サイトウキネンの発想は最早過去のモノ: 追記 [音楽時評]
小澤征爾がようやく1年間の休養を決めたことは,本人にとってたいへん良いことだと思います.
しかし,サイトウキネンが小澤征爾のライフ・ワークというのは,納得しがたい表現です.
第1に,当初の目的とされた,
there developed a dream until now unimaginable --"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland."
は,サイトウキネンによってではなく,世界に進出した若い世代の多くの有能な日本人音楽家たちによって,既に十二分に達せられたと思われるからです.
さらにいえば,最早,日本はアジアの盟主でもなく,今やその地位はすっかり中国に取って代わられており,中国その他から輩出される優れた音楽家,ラン・ラン,ユジャ・ワン,ユンディ・リたちは,今や世界中に広がっています.
The Simón Bolívar Youth Orchestra of Venezuela (SBYOV) の成功によって.広く世界に広がっています. そう考えると,--"Japanese people one day transmitting western music back to its European homeland." は,最早まったく色褪せた,古き良き日本の時代の発想というべきです. 第2に,サイトウキネン松本は,小澤征爾が1人で取り仕切るモノですから,だらだら,だらだらと続く割には見るべきものが少なくって,はっきりいって,西欧でいう音楽祭の多彩さはまったく見られない代物です.有り体にいって,マンネリ化して魅力が乏しいのです. 第3に,今年は,小澤征爾が休養するのではなく,総監督としてサイトウキネンの期間中,指導したり目を光らせるようなことが書かれていますが,それは音楽界では非常識なことです. そんなことも弁えないようでは,総監督など続けて欲しくないモノです. もう,サイトウキネンもいい加減長くなったことは,昨年,サイトウキネンを改名する,松本プログラムを短縮して世界に進出すると歌い上げたことからも(この話どうなったのでしょう?),サイトウキネン関係者自身が,そろそろ何かを変えなければと遅まきながら考えたのだと思います. それにしても,小澤征爾が指導して引き立ててきた指揮者というのは意外にも希少ですね.小澤に師事したと公言しているのは,ミネソタ菅を失格した大植英次くらいではありませんか... Bostonに29年間も居座って,何年か後に後任になり得る人を誰も育て上げなかった人が,松本に20年いても誰も育て上げなかったのは,いったい何をやってきたのでしょう. 強いて挙げれば,新日フィルのアルミンクとハーディングは,一緒にTanglewood の教育プログラムに参加していますが,かつて若くしてラトルやアバドに認められて,ベルリンフィルの指揮台にも上がったハーディングが,35歳になっても主要ポストに就けないでいるのはどうしたことでしょう.
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