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日経ホール:チャイコン3位→落選ルビャンツエフ(p)リサイタル [音楽時評]

4月10日,日経ホールにルビャンツエフ・ピアノ・リサイタルを聴きに行って来ました.昨年のチャイコフスキー国際Competition で,その前の3位から,本選落ちしてしまったピアニストです. 

チャイコフスキー国際Competition を巡っては,これまで様々な噂がありました.
パイオニアが経費負担した年の日本人ヴァイオリニスト,
ヤマハがピアノをCompetition 公式ピアノにした年の日本人ピアニスト,
etc.etc......とかくの噂があったのです.

しかし,昨年は,ロシア音楽界の巨匠ゲルギエフが総監督となり,審査員のほとんどを入れ替えて,公平を期したのです.
しかし,その前の審査員にとって,半ば暗黙の了解で前回3位を次にはもっと上位にするといったあやふやな了解でもあったようで,騒ぎになって,ナント批評家賞というのを貰ったのが,今夜のルビャンツエフです.

そして,今夜のプログラムは第1次予選から第3次予選までにルビャンツエフが弾いた曲を主体に並べたモノなのだそうです.本選落ちが不合理だったと理解されたいというのでしょうか.

私は,何よりも今夜のこうした企画に反対です.何故,本選前の予選段階のピアノ曲を並べたのでしょう.本選ではオーケストラとの協演で協奏曲が演奏されて優勝者が決まったのですから,予選段階の演奏曲を並べることにどれだけの意味があるのでしょう.
何故,もっと自由にプログラミングさせなかったのでしょうか.

昨年のピアノ部門優勝者はダニール・トリフォノフ,そしてアジアの年といわれたように,2位;ソン・ヨルム、3位;チョ・ソンジンだったのです.
トリフォノフの素晴らしさについては,昨年の日本公演についてのブログに書いたとおりです.彼はコンチェルトの外にリサイタルもやったのです.

また,今月23日には,
第14回チャイコフスキー国際コンクール優勝者ガラ・コンサート
曲目
チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出
シューマン:幻想小曲集
ラフマニノフ:ヴォカリーズ
ショパン: 12練習曲 op.10
出演 ダニール・トリフォノフ(Pf)、セルゲイ・ドガージン(Vn)、ナレク・アフナジャリャン(Vc)

4月27日(金)には,
曲目
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調
指揮  アンドレイ・ヤコヴレフ
出演 ダニール・トリフォノフ(Pf)、セルゲイ・ドガージン(Vn)、ナレク・アフナジャリャ(Vc)
演奏  モスクワ交響楽団

と,ピアノ,ヴァイオリン,チェロの優勝者3人の室内楽&ソロ・リサイタルと協奏曲演奏会が予定されているのです.

同じ4月に,何故,本選を逸したルビャンツエフに,こうした枠を嵌めたリサイタルを開かせたのでしょう.ロシアのもめ事に日本が同調してどうするのですか.アジアの年といわれたアジア人入賞者に向かって,日本は何を言おうとするのですか.
日経ホールは,昨年2位のソン・ヨルムを,6月26日にリサイタルに招いているではありませんか.
一方で反逆児を招きながら,他方で正当な2位を認めて招待するという感覚は無神経過ぎます.

今夜のプログラムは,
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
ラフマニノフ/エチュード「音の絵」 作品39-7*
ショパン/ノクターン 第13番 ハ短調 作品48-1
リスト/メフィスト・ワルツ 第1番「 村の居酒屋での踊り」 S.514*
       ※※※※※※※※
スクリャービン/ピアノ・ソナタ 第5番 嬰ヘ長調 作品53*
ショパン/ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58*
このうち*チャイコフスキー国際コンクール演奏曲
と余りにも多彩で無定見な並べ方でした..

驚いたのは,冒頭にベートーヴェンの晩年の傑作ピアノ曲の1つ,作品110番が演奏されたことです.これは,たいへん柔らかなピアノ・タッチで,なかなかの好演でしたが,本来なら,もっと後に弾いて欲しかったと思います.
ただ,前にも書きましたが,このホール,講演会や研修会用に使うことが考えられていて,絨毯が敷き詰められており,椅子はビロード張りが連なっているのです.従って音が吸収されやすく,残響が乏しいのです.
そのため,音が乾いて聞こえてしまい,おまけにピアノの高音部の調律が不十分だったようで,調律師が入る休憩前の曲,とりわけリストでは,高音部の響きに微妙に違和感がありました.

あと,最後のショパンのピアノ・ソナタ 第3番もなかなかの好演だったと思います.
しかし,もうひとつ注文を付けますと,この人は,1曲ごとに拍手を受けても袖に引っ込まず,直ぐ,次の曲に移ってしまうのです.つまりベートーヴェンの余韻を楽しむ余地を与えませんでしたし,いきなり別人の曲になって,聴衆が直ぐにその曲に身を委ねる余裕を与えなかったことです.それは大きなマイナスだと思います.

要望としては,確かにチャイコフスキー3位の演奏テクニック,作品解釈の実力があり,将来の伸び代も豊かに備えているのですから,本選に進めなかった巡り合わせの悪さの後を引きずらず,演奏会はきちんと自主的にプログラミングし,ステージマナーについて,もっと大家を見習うことです.

 


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