SSブログ

トッパンホール:ベザイテンホウト・フォルテピアノ演奏会 [音楽時評]

5月26日,トッパンホールに,フォルテピアノ弾きのクリスティアン・ベザイデンホウトのリサイタルを聴きに行って来ました.プログラムがハイドンとモーツアルトでしたから,当時の楽器に近い音を聴いてみたくて出かけました.

ベザイデンホウトは,ドイツ系オランダ人の両親のもと,1979年に南アフリカで生まれた国際人です.10歳からオーストラリアで勉強を始め、イーストマン音楽学校を最優秀の成績で卒業し,2001年、21歳のとき、ブリュージュ・フォルテピアノ・コンクールで第1位と聴衆賞の栄誉に輝き,一挙に演奏者として世に出た人です.
フォルテピアノだけでなくチェンバロとモダン・ピアノの奏者として世界中で演奏し、各地の音楽祭にも出演しており,初来日は2002年に武蔵野文化会館(フォルテピアノ),2009年秋,NHK響とモダンピアノで協演し,2010年王子ホール(フォルテピアノ)に来演しています.
また,室内楽分野でも国際的に活躍している人材です.

フォルテピアノは,鉄材をどこにも使ってなくって,しかもキーボードから伝わる打鍵キィが皮で覆われているということから,その音色は,
Fortepianos also tend to have quite different tone quality in their different registers — noble and slightly buzzing in the bass, "tinkling" in the high treble, and more rounded (closest to the modern piano) in the mid range. In comparison, modern pianos are rather more uniform in sound through their range.
とされています.

ベザイデンホウトは,ウイーンのワルター・モデルによってPaul McNultyが2002年に製作したものを持参したと,プログラムに書かれていました.

プログラムは,
ハイドン:ソナタ第32番 ト短調 Hob.XVI-44
モーツァルト:ソナタ第14番 ハ短調 K457
      ※※※※※※※※
ハイドン:ソナタ第58番 ハ長調 Hob.XVI-48
モーツァルト:ソナタ第13番 変ロ長調 K333(315c)
でした.

最初のハイドンは中庸ー急の2楽章構成で,音域も狭かったので,全体が温和で透明な響きで終始し好演でした.

しかし,モーツアルトの有名曲は急ー緩ー急の3楽章構成ですが,音域が幅広くて低温部にも広がっていて,上述のnoble and slightly buzzing in the bass が,slightlyではなく to some extent の域に及んでいて,右手とのバランスの上でも少なからず違和感を覚えました.

後半は,20分の休憩中一杯をかけて調弦されていましたから,ここではモーツアルトの2ヶ所ほどを除いてnoble さを違和感なく聴くことが出来,"tinkling" in the high treble, and more rounded (closest to the modern piano) in the mid range を楽しむことが出来ました.

開演前の調弦は,開演少し前からの照明などで,少し調子が狂ったのでしょうが,休憩時間の調弦が休憩時間を過ぎても続いていたことから考えると,開演直前まで続けてくれていたらと思いました.

なお,今月29日と30日に王子ホールで,2010年に続き,フォルテピアノでオール・モーツアルト演奏会が予定されています.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。