サントリーホール:都響B定期,小泉指揮,ドイツ・レクイエム [音楽時評]
10月25日,東京都交響楽団のB定期公演のブラームス作曲「ドイツ・レクイエム」を聴きに行ってきました.指揮は最初はコンスタンティン・トリンクス(1975年ドイツ生まれ,現在ダルムシュタット州立劇場首席指揮者)が予定されていたのですが,日本の原発事故を懸念してキャンセルしてきたため,レジデント・コンダクターの小泉和裕に変更されていました.
他の出演者は,
ソプラノ: 佐々木典子
バリトン: 萩原 潤
合唱団: 晋友会合唱団
でした.
最初は,ブラームスを世に出すのに貢献したシューマンの死をキッカケに作曲に着手しながら,なかなか進まず,自分の母親の死を契機にやっと書き上げられたとされています.
典礼音楽ではありませんから,むしろこの世に残された者への慰めの曲といえます.
第1曲「悲しみを抱くものは,幸いなるかな」
第2曲「肉体ある者はみな草のごとく」
第3曲「主よ、知らしめたまえ」
第4曲「なんじのいますところは、いかに愛すべきかな」
第5曲「汝らも今は憂いあり」
第6曲「われらここには、とこしえの地なくして」
第7曲「幸いなるかな、主のもとで死ぬるものは」
の全7曲構成です.
第3曲にバリトン・ソロが入り,第5曲にソプラノ・ソロ,そして第6曲にバリトン・ソロが入ります.
かつて,第3曲で,ドーマス・ハンプソンの美しいバリトンの歌声に感動した記憶があるものですから,今夜の萩原 潤さんにはモノ足りなさを感じてしまいましたが,ソプラノも,全盛期のキャスリーン・バトルを思い出してしまって,悪いのですが,佐々木典子さんにもモノ足りませんでした.
モノ足りないというよりは,指揮者小泉和裕があろうことかこの曲を暗譜で振っていたことにも「なぜ?」と感じてしまって,聴く方が冷めていました.ラテン語ではなくドイツ語ですから,全部頭に入っていたのかも知れませんが,それなりの合唱大曲(約70分)ですから,楽譜への書き込みを思い出し読みしながら振って貰った方が,聴く方が安心して聴けたのではと思います.
先日のスクロバチェフスキーでさえ,絶えず楽譜の表紙が譜面台上に見えていました.
オーケストラは,一貫して,なかなか締まった演奏でしたし,合唱団も,歌い慣れた感じで,好演だったと思います.ただ,全体にもっともっと潤いを含んだ曲のはずだという想いが離れませんでした.
ないモノねだりを書いてしまったようですが,私の率直な感想です.