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武蔵野文化小ホール:カザルス弦楽四重奏団の名演 [音楽時評]

121日,武蔵野文化会館小ホールに,スペインから来日したカザルス弦楽四重奏団を聴きに行ってきました.
先日のエベーヌを思い起こさせる素晴らしい名演を聴かせてくれました.

メンバーは,
Violin: Vera Martubez Mehner, Abel Tomas Realp 
第1を交替分担       
Viola: Jonathan Brown
Cello: Amau Tomas Realp
でした.

プログラムはたいへん意欲的で,
カタロニア民謡    鳥の歌
シューベルト:      弦楽四重奏曲 13番 イ短調 「ロザムンデ」 D804
      ※※※※※※※※
ボッケリーニ:      弦楽四重奏曲 ト短調 Op.32-5 G205
ショスタコーヴィチ:  弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 Op.110
でした.

とにかく「鳥の歌」をチェロが澄んだ美麗な響きで朗朗と歌ってくれて,他の3人がそれを補完する形で,この弦楽四重奏団のチェロの実力をまず顕示したといってよい感じでした.

私は,弦楽四重奏団の要はチェロだと考えて,かねて,日本では東京クァルテット,ロータス・クァルテット,クァルテット・アルモニコ,それにアルティ弦楽四重奏団に絞り込んで聴いているのは,いずれもチェロが優秀だと思うからですが,このカザルス弦楽四重奏団のチェロの素晴らしさは別格のモノでした.そして実力の揃った4人でした.

「ロザムンデ」は有名な名曲ですが,このカザルスは,実に緊密,正確なアンサンブルで,11人がそれぞれに実力の程を発揮しながら,急-緩-メヌエット-急の4楽章を,抑揚,アクセントをはっきりさせた見事な演奏で聴かせてくれました.

ボッケリーニは,シューベルトより一世代遡りますが,既に急-緩-メヌエット-急の4楽章構成で,古典派の名作といえますが,カザルスは実に格調高く,好演してくれました.この曲でだけ,第1ヴァイオリンが
Abel Tomas Realp でした.

「ロザムンデ」も大曲でしたが,最後のショスタコーヴィッチの第8番は,作曲者が交響曲と同じ15曲作曲した弦楽四重奏曲のなかで,作曲者を代表する重要な作品です. 1960年に作曲され,作曲者によって「ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に」捧げるとされましたが,ショスタコーヴィチ自身のイニシャルが音名「D-S(Es)-C-H」で織り込まれ、自身の書いた曲の引用が多用されていることから,密かに作曲者自身をテーマにしていたことが暗示されている作品です.その意味で,彼の絃楽四重奏曲の中で、最も重要な作品でいえるモノです.

その代表作は,緩-急-急-緩-緩という珍しい5楽章構成で,他の作品と異なって直接的表現力を持ち、聴衆に訴えかける力を持った名曲です.
カザルス弦楽四重奏団は,この多彩な旋律,リズムに溢れた曲を緊迫感を漲らせ,集中力を結集して好演してくれました.

1997年にマドリッドで結成された,まだ若々しい弦楽四重奏団ですが,2000年にはロンドン国際弦楽四重奏コンクール優勝,2年後には,ハンブルグのブラームス国際弦楽四重奏コンクール優勝という輝かしい実力を見せて,ウイグモア・ホールはじめ世界の主要コンサート・ホールに招かれて,かなり多忙な演奏活動を展開しているそうです.

近い将来にぜひ再来日して欲しいモノです.


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