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武蔵野文化小ホール:ブラックショウ・ピアノ・リサイタル [音楽時評]

武蔵野文化会館小ホールへ,イギリスのピアニスト,1949年生まれで60才代初期のクリスチャン・ブラックショウを聴きに行って来ました.

ブラックショウは10代にはオーボエを吹いていたといいますから,ピアニストとしては遅く出発したことになります.マンチェスター大学とRoyal Academy で学んだ後,レニングラード音楽院に学んだそうです.
いったん音楽界に登場した後,1980年代からおよそ20年間,姿を現さなかったといいますから,なかなか個性的なピアニストに違いありません.

プログラムノートに歯の浮くようなコメントが並んでいますが,上記の空白期間が既成の団子状態のピアニスト達と較べて,ある意味で新鮮さを持って受け入れられているのだと思います.2011年にはベルリンフィルと初協演したそうです.

今夜のプログラムは,
モーツアルト: ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K457
シューマン:  幻想曲 ハ長調 Op.17
          ※※※※※※※※
シューベルト: ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D.960
でした.シューベルトの作品は「遺作」と呼ばれるモノです.

モーツアルトは,もともと楽譜に細かな指定がないのですから,個性的な演奏に向いていると思いますが,このソナタはモーツアルト唯一の短調のピアノソナタなのですが,それにしては,このピアニストの明るい温色が,長調で書かれたロンド形式の美しい第2楽章(緩徐楽章:ベートーヴェンの第8番ソナタ第2楽章の旋律との関連性が指摘されている)で十分に生かされていたと思います.
第3楽章では,このピアニストが,フェルマータの休止を恣意的に長く取る傾向に気づかされました.

シューマンの「幻想曲」は,元々ベートーヴェンの記念碑を建立する資金のために書かれたもので,第1楽章(「幻想的に、情熱的に弾くこと」という指定付)の終結部に,ベートーヴェンの「遙かなる恋人に寄す」が引用されて静かに終わりますが,クララとの結婚にその父親から猛反対された絶望感が第1楽章に盛り込まれていて,冒頭のハ長調が.ハ短調に転調され,悲痛なハ短調主題が展開されています.
第2楽章は,自由なロンド形式で,行進曲風に始まり,ゆったりした部分を経て,輝かしく締めくくられています.
第3楽章は,自由なソナタ形式による静かな勝利の歌の緩徐楽章で,独特の余韻を残して終わります.この全曲を通して,フェルマータがかなり個性的に活用されていました.

シューベルトの[遺作」D.960は私がたいへん好きな曲で,昨年の内田光子の名演が記憶に焼き付いていますし,ブレンデルの名盤を良く聴いていているモノとしては,ブラックショウがイギリスの大先輩,内田光子(イギリス在住)やブレンデルの名演を聴いたことがあったのだろうかと訝しく感じました.
時に不必要に強く打鍵して音を濁らしてpp 部分とのバランスを崩していたのが残念でしたし.フェルマータの恣意的な扱いも不本意でした.

私は2日後に日本のピアニスト伊藤恵さんがこの曲を弾くのを,紀尾井ホールで聴く予定をしていますが,彼女の方が優れた演奏を聴かせてくれるモノと期待しています.

 


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