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サントリーChamber Music Garden:PacificaQ [音楽時評]

6月10日,サントリーホール・ブルーローズないしChamber Music Garden へPacifica Quartet のベートーヴェン・マラソン初日を聴きに行ってきました.

初日は盛り沢山で,前期,中期,後期から弦楽四重奏曲第3,第11, 第6, 第16を演奏してくれました.
スケジュールでは,6/11午前マチネーで第12, 第1,第9を,午後ソワレで第5, 第8,第13を弾き,6/12にマチネーで第2,第7,第14を,ソワレで 第4,第10,第15と,3日間でPacifica Quartet 単独で,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会をやってくれるのです.時差の調整もあったでしょうに,なかなかの強行軍で,スタミナが心配されるところです.

私は土曜日の夜に錦糸町でJoan Piris の予定が入っていたので,初日だけ行ってきました.Piris は,結局,福島原発のメルトダウンを日本政府が正式に認めて公表する前に,対日不信から早々とキャンセルしましたが,私は万一を恐れて特に穴埋めはしなかったのです.13日に準・メルクル指揮のリヨン管弦楽団を予定していたこともあったのですが,これもあっさりキャンセルになりました.

プログラムをもう一度書きますと,オール・ベートーヴェンで,                                     弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 op.18-3
弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 op.95                                                                       ※※※※※※※※   
弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 op.18-6
弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 op.135
でした.

第16番はベートーヴェン最後の作品ですが,プログラムの第4楽章に「ようやくついた決心」と書かれていました.これはベートーヴェンの自筆譜に書き込みがあったのを抜き書きしたモノです.死を予感していたと思われるベートーヴェンの謎の言葉です.

4曲の私なりの説明は省略して,Pacifica Quartet の素晴らしさについて書きますと,
第1に,4つの楽器のバランスがたいへん的確なのです.私はかねて日本のクァルテットの弱点としてチェロをあげていますが,Pacifica のチェロがすごく上手いのです.ヴィオラも見事でしたから,4つの楽器が常にバランス良く鳴って,充実したアンサンブルを生み出していました. 
第2に,バランスの良さに乗って,音の幅が弱音から強音までたいへん幅広く聴こえました.
第3に,これもバランスの良さに乗って,章節のアクセントがきわめて明瞭に聴き取れ,曲の構成がくっきりと浮かび上がるのです.

アメリカでも今や屈指のQuartet といえるのではないでしょうか.
特に印象に残ったのは,チェリストが絶えず鋭いアイコンタクトを第1ヴァイオリンに向けていたことでした.そこから生まれる楽器間の同調性が,今夜の演奏を高度の名演奏に仕上げていたと思います.

土曜日と日曜日にマチネーとソワレが続きますから,ご関心の方は是非どれかを聴きに行かれることをお薦めします.


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