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サントリーホール:パリ菅,ヤルヴィ指揮,諏訪内晶子(vn)の好演 [音楽時評]

11月26日,サントリーホールに,パーヴォ・ヤルヴィ指揮のパリ管弦楽団,ヴァイオリン協演者に諏訪内晶子,のコンサートを聴きに行ってきました.
開演時間が余り見られない18時だったモノですから,結構,多分間違えて遅れて来て,諏訪内さんまでの前半を棒に振った人が見受けられました.

プログラムは,
ウェーバー:    オペラ《魔弾の射手》序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64   vn:諏訪内晶子
           ※※※※※※※※
ベルリオーズ:   幻想交響曲 op.14
でした.

《魔弾の射手》序曲では,指揮者P.ヤルヴィがすごくゆっくりしたテンポで始めたので,驚きましたが,ヤルヴィは,かなり意図的にテンポを操作して,演奏にメリハリをつけようとする傾向の強い指揮者だと思います.後半にテンポを上げて,たたみかけるように盛り上げて曲を終わりました.

メンコンでは,オケの人数を少し削って小編成で始めました.オケに僅かに遅れて入るヴァイオリンのテンポが,指定の Allegro molto appassionato でしたから,ヤルヴィもヴァイオリンに合わせていました.諏訪内さんはヤルヴィとは,彼がシンシナティ交響楽団の音楽監督だったころからのお付き合いのようで,よく息が合っていました.ヴァイオリンの音がたいへん良く透って,カデンツアも見事でした.第2楽章では,ゆったりとした美音の流れを作っていました.
第3楽章は,Allegro non troppo-allegro molto vivace と, allegro ですが,第1楽章よりはユックリ初めて,後半にぐっと早くなるのですが,オケも良く合わせてなかなかの好演でした.諏訪内さんは曲全体で2~3ヶ所音がほんの少し上ずったことがありましたが,Allegro の勢い余ってで,取るに足らないと思います.

休憩後の「幻想交響曲」は,ヤルヴィのテンポの操作も効いて,素晴らしい名演奏でした.
全5楽章で,Ⅰ.夢,情熱,Ⅱ.舞踏会,Ⅲ.野の風景,Ⅳ.断頭台への行進,Ⅴ.ワルプルギスの夜の夢,という標題付きです.「ある芸術家の人生のエピソード」,つまり,失恋して麻薬を飲んで,朦朧として,失恋の顛末を追体験し,出会い,舞踏会の思い出,野原での瞑想,恋人殺しの罪で断頭台に引かれて行き,魔女となった恋人と地獄で再会,という,いわば標題音楽になっています.
このドラマティックな音楽を,ヤルヴィは得意のテンポの操作に加えて,視覚的にも,第3楽章で,オーボエをコーラングレに持ち替えた演奏者をオーケストラの左袖からステージに登場させて,纏綿たる美しいメロディ,牧歌を2度,3度と吹かせていました.その際,ステージ裏でオーボエがこだまのようにメロディを返していました.
なお,この曲では,愛する人その人がひとつの旋律となって,固定観念のように,繰り返し表れます.

作曲者の体験を探ると,ベルリオーズはパリで、イギリスのシェイクスピア劇団による『ハムレット』を観たのですが,そこでオフィーリアを演じたハリエット・スミスソンに熱烈な恋心を抱き、手紙を出す、面会を頼むなどの行動に出ますが,彼女への思いは通じず、やがて劇団はパリを離れてしまいます.ベルリオーズはスミスソンを引きつけるために、大規模な作品を発表しようという思いを抱いていましたが、激しい孤独感のなかで彼女に対する憎しみの念が募っていくうちに,彼は,間もなく、ピアニストのマリー・モークと知り合い、恋愛関係に発展します.この曲はそのさなかに作曲されたといわれます.
しかし,モークの母親の反対でこの恋は実らず,破局を迎えます.その反面で,幻想交響曲の再演を聴きに来たハリエット・スミスソンと再会し,今度は彼女もベルリオーズの愛を受け入れ,彼の願いは実現したのです,

演奏は,ヤルヴィがパリ菅の力をフルに発揮させて,実に様々なアクセントが付いたドラマティックな名演でした,ヤルヴィの特徴がフルに発揮されていたと思います.

なお,この演奏会では諏訪内晶子がアンコールに,
バッハ:無伴奏ソナタから ルイエ


パリ菅が,やはりアンコールに,
ビゼー:アルルの女 第2組曲 ファランドール
シベリウス:悲しきワルツ
ビゼー:小組曲「こどもの遊び」より ギャロップ
を演奏してくれました.


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