トッパンホール:ペリアネス・ピアノ・リサイタル [音楽時評]
3月2日,トッパンホールに1978年スペイン生まれのハヴィエル・ペリアネス・ピアノ・リサイタルを聴きに行ってきました. 近年シューベルト晩年のピアノ作品に強い関心を持つようになったのですが,今日は,そのなかの2曲がプログラムに挙っていたからです.
プログラムは, シューベルト: アレグレット ハ短調 D.915 シューベルト: ソナタ第21番 変ロ長調 D.960
※※※※※※※※ ショパン: 2つのノクターン 作品48 ハ短調&嬰へ短調
ショパン: 子守歌 変二長調 作品57 ショパン: バラード第4番 へ短調 作品52 でした.
ペリアネスはたいへんしっかりした打鍵で,ppからff まで厚み,深みのある音楽を聴かせてくれました.それは第1曲目のアレグレットから,まことにシューベルト晩年の曲,三部形式に相応しい,短いながら,叙情性に富んだ好演でした.
長大なソナタ第21番を,第1曲への拍手がないまま直ぐ弾き始めましたが,第1楽章Molto moderato では,そのメロディックな第1主題と低音と高音の応答形式の第2主題がまず提示され,それが複雑,豊かに展開されて静かに終わります.第2楽章Andante sostenutoは三部形式の緩徐楽章で,主部では民謡風の左手,右手の2重唱が,中間部ではバスの反復の上で,ロマンティックなメロディが歌われます.
第3楽章Scherzo: Allegro vivace con delicatezzaでは,幅広い音域を一杯に移ろうメロディが展開され,トリオでは叙情的なメロディとリズムを刻む左手の伴奏のコントラストが強調されています.第4楽章Allegro ma non troppo - Presto は,ソナタ形式で躍動的な第1主題,大らかなメロディの第2主題,そして第1主題を元にしたファンファーレによって構成されたテンポの速いフィナーレで終わります.
まことに表情豊かに,このシューベルト最後の大作が好演されました.
後半のショパンは丁寧に弾いていましたが,D.960ソナタで既に十分満足していました.