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サントリーホール:都響B定期,インバル指揮,ラクリン(vn) [音楽時評]

12月20日,サントリーホールに東京都交響楽団B定期,インバル指揮,ヴァイオリンにジュリアン・ラクリンという素晴らしい組み合わせを聴きに行ってきました.ラクリンは1704年製のストラディヴァリ「エクス・リービッグ」を貸与されて使っているそうです.

プログラムは,意欲的に,ショスタコーヴィッチ2曲でした.
ショスタコーヴィッチ: ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77
        ※※※※※※※※
ショスタコーヴィッチ: 交響曲第12番 ニ短調 作品112 「1917年」
でした.

ヴァイオリン協奏曲は,助言を受けたダヴィッド・オイストラフに献呈されたモノですが,4楽章構成で,Ⅰ.Nocturne:Moderato,Ⅱ.Scherzo;Allegro,Ⅲ.Passacaglia;Andante,
Ⅳ.Burlesque;Allegro con brio と,夜想曲,スケルツオ,パッサカリア,ブルレスクと曲調が指定されています.
第1楽章は,沈潜するようなノクターンで,ストラディヴァリの美音が印象的でした.
第2楽章は一転して諧謔的で賑やかでしたが,主題旋律に交響曲10番で用いられた作曲者のイニシャルが用いられているそうです.
第3楽章は,主題がさまざまに変奏され,少し長いカデンツァが入って,そのまま第4楽章に入り,民族舞踏風のリズムが力強さを発散させながら曲を閉じます.
とにかくラクリンのヴァイオリンの美しさが存分に発揮された演奏でした.

ラクリンはアンコールに,J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・パルティータから「サラバンド」を演奏してくれました.

交響曲「1917年」は,前作が1905年の「血の日曜日」を扱ったのと同様,いわば標題音楽ですが,「10月革命と,その指導者レーニンの思い出に捧げる」内容になっています.4楽章構成ですが,切れ目なく全曲がつながっています.
ショスタコーヴィチは,レニングラード=ペトログラードで生まれ育った人で,そこで起こったレーニン主導の無血革命の生き証人だという思いがあったといわれます.しかし,この曲の作曲前に,彼は嫌っていたはずのスターリンを支えてきた共産党に入党しており,この交響曲の創作課程は複雑だったようです.
そして,この曲が初演されて間もなく,彼の傑作の1つ,交響曲第4番が久しぶりに好演されて評価された反面で,この第12番はあまり評価されず,今日でもこの12番は傑作とは見られず,余り演奏機会に恵まれない曲なのです.
第1楽章は,「革命のペトログラード」 Moderato - Allegroで,革命歌『憎しみの坩堝』も用いられています.
第2楽章は,「ラズリーフ」 Adagio ですが,「ラズリーフ」は、レーニンがスイスから帰国後、密かに革命のプランを練ったという近郊の湖の名前です.そのためか.思索的な雰囲気の楽章になっています.
第3楽章 「アウローラ」 Allegro の「アウローラ」革命が始まって有効な支援に当たった巡洋艦の名前です.かなり激しさを伴った曲想の楽章です.
第4楽章は,「人類の夜明け」 Allegretto-Moderato では,第4楽章冒頭主題、第1楽章第1主旋律、第1楽章第2主旋律,その他前楽章の様々な旋律が入れ替わり立ち替わり提示され,最後にそれらが統合する形で盛り上がって終わります.

たいへんな力演だったと思いますが,残念ながら,名曲を聴いたという印象は残りませんでした.お疲れ様という気持ちで一杯でした.

 


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