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トッパンホール:アルカント・カルテットの好演 [音楽時評]

1月15日,トッパンホールにアルカント・カルテットを聴きに行って来ました.
アルカントは,12日と13日に王子ホールで連続演奏会を開いて,1日だけ間を置いて,トッパンで演奏会をやったのです.

王子ホールでは,
初日が,
モーツァルト:  弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 K421
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 Op.135
ブラームス: 弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67
2日目が,
J.S.バッハ: フーガの技法 BWV1080より コントラプンクトゥス 1、4、6、9
クルターグ: 6つの楽興の時
J.S.バッハ: フーガの技法 BWV1080より コントラプンクトゥス 11
シューベルト: 弦楽四重奏曲 第15番 ト長調 D887
でしたから,
今日の
バルトーク: 弦楽四重奏曲第6番
ハイドン: 弦楽四重奏曲 ロ短調 Op.64-2 Hob.III-68
ドビュッシー: 弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
を合わせると,10曲をほぼ連日で演奏したことになります.

前回来日時も,チェロのケラスを中心とした素晴らしいアンサンブルに感動した記憶がありますが,今回は,その優れたアンサンブルにいっそう磨きがかかって,前回,随所で見られたエッジでのバラツキがほとんどまったく影を潜め,ほとんど完璧な演奏を聴かせてくれました.

バルトークの第6番は,彼がアメリカに亡命する1939年に作曲されたバルトーク最後の弦楽四重奏曲で,楽譜はニューヨークに持参され,1941年1月20日、ニューヨークでコーリッシュ弦楽四重奏団によって初演されいます.
第4番,第5番では5楽章構成を試みたバルトークが再び4楽章構成で作曲したやや古典的な作品ですが.各楽章の冒頭はいずれもメスト(悲しげに)と記された共通の主題で開始され、作品全体の統一が図られています.この主題は楽章を追うごとに拡大し、第4楽章ではついに楽章全体を覆います.それは,当時のヨーロッパを覆っていた戦争へ向かう不可避な雰囲気を象徴しています.  .1. Mesto - Più mosso, pesante - Vivace

2. Mesto - Marcia con sordino
3. Mesto - Burletta
4. Mesto

ヴィオラが始める第1楽章のメスト主題がきわめて印象的です,テンポが次第に速まります.第2楽章では,チェロが主導して少し長いメスト主題が展開されます.第3楽章では,第1ヴァイオリンが主導し,諧謔的な中間部を含んでいます,第4楽章では,長い序奏部のメストが4つの楽器で対位法的に展開され,第1楽章を断片的に回想されながら,メストが全楽章を覆い尽くして終わります.
随所に鋭い切れ味がアンサンブルに要求されて,緊迫感が支配しますが,まことに見事な名演でした.

ハイドンの曲は,エステルハージー家に仕えてきた最後の年で,特定の貴族ではなく,広い聴衆を対象に書かれた最初の曲です.その故もあって,この曲は,芸術性と陽気さと良い趣味と演奏しやすさを結びつけることに成功した作品といわれます.
この古典曲を,アルカントの面々は,まことに颯爽と弾き抜けてくれました.

ドビュッシーの作品は,独墺系の作品とがらりと変わった曲で,クァルテットの常識を覆して,そこに豊かな色彩感覚を盛り込んだ作品です.提示ー展開ー再現と行った構成形式にとらわれず,多様な旋法のアラベスクを展開しています.
1,Animé et très décidé(活き活きと、きわめて決然として)

2.Assez vif et bien rythmé(かなり急速に、とてもリズミカルに)
3.Andantino, doucement expressif(アンダンティーノ、甘く表情豊かに)
4.Très modéré - Très mouvementé - En animant peu à peu -   
    Très mouvementé et avec passion(きわめて穏やかに - きわめて躍動して -   
    少しずつ動きを付けて - きわめて躍動して、かつ情熱的に)
の4楽章構成で,第1楽章の冒頭の主題は楽曲全体を通して何度も表れます.第2楽章ではピチカートに乗って,舞踊が展開され.第3楽章では,弱音器を使った甘美な音楽が展開されますが,中間部でヴィオラが活躍します.第4楽章では,導入部から次第にテンポを速めつつ,全曲を回想しながら躍動的,情熱的に曲を閉じます.

このドビュッシーは,聴き慣れた曲だったのですが,たいへん新鮮な響き,見事なアンサンブルで聴かせてくれました.


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