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紀尾井ホール:ケラー四重奏団の名演 [音楽時評]

もともとはアルテミス・カルテットの演奏会が予定されていたのですが,カルテットの1人が疾病ということで,ケラー四重奏団に代わって,私は,アルテミスと書かれたチケットで,ケラーを聴いてきました.

「ケラー四重奏団は、1987年に当時のブダペスト祝祭管弦楽団コンサートマスター、アンドラーシュ・ケラーを中心にリスト音楽院で結成された弦楽四重奏団です.弦楽四重奏の登竜門であり、難関ともいわれているエビアンとパオロ・ボルチアーニの両国際コンクールに優勝し、中堅世代でアルテミス・カルテットと並ぶ人気と実力を誇る弦楽四重奏団です.CD録音で名高いバッハ「フーガの技法」から抜粋、定評のあるバルトーク第5番、ベートーヴェンの傑作「ラズモフスキー第3番」を取り上げます.」というのが,紀尾井ホールからの通知文の一部です.

ケラー四重奏団(Keller Quartett)と弦楽を省いて表記しておりますから,他の四重奏の可能性も念頭にあるのだと思います.バッハの「フーガの技法」や母国のバルトークの弦楽四重奏曲全曲レコーディングが有名です.
メンバーは,
アンドラーシュ・ケラー(第1ヴァイオリン)
András Keller, Violine
ジョーフィア・クルニェイ(第2ヴァイオリン)
Zsófia Környei, Violine
ゾルタン・ガール(ヴィオラ)
Zoltán Gál, Viola
ユディト・サボー(チェロ)
Judit Szabó, Violoncello
でした,

前回の来日が1998年だったそうですが,そのオリジナル・メンバーから第2ヴァイオリンとチェロが交替しているそうです.
第1ヴァイオリン奏者の名前を冠した四重奏団なので,第1ヴァイオリンがリードする楽団かと思いましたが,それは思い違いでした.

プログラムは,

J.S.バッハ:フーガの技法BWV1080より
コントラプンクトゥスI、II、III.8度のカノン,IV、VI、IX
バルトーク:弦楽四重奏曲第5番Sz102
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番ハ長調Op.59-3「ラズモフスキー第3番」
でした.

「フーガの技法」は通常はオルガンかチェンバロで演奏されますが,楽譜が4声で書かれているので,近年は四重奏団も取り上げるようになっています.
たいへん澄んだ音で美麗なメロディが続く曲ですが,ケラーは完全に自分たちのレパートリーとしているらしく,大いに好演してくれました.

この四重奏団の最大の特質は,第1ヴァイオリンが控え目という点にあります.実に正確な音程とテンポを維持しているのですが,他の四重奏団と違って,第1ヴァイオリンがとくに目立つことは全くないのです.実に巧妙に四重奏団に溶け込んでいますから,絶えず,他の3人が弾く音が同じレベルで聴こえてくるのです.これぞ四重奏団といえるほど,絶え間なく綺麗なアンサンブルが続くのです.
ほかの弦楽四重奏団では,たいてい第1ヴァイオリンやチェロが,ほとんど曲の半分前後は.他の奏者を圧倒してしまうのですが,この四重奏団ではそれが全くなかったのです.

ですから,バルトークの第5番(シンメトリックな5楽章構成),ベートーヴェンのラズモフスキー第3番といった名曲が,非常にくっきりと全体を浮かび上がらせて,それぞれ素晴らしい名演奏で展開されました.

今まで,これほど完璧なアンサンブルで聴いた記憶がないほど,バルトークもベートーヴェンも名演でした.

ぜひ近いうちに再来日して欲しい四重奏団です.


 

 


 

 


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