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サントリーホール:チューリッヒ・トーンハレ.ジンマン指揮,ヨーヨー・マ(cello) [音楽時評]

11月15日,サントリーホールに,ディヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏会を聴きに行ってきました.チェロのヨーヨー・マが共演者として参加していました.

ディヴィッド・ジンマンは1936年アメリカ生まれといいますから,もう75歳というところでしょうか.しかし指揮は何とも若々しい指揮振りでした.トーンハレとは,オペラ菅とオーケストラ菅が分離した機会に,意外な人事で招かれ,1995年以来首席指揮者の地位にあり,この楽団の実力を高めたと高評を受けているようです.遅まきながら,ベートーヴェン,マーラーなどの全集を次々と出して,たいへん斬新な音楽作りをやっているそうです.

ヨーヨー・マについては今更紹介を要しないでしょう,ただ,最近,アメリカでドヴォコンを弾いて,手抜きをしたと批判されていました.

プログラムとしては昨夜のショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲とマーラーの5番の方が興味深かったのですが,日程で,今夜になりました.

プログラムは,
ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調
        ※※※※※※※※
ブラームス:    交響曲第2番 ニ長調 op.73
でした.

最初にオーケストラの配列ですが,左から第1,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,そしてチェロが右の最前列に楽器が大きい分だけ壁まで並んで,コントラバスがヴィオラの後ろに並んでいました.
チェロがソリストと指揮者を挟んで反対側にいたのは,興味深い配置でした.

第1曲がドヴォコンだったためか,遅刻してドヴォコンを聞き逃した人がかなりいたのは気の毒でしたが,アンコールは聴けたのではないでしょうか.
それは, ブロッホ:『ユダヤ人の生活』から「祈り」 でした.

ドヴォコンは,あまりにも広く知られた曲ですが,アメリカに招かれた間に作曲されたモノで,ボヘミアの音楽と黒人霊歌アメリカン・インディアンの音楽を見事に融和させた作品として知られています.
序奏なしで,クラリネットが第1主題を奏で,続いてホルンが第2主題を提示し,その後からチェロが主題を繰り返します.エネルギッシュな第1主題と民謡風の第2主題の対比が鮮明に聴かれます.ヨーヨー・マは以前聴いたときほど音量をあげておらず,オーケストラに良く溶け込んでいました.
第2楽章では,抒情性に満ちた主題が最初木管楽器で提示されチェロが引き継ぎ展開させます,オーケストラの協奏の後,チェロがドヴォルザーク自身の歌曲によるやや暗い主題を歌います.
第3楽章はロンド形式で,ボヘミアの民俗舞曲風のリズム上で黒人霊歌風の旋律が断片的にオーケストラに奏でられた後,チェロがまとまったロンド主題として奏で,ロンド形式で展開され,第1楽章,第1主題が回想されるとテンポを速めて全曲が華麗に閉じられます.
これほどオーケストラ各パートが活躍する協奏曲も珍しいといえますし,チェロのカデンツァらしい部分は第2楽章の終わり近くに聴かれるだけですが,それでいてオーケストラがちゃんとチェロを盛り立てています.

ブラームスの第2番は,長い年月をかけた1番の後,ヴェルター湖畔にあるペルチャッハに避暑のため滞在中に大部分を書き上げ,わずか4ヶ月で仕上げられたといいます.そして,ここではブラームスがたっぷりと歌っています.とりわけ第1楽章の冒頭に低弦が奏する[ニ-嬰ハ-ニ]の音型が全曲を統一する基本動機となっています.
第1楽章でホルンが牧歌的な第1主題を歌い、木管がそれに応じます.ヴァイオリンが基本動機に基づく明るい旋律を歌う経過句の後、チェロがやや愁いを帯びた抒情的な第2主題を奏しますが,ここではヴィオラがチェロより低い音程で旋律に参加しています.先に述べた楽器配置がここでたいへん生きてきます.この美しい旋律だけで,ブラームスの第2番と思い出すほど親しみ深い旋律です.
第2楽章では,物思いにふけるような主部と陽気な舞曲風の部分から構成されています.第3楽章は経過的な楽章で,第4楽章では基本動機に基づく第1主題がいったん途切れそうになって,全管弦楽の爆発的な斉奏で確保され,やがてヴァイオリンとヴィオラが基本動機による穏やかながら情熱を秘めた第2主題を歌います.展開部が収まって,コーダでは、第2主題の動機が金管で繰り返されて高揚し、大いに盛り上がって結ばれます.
この曲のまとめ方,盛り上げ方におけるジンマンの指揮振りは,若々しく見えるほど,躍動的でした.

アンコールにブラームス:ハンガリー舞曲第1番 ト短調を聴かせてくれました.


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