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存続が危ぶまれる音楽監督/コンマス不在の大阪フィル [音楽時評]

大阪市の橋下市長は,大阪フィルへの前年度補助金1億1千万円を25%カットすると言っていたのですが,尻すぼみになって,約10%カットの9900万円の予算計上を査定したそうです.

しかし,これは橋下さんの情報不足から生じた誤った判断だったのではないでしょうか.

というのは,今年3月末のいわばサヨナラ・コンサートを最後に50代の大植英次が音楽監督を退任.また,首席コンサートマスター長原幸太,セカンドヴァイオリントップ奏者佐久間聡一もこのコンサートを最後に退団し,さらに,ホルントップ奏者池田重一,打楽器トップ奏者坂上弘志もこの日をもって退団した,といわれるからです.

つまり,音楽監督,コンサートマスターという要職のほか,主要パートの首席奏者がが不在になったのです.大植英次は桂冠指揮者になったそうで,コンマスにも客演首席コンサートマスターとして崔 文洙が上がっていますが,彼は東京の新日本フィルハーモニーのソロ・コンサートマスターが本職なのです.
これにより,「桂冠指揮者」と首席客演コンサートマスターのみで常任の指揮者もコンサートマスターも欠くという,プロオーケストラとしては極めて異例の状態となっているのです.

これは,補助金カットの有力な口実になったはずです.

もともと大植英次は,長く大阪フィルの初代音楽監督を勤めたカリスマ性のあった名指揮者朝比奈隆の後任に選ばれた人ですが,私には,大植英次は何度も,誤った選択で,これまで実力以上の経歴を重ねてきた人だと思えてならないのです.

彼の略歴は,1991年から1995年までエリーフィルハーモニー音楽監督、1995年から2002年までミネソタ管弦楽団の第9代音楽監督.1998年からはハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者と紹介されていますが,
彼がミネソタ菅の音楽監督に大抜擢されたのは,ミネソタ菅の指揮者選任委員会が,アメリカの広さ故に,大植の前任地エリーフィルハーモニーをProfessional orchestra と誤認したことに始まっています.それは実はいわば Community Orchestra で,年に20回ほどしか演奏会を開いていないのです.

破天荒の大抜擢を受けたミネソタでは,最初は大植の親しみやすさが楽団員に受け入れられたのですが,そのリハーサルのだらだらしたやり方,ないしその音楽性やレベルに,間もなくミネソタ菅が気づかされて,大植は6年で追い出されています.
後任のOsmo Vanska の出来が良すぎたので,ミネソタ菅では大植英次は最早完全に忘れ去られた存在です.

ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者も,大阪フィルは高く買ったのでしょうが,それも誤解で,北ドイツ放送フィルハーモニーはハンブルグが本拠地で,ハノーファーは大曲を取り上げる力の無い,いわば2軍に過ぎない存在なのです.
また,スペインのカタルーニャ州立バルセロナ交響楽団常任指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザーに2006/2007年シーズンから就任していましたが、2009/2010年シーズンを以て終了しています.

大阪フィルは,ミネソタ菅が間違って大植を選任(大抜擢)したことも,ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団が北ドイツ放送交響楽団の2軍であることも,十分に調べ上げないまま,彼を朝比奈隆の後任に選任してしまったのだと思われるのです.

大植に実力があれば,朝比奈隆の後任として少なくとも20年は勤めたのでしょうが,彼にその実力が伴なわなかったために,9年で,それも50代で退任の止むなきに至ったのは,ヤムを得なかったと思います.彼が大曲を指揮すると,音楽が流れなくって,止まってしまうのではないかとハラハラさせられたモノです.
彼はよくもまあ桂冠指揮者を受けたようですが,彼の桂冠指揮者を契機にコンマスやパートの首席がいなくなっては,大植の指揮する今後の大フィルの演奏レベルは思いやられます.

大植の虚像を知る人は少なくないでしょうから,大阪フィルの音楽監督の後任,それも大植英次の後任などを進んで引き受ける有力指揮者は,まず当分,見当たらないのではないでしょうか.

本当は,虚飾にまみれた大植には桂冠指揮者などお辞めいただいて,フリーな立場の音楽監督を懸命に探さないと,大阪フィルの将来性は危うい限りだと考えるモノです

 

 

 


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