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港南区民文化センター:エベーヌ・クァルテットの好演 [音楽時評]

11月6日,つい5日前に聴いたエベーヌ・クァルテットの名演が忘れがたく,もう一度,港南区民文化センター,「ひまわりの郷」ホールに,同一メンバー,同一曲目の演奏会を聴きに行ってきました.

メンバーは,
第1 violin: Pierre Colombet
第2 violin: Gabriel Le Magadure
Viola: Mathieu Herzog
Cello: Raphael Mertin

プログラムは,
モーツアルト: 弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K.466 「不協和音」
ボロディン:   弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調
     ※※※※※※※※
ブラームス:   弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op.51-2
でした.

しかし,今日のマチネーは,先日の武蔵野文化会館小ホールの名演と較べて,やや不足を感じました.第1には,演奏に先日ほどの豊かな叙情性が感じられなかった点,第2に,何故か,ヴァイオリンに明らかな音程外しが少なくとも2度あったことです,

ただ,これらの点はむしろホールの違いによるモノではなかったかと思います.
ホールのチラシには,定員380,音響抜群,理想の室内楽ホールと書かれていましたが,私にはそうは思えませんでした.

確かにシューボックス型に違いないのでしょうが,このホールはステージ前からシート列に角度がついていて,それが途中からぐんと角度を増して,後方出入り口が2階レベルに達します.その上部にさらにバルコニー席がステージ背後まで1周して取り巻いているのです.
これではほとんど残響が残らないでしょう.おまけにステージ頭上には,僅かに客席に向かって角度のついた反響板ではなく,乱反射用の舟型が4つ下げられているのです.1階相当の両サイドの壁面は平らでなく,矩形の張り板1枚1枚がステージ側に向かって緩い角度がついています,2階バルコニー席上の壁面はプラスティック平面で,それに何カ所かで壁面と平行にプラスティック反射面が取り付けられているという珍しいスタイルです,

これでは残響が残る余地はほとんどなくって,ステージ上に反射音が集まってくるだけではないでしょうか.ステージ上で他者の演奏音が聞こえないという話を良く聞きますが,ここではそれが聞こえすぎて,奏者の注意力を損ないかねないと思います.
反射音がステージ上に聴こえすぎることは,反面で,聴衆には豊潤な情感や叙情性の乏しい音楽として聞こえてしまうのではないでしょうか.

演奏の技量の正確さ,その質感,量感いずれも同じクァルテットの好演であったのに,何か一歩引いたような演奏に聴き取れたのは,たいへん残念でした.やはり本格的なパイプオルガンを備えた音楽ホールと,どことなく多目的ホールの感じがするホールとでは,そこで作られる音楽の暖かみに差が出ることを実感した演奏会でした.
それでも,アンコールに,現代作品を取り上げ,各楽器,とくにチェロのさまざまな演奏形態,楽器の上部と下部を手で叩いたり,弦に当てた弓を上下移動させたり等を展開してくれたのは,興味深く聴けました.,

なお,5.000円のコンサート(武蔵野は1.500円)で配布されたプログラムの4面のうち1面は白紙でしたが,ここに武蔵野のようにプログラム・ノート;曲目解説を掲載できないようでは,主催者失格というべきではないでしょうか.

エベーヌ・クァルテットには来年もぜひ来日して,その希に見る名演を音響の良いホールでたっぷり聴かせて欲しいモノです.

 


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