トリフォニーホール:新日フィル「扉」.山田和樹,荻原麻未(p) [音楽時評]
8月10日,久しぶりに新日本フィルハーモニーの「新クラシックの扉」を聴きに行って来ました.指揮が山田和樹で,ピアノに荻原麻未が出演していたからです.
なお,コンマスは崔文洙,オルガンに室住素子でした.
プログラムは,
ラヴェル: 亡き王女のためのパバーヌ
ラヴェル: ピアノ協奏曲 ト長調
※※※※※※※※
サン=サーンス: 交響曲第3番 ハ短調「オルガン付」
でした.
「亡き王女のためのパバーヌ」は,ラヴェルがルーヴル美術館を訪れた時にあった、17世紀スペインの宮廷画家ディエゴ・ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て作曲したといわれます,「亡き王女」は韻律上の表現で,特定の人物を指すものではないそうです.最初ピアノ曲として作曲され,翌年にはオーケストレーションされたそうです.
比較的小編成で,冒頭で,弦楽器のピッチカートに乗り、ホルンのソロでロンド主題が提示されるのですが,ここでホルンが音を外していたので,この短いけれど旋律美を持って最弱音で終わる曲は楽しめませんでした.
山田和樹の指揮は明快で,構成もしっかりしていました.
ピアノ交響曲は,最晩年に左手のためのピアノ協奏曲と平行して作曲され,有名なピアニスト,マルグリット・ロンのピアノ,指揮ラヴェルで1932年に初演され,好評を博したといいます,
とりわけ20世紀初頭に流行したジャズの影響を強く受けています.
Allegramente/Adagio assai/Prestoの3楽章構成です.冒頭のピアノが提示するアルペジオの繰り返しがジャズに似て印象的です.ピアノのカデンツァに先立ちハープ・木管楽器によるカデンツァが挿入されている点もユニークです.第2楽章では冒頭にピアノの独奏が入ってユニークですし,中間で,コールアングレとピアノが美しい旋律で対話するところも魅力的です.終楽章は,再び,ジャズの雰囲気に近づいて,華やかに曲を終えます.
なかなかの好演だったと思いますが,アンコールで予想外のことが起こりました,山田和樹が3度目のアンコールまで指揮台近くに残っていて,2度目にソリストがアンコールから引っ込んだ後,山田和樹が次々と楽団員を指さして立たせて拍手を受けさせ,それを一通り終えてから,指揮台近くからソリストを手招きしたのです.
こんな光景を見たのは初めてでした,いくら自分が先輩であったにせよ,ソリストをソリストとして敬意を表しないこと,聴衆のアンコールはソリストを呼んでいるのに,山田和樹が勝手に楽団員に拍手を割り振ったことは,ソリストに対する最低のステージ・マナーだったと思います.
20世紀から五嶋みどり始め10歳前後で初協演するソリストが大きく増えているのです.山田和樹のような最低のマナーに出会ったら,10代のソリストは傷つくでしょう.
サン=サーンスの交響曲第3番は,オルガンを含めてなかなかメリハリの効いた好演だったと思います.しかし,その後がやはり頂けませんでした.
山田和樹は打楽器,金管,木管の順に全員を順番に立たせ,最後に五弦をコントラバスから順番に次々と一斉に立たせて拍手を受けさせたのです,
遠来の楽団でもない月例の「新・クラシックの扉」なのですから,2,3の人を別にして後は一斉に立たせれば良いので,なんでこんなことをするのだろうと呆気にとられました.
昨日のブログで書いた Yannick Nézet-Séguinが,born 6 March 1975 in Montréal, Québec, Canada で今秋からPhiladelphia 菅のMusic Director ですが,1979年生まれの山田和樹は,今秋から経営にPhiladelphia と類似した問題を抱えた日本フィルの正指揮者に就任予定です.スイス・ロマンド菅の首席客演指揮者に決まっていますが,昨日のブログに引用したYannick Nézet-Séguin の他を圧する個性に近いものは,今日の山田和樹からはほとんど感じられなかったことを付言して終わりたいと思います.
10月には,同じ新日フィルを,ヨーロッパの下積みから着実に向上した上岡敏之が振るのを聴く予定をしていますから,その日をいっそう楽しみにしたいと思います.
なお,山田和樹で気になって,ブザンソン国際指揮者コンクールについて,日本人以外にはあまりプロフィールに掲げているのを聞かないので,主要歴代優勝者を列記してみました.
日本人をピックアップしますと,
小澤征爾 (1959年、第9回)
松尾葉子 (1982年、第32回)
佐渡裕 (1989年、第39回)
曽我大介 (1993年、第43回)
阪哲朗 (1995年、第44回)
下野竜也 (2001年、第47回)
山田和樹 (2009年、第51回)
垣内悠希 (2011年、第52回)
と,どうも欧米指揮者にとっては,最早,魅力的な登竜門でも何でもなくなってしまっているようです.
なかで現在も欧米で活躍中なのは,
ズデニェク・マーカル (1965年、第15回),
シルヴァン・カンブルラン (1974年、第24回)
位のモノではないでしょうか.
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