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東京文化会館:都響A定期マリン指揮メネセス(cello) [音楽時評]

5月21日,東京文化会館に東京都響A定期公演を聴きに行って来ました.指揮に1960年ルーマニア生まれでオペラ指揮者からオーケストラ指揮者まで幅広く欧米で活躍しているイオン・マリン,チェロ独奏に1957年ブラジル生まれで,77年ミュンヘン,82年チェイコフスキーの2大Competition で優勝して世界に羽ばたいたアントニオ・メネセスでした.
また,コンマスには四方恭子,ただ,隣は矢部達哉でした.

私は元来はB定期会員なのですが,4月12日にトリプッてしまって,A定期に振り替えたのです.4月はウルトラ有名ソリストで難しかったので,5月に回りました.

久し振りの東京文化会館大ホールだったのですが,改めて音響の良さに感心しました.

プログラムは,魅力的で,
ワーグナー: 歌劇「リエンツィ」序曲
シューマン:  チェロ協奏曲 イ短調 作品129
      ※※※※※※※※
フランク:    交響曲 イ短調 129
でした.

「リエンツィ」はワーグナーの習作の最後の作品で,それ以前の習作作品をワーグナーは上演を禁じていますから.この曲もオペラ上演されることはほとんどない作品です.しかし,序曲はなかなか劇的な秀作ですから,結構演奏されているようです.貴族政治に対する民衆の蜂起を扱った作品ですから,劇的な構成もあって聴き応えがありました.トランペット・ソロが収支活躍します.

シューマンのチェロ協奏曲は,彼の最晩年の作品で,死後4年経って初演されてぃます.精神病棟で推敲された作品は初め疑問の目を向けられたのですが,現在ではバイオリン協奏曲とともに彼の傑作として評価されています.シューマンは協奏曲のジャンルでは本作の他にピアノ協奏曲、遺作であるヴァイオリン協奏曲の2曲を遺していますが,このチェロ協奏曲にはシューマン自身による「ヴァイオリン協奏曲版」があり.稀に取り上げられています.
第1楽章 あまり速すぎず
第2楽章 ゆるやかに
第3楽章 きわめて溌剌と
の3楽章構成が切れ目なく演奏されます.第1楽章はリズムを活用しながら流麗に演奏されて第2楽章穏やかな中間楽章に入ります.ここでは4曲チェロの首席との二重奏も入ったあと,動きを早めて第3楽章に入り,器楽合奏との掛け合いで主題が構成され,しかも器楽伴奏付のカデンツァが入って国を閉じます.なかなかの名演奏だったと思います.
チェロがアンコールにバッハからの無伴奏サラバンドが美しく演奏されました.

フランクの交響曲は,作曲者唯一の交響曲ですが,フランクがベルギー生まれであったこともあって,その構成感などにドイツ風を感じさせるものがあります.曲は,フランクの弟子、アンリ・デュパルクに献呈されています.
曲はスケルツオ楽章を欠いた3楽章構成ですが,第2楽章の中間部にスケルツオが入っています,
第1楽章には[祈り」「希望」「信仰」とよばれるようになった3つの主題が現れますが,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番終楽章の"Muß es sein?"(そうでなければならないのか?)の動機 (D-C♯-F)が序奏に含まれています.展開部に移行する過程で,「祈りの主題」が弱音でホルンーオーボエーフルートに受け継がれる部分は美しさに満ちています.
第2楽章ではイングリッシュホルンがハープ+弦楽と繰り広げる対話に美しさが印象的です.
第3楽章は,第1,第2楽章の主題を組み合わせながら展開し,クライマックスを形成して終わります.終曲後,指揮者マリンがイングリッシュホルンを真っ先に経たせていたのが印象に残りました.

最近の東京都響の充実振りを反映した,見事な好演だったと思います.

 


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