オペラシテイ:河村尚子のB to C [音楽時評]
4月26日,オペラシティへ河村尚子のB to C を聴きに行ってきました.
既に相当な売れっ子の河村尚子が,歴代の中堅どころに倣ってこのイベントに挑戦したのが,たいへん斬新なことのように思われました.
プログラムもたいへん斬新で,次の通りでした.
K.デフォールト: デディカツィオVi(2006)
J.S. バッハ: (平均律クラヴィーア曲集第2巻)から「プレリュードとフーガ第11番」
へ長調 BWV880
トローヤン: (ピアノのためのプレリュード)(2006-08)から「ノクチュルヌー春の薄明かりははや」
「引き裂かれた山」
フランク: プレリュード,コラールとフーガ
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J.S.バッハ/F.ブゾーニ編: シャコンヌ
G.コネソン:イニシャル・ダンス(2001)
ショパン: アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 変ホ長調 op.22
でした.なんと21世紀の曲が3曲含まれ,そのうちの1曲コネソンは,河村尚子が世界初演したものだそうです.
デフォールトの曲はジャズ・ピアにストキース・ジャレットに献呈された曲だそうで,「感情の宝物」というサブタイトルを持つ,ジャズ調の即興的変化に富んだ曲でした.高い流動性と柔軟性を持って演奏するようにという指示が付いているそうです.
バッハのプレリュードは流れるような旋律ですが,フーガは快活な舞曲です.ドイツのトローヤンの2つのプレリュードの前者は「さくらさくら」のモチーフを用いているそうですし,後者はドビュッシーからとられたものといわれます.
フランクの曲は,バッハへのオマージュとして書かれたもので,BACHのドイツ音名からのモティーフ(嬰へ,ホ,ト嬰へ)が用いられ,循環形式で三位一体を構成しているそうです.
バッハのシャコンヌは説明するまでもありませんが,前に聴いた(ブログに書いた)かなり生ぬるいシャコンヌと違って,河村尚子は確実なテクニックでまことにダイナミックなメリハリの効いた名演奏を聴かせてくれました.
コネソンのイニシャル・ダンスは,クロス・オーバーというよりもうジャズそのものといった趣がある楽しい曲で,河村尚子の斬新さに感嘆しました.
ショパンについては何も付け加えることはありません.とにかく華麗な好演でした.
B to CはバロックからContemporary という趣旨なのでしょうが,今夜はその超現代作品に果敢に取り組んだ河合尚子の多彩さに,改めて彼女への期待が一段と膨らんだ気持でした.
秋にはNHK音楽祭でベルリン放送響と「皇帝」を協演するそうですが,これもまたいっそう楽しみが増した感じです.