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武蔵野文化小ホール:ヴィットマン(vn)の個性的名演 [音楽時評]

4月2日,武蔵野文化会館小ホールに,カロリン・ヴィットマンの無伴奏ヴァイオリン・リサイタルを聴きに行って来ました.

最初に書いてしまいますと,ヴィットマンは希に見るヴァイオリンの名手で,今夜のリサイタルは素晴らしい名演奏でした.
武蔵野文化会館の聴衆への貢献は,時々,日本では無名でも欧米では高く評価されている人を発掘して聴く機会を提供してくれることです.今夜がまさにそうでした.念のために付言しますと,今夜は久し振りに,プログラムの4枚目に,簡潔な曲目概要が掲載されていました.

ヨーロッパ屈指の名手,ロンドン交響楽団、ケヴァントハウス管弦楽団、フランス国立管と協演,ザルツブルグ音楽祭、ルツェルン音楽祭など世界の音楽祭に次々出演,ドイツ音楽伝統の正当なる継承者・・・・・等の賛辞が紹介文に並んでいますが,1976 in München生まれで,ケルンで学び,さらにボストン,ロンドンで学んだ人です,シャリーノの音楽を英語でヴィオリンを弾きながら解説してくれましたが,英語は誠に堪能でした.

Beyond her work as a soloist, Carolin Widmann has been a professor for violin on the faculty of the Felix Mendelssohn-Bartholdy conservatory in Leipzig since October of 2006. She also holds the artistic direction of Germany's oldest chamber music festival, the Sommerliche Musiktage Hitzacker.と紹介されています.

プログラムは,
バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz117
シャリーノ:ヴァイオリンのための 6 つのカプリチオ
     ※※※※※※※※
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
でした.

前半は,ステージ上に譜面台を3つ並べて,その3つに広げられる譜面を持参してのステージでした.念のためにいいますと後半は暗譜演奏でした.

この人は完璧なテクニックの持ち主で,同時に,極めて個性的で美しく音楽を表現する才人でした.使用楽器は,Carolin Widmann plays a G.B. Guadagnini violin from 1782 とあるのですが,このガダニーニがまたすごく音量豊かで美音でしたから,そのppからff の音域が広くて,それだけ表現力が素晴らしく豊かでしたし,超絶技巧を駆使しても,音が常に美しく響いて,まったく濁ることがありませんでした.

バルトークの無伴奏ソナタは,作曲者がアメリカに亡命して,メニューインの善意の依頼で書かれたモノですが,ヴァイオリンを十分には理解していなかったことから,却って大胆な作曲になっており,新しいヴァイオリンの可能性を生み出した作品です.
Ⅰ.Tempo di ciacccona,Ⅱ.Fuga,Ⅲ.Melodia, Ⅳ.Presto の4楽章構成ですが,実に変化に富んだ名作を,緊張感を漲らせて,美麗な音で名演してくれました.私にとっては,この作品を聴いた中の最高の演奏でした.

シャリーノは,個性的な演奏技法を生み出すのが得意な現代作曲家ですが,ヴィットマンは現代作品に強い関心を寄せており,この超絶技巧を要する難曲6つのカプリッチョを,こともなげに完璧に弾きこなして聴かせてくれました.時に左手だけで継続音を出したり,弓を上下ではなく横に激しく動かして音を出すといった難曲を,完璧に,しかも美しく聴かせてくれました.

バッハの無伴奏バイオリン・パルティータ第2番はたいへん有名なシャコンヌが終曲に含まれる作品で,Ⅰ.allemande,Ⅱ.Courante,Ⅲ.Sarabennde,Ⅳ.Giga,Ⅴ.Ciaconna, の構成ですが,ここではきわめてオーソドックスに,端正に,有名なシャコンヌの入り方も,持って回ることなく,かなり早めのテンポであっさりと入って,しかもこれぞドイツのバッハといった素敵な演奏に終始しました.
なお,各楽曲間で,30秒ほどの間を取っていたのが強く印象に残りました.

まったく素晴らしい名演でしたから,ぜひまた来日して名演を聴かせて欲しいモノです.

 


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