SSブログ

王子ホール:ポール・ルイス(pf)シューベルトの名演 [音楽時評]

この日はトリプッてチケットが3枚になってしまい,都響B定期のインバル,ブルックナー7番を5月の都響A定期に振り替え,トッパンのクン=ウー・パイクのベートーヴェンop.111のピアノ・ソナタは譲って,やはりポール・ルイスのシューベルト・チクルスを聴きに王子ホールに行って来ました.

前にも書きましたが,1972年,イギリス・リバプール生まれで,アルフレッドブレンデルの愛弟子として知られたポール・ルイスは,師匠譲りのシューベルト演奏では様々な賞賛を受けてきました.
そのルイスが40歳を前にして,シューベルト・チクルスを始めているのです.
なお,ルイスの最新アルバムは,テナーのマーク・パドモアと組んだシューベルト三大歌曲集ということです.そういえば,ブレンデルもフィッシャー・ディスカウとの「冬の旅」の名盤を残しています.

今夜のプログラムは,オール・シューベルトで,
16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ Op.33, D783
アレグレット ハ短調 D915
ピアノ・ソナタ 第14番 イ短調 Op.143, D784
      ※※※※※※※※
ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 Op.42, D845
でした.

ルイスの特質は,楽曲のフレージングで常にアクセントをハッキリさせていることにあるように思います.それがシューベルトの楽曲の基底にある「歌心」を浮かび上がらせていると思われるのです.

「16のドイツ舞曲」は,シューベルトが親しい仲間たちとの集いで,皆で踊れるように作られたダンス音楽だといわれます.いずれも短い曲ですが,そのなかにシューベルトが盛り込んだ多彩さは見事というほかありません.エコセーズ2曲はスコットランド風舞曲です.

アレグレットは親友がヴェネツィアに赴任するときに別れを惜しんで献呈した小品です.

ピアノ・ソナタ第14番は,シューベルトにとって6年ぶりのソナタですが,その間に大作「さすらい人幻想曲」が書かれたということがあり,いっそう充実したソナタになっています.
3楽章構成ですが,第1楽章では第1主題,第2主題が長調に転調して,明朗に終わります.第2楽章は温和な主題による緩徐楽章,第3楽章は最後までイ短調で締めくくられます.

ソナタ第16番は良く聴かれる曲ですが,この作品から4楽章構成を取っています.
第1楽章 Moderato イ短調 ソナタ形式.両手の斉唱で開始し,このユニゾンが楽章全体を支配します.展開部で急速な部分が出現しますが短く終わり,主題を半音下げて再現しています.第2楽章 Andante con moto ハ長調変奏曲形式で,中間に遠隔調変イ長調の変奏を入れています,第3楽章 Allegro vivace-Trio:Un poco più lento イ短調 のスケルツオです.第4楽章 Allegro vivace イ短調 は明快なロンド形式調性転調が多く不安定ですが,最後に第1楽章の動機が加速して現れ,力強い和音で終わります.

全体を通して,シューベルトの創作力の高まりを感じさせる構成で,今後のチクルスの展開がいっそうの楽しみになりました.


 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。