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紀尾井ホール:ピアノ・トリオを聴くⅡ [音楽時評]

紀尾井ホールの四大トリオ演奏会のⅡは,現代楽器で行われました.
出演者は,
ピアノ:    河村尚子
ヴァイオリン:佐藤俊介
チェロ:    堤 剛
でした.

そしてプログラムは,
ドヴォルジャーク:ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調 Op.90 「ドゥムキー」
        ※※※※※※※※
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50 「ある偉大な芸術家の思い出に」
でした.

いずれも有名な曲ですが,「ドゥムキー」は,ドヴォルジャークが愛したウクライナ地方の舞曲「ドウムカ」の複数形だそうで,全6楽章がいずれもこの舞曲を取り入れているので,この曲の名称は複数形なのだそうです.
1.Lento maestoso - Allegro quasi doppio movimento - Lento - Allegro (ホ短調

2.Poco adagio - Vivace non troppo - Poco adagio - Vivace (嬰ヘ短調
3.Andante - Vivace non troppo - Andante (イ長調イ短調~イ長調)
4.Andante moderato (Quasi tempo di Marcia) - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegro - Meno mosso - Moderato (ニ短調
5.Allegro - Meno mosso - In tempo -Meno mosso - Piu mosso (変ホ長調
6.Lento maestoso - Vivace - Lento - Vivace (ハ短調ハ長調
この各楽章は自由な形式で構成されており、ソナタ形式の楽章が1つもないこと,第1~第3楽章は3度ずつ下降しますが.それ以外は楽章間の調性の関連付けが自由で首尾一貫性がないことから.いわば組曲という側面を持っています.どの楽章でも転調や,テンポや気分の急激な変化が際立っています.
いかにもドヴォルジャークらしい,スラヴ的な愁いを含んだ美しい旋律が全篇に流れていますが,ジプシー音楽やチェコ民族舞曲に影響された激しいリズムの調子も織り込まれています,
演奏は,チェロ,ヴァイオリンが活発に活躍し,ピアノはやや控えめな扱いになっていましたが,3人ともたいへん充実したトリオを展開してくれました.

チャイコフスキーの三重奏曲は,パリで亡くなったルビンシュタインへの哀歌として作曲されたモノで,こちらは逆に2楽章構成です.
I. 悲歌的小品(伊語Pezzo Elegiaco) (Moderato assai - Allegro Giusto)
II. (A) 主題と11変奏(伊語:Tema Con Variazoni) - (B) 最終変奏とコーダ(伊語:Variazioni Finale e coda
このII. (A)の主題は,第1楽章冒頭主題の音を並べ替える形でピアノによって演奏され,その後の変奏は,第1変奏 -第2変奏: Più mosso -第3変奏: Allegro moderato -第4変奏: L'istesso tempo (Allegro moderato) -第5変奏: L'istesso tempo -第6変奏: Tempo di Valse -第7変奏: Allegro Moderato -第8変奏: Fuga (Allegro moderato) -第9変奏: Andante fieble,ma non tanto -第10変奏: Tempo di Mazurka -第11変奏: Moderato -最終変奏:Allegretto risoluto e con fuoco -コーダ: Andante con moto - Lugubre.
と間に Valse, Fuga,Mazurka などが配列されて,まことに多彩ですし,最終変奏はかなり長大で,ピアノのアルペジオを従えて,ヴァイオリン,チェロが第1楽章の嘆きの主題をを回帰させ,コーダに入りますが,その終わりの Lugubre は,「陰鬱に,喪に服するように」と記されており,ピアノが低音で,A-E-A-E ・・・の音型を繰り返して終わります.葬列が遠ざかるのを描写したと考えられる部分です.
ここでは,ピアノがかなり前面に出て活躍し,トリオとして誠に見事な演奏でしたが,最後の低音のピアノの音が消えないうちに,「ブラボー」+拍手になってしまい.本来,余韻を残すところがメチャメチャニなってしまったのは,まったく残念でした.
そもそも音楽文化が浸透し,曲の意味を理解した外国でなら絶対にブラボーなど入らないところでのブラボーには,驚き呆れました.

アンコールには,ドヴォルジャークから,ピアノの強打で終わる楽章が演奏されましたが,これは演奏者たちが意図的に選択したアンコールだったと思います.

ある文章から引用しますと,「演奏が終わった後の余韻と静寂を含めて全てが音楽」という考え方があり,余韻そのものを楽しむ聴衆も多い.実際、ブルックナー交響曲第5番のように「全休符で終わる曲」、またはベートーヴェン『英雄』のように「フェルマータの休符で終わる曲」は少なくないのです,
特に余韻が消える前、または拍手に先立って叫ばれる「ブラヴォー」は,俗に「フライング・ブラヴォー」と呼ばれ、
最も軽蔑される行為であるとされています.

こうしたマナーの悪さ,レベルの低さは紀尾井ホールで特に顕著ですから,「曲の余韻を楽しみたい聴衆の妨げにならないよう,かけ声や拍手は暫時『間』をとってからにして下さい」と,毎回2度くらいアナウンスを繰り返す必要があるのではないでしょうか.

 


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