JTアートホール:超絶技巧オン・ステージ [音楽時評]
12月19日,JTアートホールに,「超絶技巧オン・ステージ」と題する室内楽コンサートを聴きに行ってきました.
このコンサートのもう一つの意義は,漆原啓子(vn)さんのデビュー30周年を記念して,彼女中心のプログラムが組まれたことにあります.
私は,漆原啓子さんがハレー・ストリング・クァルテットの創設メンバー,第1ヴァイオリン奏者として活躍を始めた頃から通いつめた1人です.ご参考までにハレー・ストリング・クァルテットの未だ残っていたホームページを紹介しておきますと,
「1985年漆原啓子、松原勝也(ヴァイオリン)、豊嶋泰嗣(ヴィオラ)、山本祐ノ介(チェロ)により結成。翌1986年第21回民音室内楽コンクールに優勝、併せて斎藤秀雄賞を受賞した。この時演奏されたバルトークの弦楽四重奏曲第2番を聞き、審査員でありこの曲の初演者でもあったシャンドール・ヴェーグが絶賛したと伝えられている。
87年6月、東京文化会館で本格的なデビュー公演。同年、東京・お茶の水にオープンしたカザルスホールのレジデントクァルテットに就任。2000年3月にカザルスホールが自主企画公演を終了するまでの13年間、ここを本拠地として、合計37回の定期演奏会を行った。
これまでにハンスヨルク・シェレンベルガー(オーボエ)、迫昭嘉(ピアノ)、リチャード・ストルツマン(クラリネット)、永井和子(メゾソプラノ)、川崎雅夫(ヴィオラ)、ピーター・ゼルキン(ピアノ)、バーナード・グリーンハウス(チェロ)などと共演したほか、ロッケンハウス音楽祭などで有名なドイツの作曲家、ペーター・キーゼヴェッターのオーボエ五重奏曲作品40を世界初演した。また第20回定期演奏会では演出・脚本に実相時昭雄、朗読に寺田農を迎え、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を演奏した。
91年7月、初めての本格的国内ツアーとして、カザルスホールでの第11回定期にさきがけ、岐阜・メルサホール、大阪・いずみホールでの公演を行なった。また、1999年秋からは、名古屋・電気文化会館での定期演奏会プロジェクトをスタートさせている。
91年10月にはイギリスで行われたジャパン・フェスティバルに参加、ロンドンを始めイギリス全土で7回の公演を、93年2月には、国際交流基金の派遣により、東南アジア各地へ7回の公演旅行を行った。97年6月にはプエルト・リコのカザルス音楽祭に招かれ、2回の演奏会を行い、会場総立ちの大喝采を受けた。
待望のCDは、得意のハイドンばかりをおさめ、キャニオン・クラシックスから93年12月17日にリリース、大好評を博した。94年8月にはドヴォルザーク「アメリカ」とヤナーチェク「クロイツェル・ソナタ」を録音、同年12月17日にリリース。最新盤は再び得意のハイドン「十字架上の七つの言葉」(95年12月リリース)。
結成当時すでにヴィエニアフスキ国際コンクールに優勝の経歴を持ち、現在もソリストとしてめざましい活躍をしている漆原啓子、ソリストとして室内楽奏者として、ますます音楽界に欠かせぬ位置を占める豊嶋泰嗣、96年春からは、ウィーンで研鑽を積み、現在NHK交響楽団のコンサートマスターをつとめる傍ら室内楽奏者としての活躍ぶりも注目されている篠崎史紀(ヴァイオリン)が、また98年3月からはスケールの大きな音楽性で次代を担う音楽家として高く評価されている向山佳絵子(チェロ)が加わり、より求心力を持つアンサンブルとレパートリーで新たな軌道を描き始めている。
メンバーそれぞれがソリストとして活躍する中で、自らの演奏家としてのキャリアの大切な部分として室内楽活動を位置づけている彼らは、すでに国際的なクァルテットのレベルまで達しており、日本を代表する弦楽四重奏団と言っても過言ではない。」
ハレー・ストリング・クァルテットは,私にとっては,岩淵龍太郎が主宰したプロ・ムジカ弦楽四重奏団,巌本真理による巌本真理弦楽四重奏団に続く貴重な存在だったのです.
ハレーの解散後は,夏の音楽祭;木曽音楽祭に漆原啓子が欠かさず出演していましたから,木曽にも何度も通いつめたモノです.毎年,前夜祭が木曽の中学校で開催されるのですが,終演後,みんなで折りたたみ椅子を片付けるのに,彼女も息子さんと一緒に加わっていたのが忘れられません.
余談が長くなりましたが,今夜は,次の通り,室内楽,室内アンサンブルの良さを十分に堪能させるプログラムでした.
まず,出演者ですが,
ヴァイオリン: 漆原啓子,黒川 侑
ヴィオラ: 佐々木 亮
チェロ: 横坂 源
コントラバス: 吉田 秀
ピアノ: 林 絵里
と豪華メンバーでした.
プログラムは,
G.ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 第3番 ハ長調
Z.コダーイ
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E.イザイ:
P.I.チャイコフスキー:カプリッチョ風小品 Op.62
R.グリエール:タランテラ Op.9-2
G.F.ヘンデル(J.ハルヴォルセン編):パッサカリア
M.ラヴェル
P.サラサーテ:ナヴァラ Op.33 原,黒川,林
でした.
いずれも超絶技巧を要する曲ばかりですが,いろいろな組み合わせの室内楽の妙があり,ソロでは漆原のイザイ,そしてピアノ伴奏によるコントラバス・ソロの妙技に感嘆し,とにかくいささかかたぐるしいクァルテット以外に,こんなに楽しい室内楽の世界があったのだということを実感させて貰った一夜でした.
なお,漆原さんと黒川青年は師弟関係を経験したことがあるそうで,2人の共演の場面は殊の外感慨深く聴けました.
これだけ豊かなプログラムのプロデュースをされた方々と今夜の出演者の方々に,大いに敬意を表し,感謝したいと思います.
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