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読売ホール:ラ・フォル・ジュルネ室内楽2駒 [音楽時評]

5月5日,あたふたと人々が会場から会場へと渡り歩く姿が,どうしても好きになれないのですが,今年のラ・フォル・ジュルネはロシア音楽中心に駒を増やしたせいか,国際フォーラムをはみ出して読売ホールにまで会場を広げていたので,そちらで開かれた室内楽を2駒聴いてきました.

第1が,
庄司紗矢香;ヴァイオリン,
タチアナ・ヴァシリエヴァ;チェロ,01年ロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクール優勝
フラメナ・マンゴーヴァ;ピアノ,2007年エリーザベト王妃国際コンクール2位
による,
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリンとピアノのための前奏曲 全24曲から10,15,16,24番
    々      :ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 緩ー急ー緩ー急の4楽章

第2が,
ジャン=マルク・フィリップ=ヴァルジャベディアン:ヴァイオリン
ラファエル・ビドゥ:チェロ
ヴァンサン・コック:ピアノ
で構成された「トリオ・ヴァンダラー」
による
チェイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 op.50 「偉大な芸術家の思い出に」

でした.

第1は2階で聴いて,第2は1階正面で聴きましたから,厳密な比較にはならないでしょうが,演奏は庄司紗矢香グループが格段に優れていました.
ショスタコーヴィチの前奏曲24曲は,まず,ピアノで作曲され(1932~33年),それをピアノとヴァイオリン用に編曲し,さらにオーケストラ用編曲も残されています.
24曲はショパン同様全部調性が異なるのですが,ここでは4曲が見事に好演されました.

次のピアノ三重奏曲は,交響曲第8番が作曲された翌年(1944年)の作曲で,ロシアにおけるこのジャンルの伝統を汲んで、追悼音楽として構想され、作曲者の親友イワン・ソレルチンスキーの追憶に献呈された曲です.
4楽章構成で,第1楽章では,チェロ独奏で入りますが,その後ヴァイオリンが高音を弾くチェロより低い音を奏でています.このチェロが抜群の出来でした.
キビキビした第2楽章の後の緩徐楽章が哀惜の念を湛えています.終楽章が最も長大で,「ユダヤの旋律」を中心主題として形成されていますが,第1楽章冒頭のチェロの主題,第2楽章のピアノの主題そしてヴァイオリンの「墓場の主題」が入り交じって終わります.
特にチェロとヴァイオリンの好演が目立ちました.

第2の有名な「偉大な芸術家の思い出に」は,5月3日にもこのトリオで演奏された所為か,いささか演奏が雑になっていました.とりわけチェロが高音弦と低音弦でがらりと音色が変わるモノですから,有名な旋律に溢れたこの曲にしては,かなり聴きづらい演奏でした.ラ・フォル・ジュルネがフランスの演奏家中心になるのは仕方がないのでしょうが.フランスのトリオには,元来,不向きだったのではないでしょうか.

もっと基本的な問題点として,フランスの地方の音楽祭が,大都市圏でなら何をやっても多くの人が集まるという利点だけを求めて,毎年,東京そしてそれに便乗して北陸でも開かれることには,たいへん違和感を覚えます.

この1995年にフランスの地方都市ナントで始まった「熱狂の日」の空騒ぎを,デフレ下の東京に2005年に持ってきて,既にオーケストラ過剰の東京に,主にオーケストラはロシアから,室内楽はフランスその他から持ってきて,それでも少数混じった有名ソリストは,この「熱狂の日」はお座なりに,空騒ぎ後の日本主要都市の音楽専門ホール巡演で,それなりの好演と音楽的成果を残していきますが,初期に参加していた将来性を期待された日本の若手演奏家が,次第にこれに参加しなくなっていることは重大です.

そもそも1回45分の音の悪いホールでの公演に¥3000は,まるで安かろう,悪かろうではありませんか.あたふたと会場から会場へ辿り着くと,[リハーサル中]お待ち下さい,ではますます安かろう悪かろうです.

来年以降も続けるのなら,もっと絞り込んで,若手日本人中心に転換してやれば,まだこの音響の芳しくない多目的ホールをいくつも使ってやるカラ騒ぎの意味づけが出来るのではないでしょうか.


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