なしの2位に入賞したピアニストで,コンクール入賞者のガラ・コンサートで知り合った仲だそうです.この人の伴奏は素晴らしく,神尾真由子を盛り立てていました.

プログラムは,オール・ベートーヴェンで,ヴァイオリン・ソナタ第7番から弟9番「クロイツエル」までの3曲でした.

第7番は私が初めて聴いたクラシック音楽会(東京大学教養学部講堂で植野(服部)豊子さんが当時の日比谷公会堂でのリサイタルを前に開いた演奏会)で弾いた曲で,私にとって思い出の曲なのです.
ここでは,第7番についてのみ,五嶋みどりさんの作品解説を引用しておきます.

(以下引用)
ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第7番 ハ短調作品30-2 (1802年作曲)

第1楽章:Allegro con brio
第2楽章:Adagio cantabile
第3楽章:Scherzo
第4楽章:Finale: Allegro-Presto

18世紀や19世紀の頃の作曲法理論では、特定の調には独特の曲想があると考えられていました。例えば、ハ短調の場合は"悲劇、大きな不幸、英雄の死"という雰囲気があると言われていました。

これは1802年に作曲された『ソナタ第7番ハ短調作品30-2』にも当てはまります。この作品は、ヴァイオリンとピアノの為に書かれたデュオの名作の中でも元祖的存在と考えられています。ベートーヴェンは、同時期に7つの器楽曲を手がけていますが、その中で、このソナタと他の3つの作品(悲愴ソナタ、弦楽三重奏、ピアノ協奏曲)がハ短調で書かれている事実は注目に値します。難聴が深刻化していたベートーヴェンの心の動揺が、ハ短調の特徴である陰鬱で不吉とも言えるこの曲の雰囲気にぴったりと合っているように思われます。

第1楽章の冒頭の控えめなオクターブが明確に不吉な運命を予測し、すぐに激しくかきたてるような軍隊マーチに似た対照的なテーマにとってかわり、感情の爆発につながります。悲劇的な美しさとふざけたような旋律という相反する要素の混合は、偉大な力と結束力を生み出し、抒情詩のような雄壮な作品に仕上がっています。

2つの楽器はお互い補い合うような関係を終始保っていますが、色調としては、ピアノ寄りに感じられます。しかしながら、両パートの重要性という意味では、全く平等に扱われていると言えます。

ゆっくりとしたテンポの第2楽章のAdagio cantabileは、首尾一貫して穏やかな感情があふれ出ており、歌のようで心が動かされます。ピアノで弾かれる最初の牧歌的なテーマが様々な形に変化し、見え隠れします。ソナタの中で最も静かなこの楽章でさえも、突然の感情の爆発が2度もあり、上昇音階が不意に出てきます。しかし、その衝撃も瞬時で、叙情的なテーマが戻ってきます。

第3楽章のリズミカルなScherzoは、3拍子で書かれており、第1楽章の軍隊マーチを思い起こさせます。特に、真ん中のトリオの部分では、ドイツの田舎の踊りのような雰囲気があります。その前後の部分では、装飾音符がユーモアといたずらっぽさをつけ加えています。

最終楽章では、苦悶と恐怖に染まった雰囲気が戻ってきます。この楽章のテンポは息もつけないほど速く、突然の感情の爆発や休止は、テンポが速いだけに抜群の効果をあげています。Prestoと書かれたコーダでは、熱狂的気運が高まり、ハ短調の主和音でこの曲は終わり、不安や神経質な雰囲気が余韻として残ります。

2005年 五嶋みどり
(編・訳:花田由美子)
(引用終わり)

とにかく,神尾真由子は3曲とも完璧な演奏を展開してくれました.それは改めて,チャイコフスキー・コンクールの権威を納得させるモノでした.

今回は,私見を控えていますが,私にとって大病を挟んで全く久しぶりの音楽会で,自分の耳に対する不安を払拭するという目的をとにかく果たせたことを,大いに喜んでいます.

今回はこれで終わりにさせて頂きます.



 


 

 

 


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